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魔導書店を受け継ぐことになりました。-不倫した婚約者を婚約破棄したら、10年来のペンフレンドに距離を詰められました-  作者: 月乃宮 夜見


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結婚事情

 魔導書店で働く傍ら、『魔女』ラファエラの元へ通う日々が続く。


 ラファエラと仲良くなった、というかなんとなくラファエラが人懐っこいのだ。好奇心旺盛な子猫が、懐いてくれているかのような印象をフェリシアは持つ。


 ラファエラの屋敷に居る時間が増えると、なんとなく彼女の屋敷の様子が分かるようになった。


「(……どうやら、彼女の屋敷には人間の使用人がほとんど居ないみたいね)」


周囲の気配を探り、内心で呟く。


 人間の使用人が多くない代わりに、式神や、人形のような変な使用人がいるのだ。故郷の呪猫(フェレス)でも、式神を使用人にしていることは珍しくはない。

 だが、造形が少し異形じみている。服の端端から覗く箇所が、人間の造形をしていないのだ。獣や鳥、爬虫類両生類に魚類など、動物じみていて、独特な趣味だった。


「……あなたのところの使用人は、少し個性的ね」


そう、なんとなく遠回しにラファエラに問うてみると


「あ、あの子たちはねー伴侶(あの人)のお手伝いさんだよ」


と、ラファエラは答えてくれる。


「あ。ごーちゃんたちは、わたしが作ってる」


「ごーちゃん……?」


「ゴーレムのごーちゃんだよ。小さな人形みたいな子達」


「あら。随分と可愛らしい名前なのね」


「でしょー」


自慢気なラファエラに、「(ゴーレムを作れるのね)」とフェリシアは感心する。ゴーレムを作れるのは、聖書の内容を暗記していて特別な土の配合も暗記できるからだ。記憶力は特段に良いらしい。


「あ、……帰ってきた」


 この時、ラファエラは妙な反応をした。初めの『あ、』はとても嬉しそうだったのに、次の言葉を出すまでに無関心のような態度に切り替えたからだ。


「どなたがですか?」


「わたしの伴侶だよ」


ラファエラの伴侶、とは。


「……客人ですか。これはこれは、魔導書店の次期管理人さん」


氷のような雰囲気に、フェリシアは身体を強張らせる。この感覚に覚えがあるな、と思考し視線を上げると。


「……って、アーウェルサさん?」


魔導書店の利用者であるアーウェルサがそこに居たのだった。

 ラファエラの伴侶とは、アーウェルサのことだったらしい。新たな繋がりに、フェリシアは目を瞬かせる。ラファエラも


「あれ、知り合い?」


と首を傾げる。


「私が良く利用する魔導書店の、次期管理人候補です」


アーウェルサは、端的にラファエラへ紹介する。「へー」興味がなさそうな返事だった。なんだか微妙な空気になったな、とフェリシアは表情も変えずに思考する。

 だが、それはともかく。


「……なぜ、私に縁結びのお守りを渡すのですか?」


思わず、フェリシアは問うた。毎度貰うわけではないが、何度も手渡されるとさすがに当人から理由を聞きたくなるものだ。すると、アーウェルサは視線を横に少し動かした後、


「恩を売ってやろうと思いまして」


と、フェリシアを見下ろす。


「恋愛には、興味ないのですが」


そう言い返すと


「縁結びですよ。客との縁を結ぶ守り。一体どこに不満が?」


淡々とアーウェルサに指摘されて、フェリシアは閉口する。『縁結び』とは言うも、言われてみればアーウェルサには『恋愛の縁結び』だなんて一言も言われていない。見た目は、明らかに恋愛の縁結びだと言うのに。


