第83話 ザ・ダンジョン
「どんな依頼ですか?」
「実は、とあるお貴族様からのご依頼がありまして、ダンジョンの二十階辺りに出現するシモフリバイソンを狩ってきてほしいのです」
他の人に頼めばいいんじゃないかと思ったんだけど、なんでも、雇った冒険者たちが未だに誰も帰って来ていないらしい。
でも、納品の期日が迫ってきているため、別の冒険者に頼もうと思っていたところに、空鳴の紹介状を持った私がやってきたとのこと。
空鳴の紹介状には、詳しいことは伏せた上で、私たちはとても強いから、何か困ったことがあったら正直に事情を話して協力してもらえ、と書いてあったのだそう。
全く……バルドスさんも無茶なことを言う。
正直、頼んだ冒険者が誰も帰ってきていない時点で、とても嫌な予感がする。
とはいえ、冒険者たちが生きている可能性があるし、バルドスさんから紹介された以上、断りづらい。
『その依頼を受けるのだ!!』
それにアークが俄然やる気を出したので、私たちは依頼を引き受けることにした。
どうやらシモフリバイソンは、とても美味しいらしい。
アークのテンションの上がりようも頷ける。
「分かりました。その依頼、受けさせていただきます」
「本当ですか!? ありがとうございます!!」
返事を聞いたイトゥーさんの目が一段と細くなった。
私たちは早速ダンジョンにやってきた。
ミノスのダンジョンは、モスマンのように洞窟が口を開けているタイプではなく、祭壇のような人工建造物の中央に地下へ下りる階段があるタイプだった。
入り口にはたくさんの冒険者が並んでいる。
私の年齢に近くて初々しい装備の冒険者が多い一方で、ガラの悪い冒険者たちもたくさん目に入った。
イトゥーさんによると、ミノスのダンジョンの低階層は出現モンスターが決まっている上に、一度に襲ってくる数も少なく、ダンジョンに罠らしい罠もないので、初心者に非常に人気があるらしい。
ただ、迷宮型はモンスターの不意打ちを警戒しなくてもいい一方で、入り組んでいるせいで隠れる場所や死角が多く、初心者を狙った犯罪行為が横行しているため、モンスターよりも人間の方に注意が必要なんだとか。
冒険者ギルドでも思ったことだけど、この街はあまり治安が良くない。
「ここがミノスのダンジョンかぁ」
『迷宮型のダンジョンだな』
「ピヨッ」
内部はレンガ造りの道が続く迷宮型で、いかにもステレオタイプの構造。
「これぞ、ダンジョンだよね」
古き良きダンジョンって感じがして、ワクワクした気持ちになる。
ただ、入り口付近は渋滞していて、しばらく動けそうにない。
流れに従って進んでいると、ようやく人がばらけ始めた。どうやらいくつかの道に分かれていて、それぞれのパーティが別の道を進んだみたい。
『こっちだろうな』
「ピッピヨ」
私たちはアークとエアの指し示す道を選んでいく。
アークが匂いで探っているのは知っていたけど、エアがなんでその道を示したのかは分からない。
「エアはなんで道が分かったの?」
「ピピッ」
質問すると、エアは私に風を当ててきた。
「風?」
「ピィッ」
私の返事に「そうだよ」と鳴く。
「つまり、ダンジョン内部の風の流れで道を把握してるってことかな?」
「ピピィッ」
「へぇ、エアは凄いねぇ」
「ピピピィッ」
「ふんっ」
私が抱きしめているエアを撫でると、嬉しそうな声を上げる。一方でアークは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
最初の数階は、モンスターにすら遭遇することなく降りることができた。低階層は初心者に人気のため、モンスターが枯渇気味みたい。
「ウォンッ」
私たちがモンスターに遭遇したのは、五階層に到達した頃だった。
初めてのモンスターはグレイファング。名前の通り、灰色の狼型モンスター。アークがいるにもかかわらず、私たちに襲いかかってくる。
「ウォンッ!!」
「グギャッ!?」
でも、アークが軽く前足を振るっただけで、あっけなく倒れてしまった。
「弱いねぇ」
「だからこそ、初心者に人気なのであろう」
「それもそっか」
周りに誰もいなくなったので、アークが念話から普通の会話に切り替える。
階層ごとにグレイファングの数が増していき、十階までやってくると、五匹以上のグレイウルフが連携して飛びかかってくるようになった。
とはいえ、私たちには一切ダメージを与えられないまま、死んでいった。
私はすべての死体をマジックバッグへと詰めていく。
このマジックバッグはグレオス商会から貸し出されたもので、私が持っているアイテムバッグよりも、さらに十倍以上大きな容量がある。
だから、今日は詰め込み放題。
私たちは順調に進んでいき、あっという間に二十階へとたどり着いた。
「それじゃあ、シモフリバイソンを探そっか」
「うむっ」
「ピヨ」
お目当てのシモフリバイソンを求めて二十階を探索し始める。
でも、なかなか見つからない。アークの鼻でも見つからないらしい。
「次の階層に行こう」
「そうだな」
だから、この階は諦めて、次の階へと進むことにした。
――キンッ、キンッ
その途中で激しい戦闘音が私の耳に届く。
それは明らかにこの先にある階段の方から聞こえてくる。
「いくよ」
「ふんっ、仕方あるまい」
「ピピッ」
急いで道を抜けて階段前の広場に出ると、冒険者たちが巨大なモンスターと対峙していた。
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