表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導書店を受け継ぐことになりました。-不倫した婚約者を婚約破棄したら、10年来のペンフレンドに距離を詰められました-  作者: 月乃宮 夜見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/14

治療御縁

 「最近、魔導書店で次期管理人候補として働くことになりました」とフェリシアはペンフレンドのメフィストに報告をした。


「魔導書の取り扱いは大変だけれど、とても楽しいです」


そうして、最近色々な人と関わりができているとも綴る。色々な人、とはいうが、主に魔導書店の利用者達だ。


 すると、『あなたの新しい門出を心より祝福します』と返事が来た。これも、手紙を出して2日後に届いたので、メフィストはすぐに出してくれたのだろう。


「ふふ。なんだか、私の手紙を心待ちにしているみたいね」


くすくす、とフェリシアは小さく笑った。だが、なんだか心が暖かくなる。


「最近、お返事が早いようですけれど、一体どうしたのですか?」


 さらり、と便箋に文字を綴ってゆく。そういうフェリシアの方も、最近は手紙を出す頻度が上がっていると自覚している。


「あなたとのやりとりは楽しいけれど、2日に一度しか進まないんだもの。少し、もどかしくて煩わしいわよね……」


互いの住所を知りながらも、互いの顔を直接は知らない。知っていれば、会いに行けるのに。


×


「店主候補さん。これを持っていてくださいまし」


 ある日。

 数日ぶりに魔導書店を訪れた、アーウェルサからお守りを差し出された。


「(……どうしましょう?)」


と判断しかねていると、


「受け取っておきなさい。彼のお守りはよく効きますぞ」


と、まさかの店主のヨハンが、受け取りを勧めた。「ヨハンさんがそうおっしゃるなら……」と、フェリシアはお守りを受け取った。なんだか桃色や紅色で彩られ可愛らしい装飾(デザイン)である。


「縁結びの(まじな)いを込めております。是非とも、数日間は肌身離さずお持ちくださいまし」


淡々とした様子で、アーウェルサはお守りの解説をする。なぜ渡してきたのだろう、とフェリシアは首を傾げるが、理由は分からない。

 その後、アーウェルサはさっさと魔導書を購入して退店して行った。


「どうも、彼は忙しいようですな。噂によると、宮廷魔術師でありながら、何かしらの副業をしているそうです」


「仕事馬鹿ですな」と、笑いながらヨハンは付け足す。


「お仕事に熱心なのは、勤勉で良いことだと思いますけれど……」


首を傾げるフェリシアに、「趣味が魔術(仕事)なのでしょうな」とヨハンは受け流した。(フェリシアは宮廷魔術師のブラックさを知らないので、+で副業をする異常さが分からないのであった)


×


 それから、フェリシアはいつも通りにヨハンから魔導書店の管理方法を学ぶ。


「やはり、あなたは魔力の放出が少ない。魔導書店の取り扱いに、とても向いておられますな」


感心した様子で、ヨハンはフェリシアを褒めた。


「『放出が少ない』と言われましても、自覚はできていませんわ……」


戸惑うフェリシアに、「気にせずとも宜しい」とヨハンは告げる。


「それに『魔導書を見分けられる良い目』を持っている。目が詰まっているから、うまく治療できれば良い魔導書を判別できる目になるでしょうな」


と言われ、さらさら、と何かを書き始めた。


「医者への紹介状です。と言っても、利用者が新しい利用者を紹介するようなものですがね」


と言いつつ、手紙を渡された。


「お医者様ですか?」


「そうです。おまけに『魔女』です。とても良い医者ですからな、あなたの目もきちんと治るでしょう」


その『魔女』は普段は軍医をしていて、休日だけ医者をしているのだとか。


「連絡を入れておきますので、指定日には必ず紹介先へ行くように」


面接の時にも思ったが、ヨハンは中々強引な性格である。


×


 それから。

 『魔女』の元へ行く日になった。


 緊張しながら、フェリシアは渡された地図をもとにとある屋敷を訪ねた。そこは高級住宅地の一角である。


「『魔女』様はすごいところに住んでいるんですね……」


一緒に着いてきたマリーも、フェリシア同様に緊張していた。そもそも、『魔女』は世界から『脅威である』とみなされた存在に付けられる称号だからだ。


「はぁい」


 呼び鈴を鳴らすと、思いの外に若い女性が出てきた。蜜柑色の髪が、ふわりと揺れる。


「あ、きみが新しいお客さんだね。フェリシアさん……と、お付きの人のマリーさん。確か、目の状態が悪いんだっけ。わたしはラファエラ。よろしくねー」


言いながら、「こっちだよー」と案内してくれる。


「可愛らしい子が出て来たわね……」


「お嬢様は綺麗系ですからね……」


「そうじゃないわよ。まあ、油断させて食べてしまおうなんてことはないと思うけれど……」


「どうしたのー? 早くおいでよー」と声が聞こえたので、急いで声のもとまで行く。


「じゃあそこに座って。早速診てみるから」


 案内された場所は、シンプルな診察室だった。用意された椅子にマリー共々座る。すると、ラファエラが「ちょっと失礼します」とフェリシアの頬に手を添えて、フェリシアの目に器具を充てた。


「あちゃー、これはひどい。魔力が詰まってるね」


「魔力が詰まっている?」


「そ。目にある魔力が濃過ぎて、固まっちゃってるの。一回取り除かなきゃ駄目かなー」


そう言い、ラファエラは器具を仕舞う。


「手術をするのですか?」


「ん? いや、そんな大層なことはしないよ」


不安気に問うマリーに、ラファエラは首を振った。


「ちょーっと、きみの目に魔力通すね」


「さっき魔力が通らないって……」


「それはきみの魔力の話。今から通すのは、わたしの魔力ね。あ、他人の魔力が苦手とか精神的苦痛(トラウマ)があるとかない?」


精神的苦痛(トラウマ)はないですけれど……できるのですか?」


「できるよ。しゅばっと終わらせるからねー」


 「まずズレたら危ないから、頭を固定してー」と言いつつ、ラファエラは新しい器具を取り出した。そのまま、椅子に座るフェリシアにそっと被せる。

 すると、頭が勝手に固定され動かせなくなった。


「じゃあ、いくよー」


とラファエラの声がしたと思うや否や、


「っ!」


一瞬、ミント系の目薬をかけられたような感覚を覚える。


「はい、おしまいー」


と声をかけ、ラファエラは頭の器具を外した。


「これが……『しゅばっと』……」


「うん。きみの目に、一瞬だけ魔力を通して詰まってる魔力を浄化させてもらいました」


驚くフェリシアに、ラファエラは丁寧に解説をしてくれる。


「一回じゃ取れないから、しばらく通ってね」


と言われる。


「ええと、具体的には……?」


「1ヶ月間、週2回で通ってねー。料金はお安めにしとくから」


そう、ラファエラはフェリシア達に告げる。


「次は4日後においでね。予約入れておくから」


そうして、フェリシアとマリーは診療所より出た。治療費は、意外と安かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