「こら! フォラクス! 患者さんと喧嘩しない!」


ラファエラが叫ぶ。つい、と興味なさそうにアーウェルサ(フォラクス)は視線をずらした。


「新しいお守りです。古いものは捨てても良いですが、結ばれるまで持って頂けると助かります」


そう言い、魔導書店の時と同じ様子でフォラクスは良縁のお守りを渡してさっさと去る。


「(別に悪意は感じないけれど……)」


それはそうとして、誰に恩を売ろうと言うのか。


「(と言うより、既婚者の彼が逃したくない縁って何かしら?)」


フェリシアは、首を傾げる。


「……彼、フォラクスさんとおっしゃるのね」


 口元に手を充て呟くと、


「え、名前知らなかったの?」


ぱちくり、とラファエラは目を瞬かせた。


「姓名だけを紹介されましたもの」


「ふーん。どっちだって一緒じゃん」


フェリシアが理由を告げると、心底興味なさそうにラファエラは呟く。彼女曰く、『名前を明かしても強い魔術師には何も関係がない』のだそうだ。


「ではラファエラさん。あなた、アーウェルサと言う姓名なのですね」


「あー、うん。まあね。紹介状には書かれてなかったっけ」


ラファエラは首を傾げるも、ヨハンからの紹介状には書かれていなかったし、ラファエラ自身から告げられたことはない。

 お客さん(の伴侶)のお客さんになるとは、なんだか不思議な感覚である。


「彼、何か『逃したくない縁がある』と、共通の知人から聞いたのですけれど。あなたは良いの?」


そう、フェリシアはラファエラへ問うた。


「え? 『逃したくない縁』? ……あー、それは気にしてない。伴侶(あの人)のことだから、どうせ……まあ、わたしとの縁(あれ)だろうし」


なんだか、誤魔化されたような気がする。


「あなた達はどういう縁で、出会ったのですか?」


「んー、『相性結婚』って知ってる?」


 せっかくなので出会について問えば、思わぬ返答があった。ラファエラはどこか気まずそうな様子だ。


「『相性結婚』……ですか? ……それは……」


それは要約すると、政府によって行われたお見合いだ。身分関係なく、魔力の相性だけで選ばれる。


「あ、特に悲しいとかないから気遣うとか無しで。まあまあ楽しいし」


ラファエラは、あっけらかんとした様子で告げた。彼女の様子からは、悲しい感情は見られない。


「結婚生活……は、どのような感覚なのですか?」


「くっつけられた側だけど、思いの外に楽しいよ。きみにもきっと、縁があるよ。わたしの伴侶(あの人)が縁結びのお守り渡してるし、いい縁がありそう」


ラファエラはそう答える。『良い縁がありそう』と言われると、なんだか期待してしまいたくなった。


「フォラクスさんは分かりませんけれど。仲が悪い……ように見せていらっしゃるのね?」


 帰り際、こそ、と小さな声でフェリシアはラファエラへ問うた。


「あー……うん。分かっちゃう?」


頬を掻き、ラファエラは気まずそうに笑った。その返答で、彼女は本当に『相性結婚』を悪く思っていないらしいと察せられた。


「他言はいたしませんわ。理由があるでしょうし」


「うん。そうしてもらうと、ありがたいです」


フェリシアの言葉に、ラファエラは頷く。

 確か、『相性結婚で結ばれた2人は性格が合わなくて苦労する』と噂を聞いたことがあったが、2人(少なくともラファエラ自身は)そうではないのだろう。

術師は結婚しても尚、魔女との縁を繋ぎたいようです。


術師曰く、今の縁は水素の詰まった風船に糸を何重にも巻き付け重ねて辛うじて縁を繋いでいる感覚なのだとか。


魔女がツンデレやって照れて逃げるからだよ。自業自得やね……


↓そんな魔女と術師のお話がこちら↓

本編『薬術の魔女の結婚事情』(https://ncode.syosetu.com/n0055he/)(恋愛モノ)


本編2『薬術の魔女の宮廷医生活』(https://ncode.syosetu.com/n2390jk/)(推理モノ)


この話と同じ世界観ですが、名前非開示版です。


話は変わりますが、術師は別にフェリシアさんに恩を売りたいわけではないようです。

では、誰に恩を売りたいのでしょうね。

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