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第62話 緊急依頼

「た、助けてくれ……」


 一人の冒険者がギルドに駆けこんできた。


 装備がボロボロで、息も絶え絶えで満身創痍といった様子。ローブと杖を持っているところを見ると、魔法使い系の冒険者っぽい。


「アイリスさん、すみません!! セインさん!? どうされたんです!?」


 顔馴染みだったみたいで、ソルトさんが冒険者に駆け寄った。


「仲間が……未知の罠にハマっちまったんだ……」

「そんなまさか……いえ、そんなことよりも今すぐ治療を!!」

「それより……仲間を助けに行ってくれる奴は……いないか? 報酬はいくらでも出す……」


 その冒険者さんはソルトさんの言葉を無視して、縋るような顔で辺りを見回す。


「あれってBランクパーティの『空鳴くうめい』のセインじゃないか?」

「あのパーティが罠にハマった所なんて誰も行きたくないだろ」

「あいつらがいるのって五階とかだろ? 危険すぎるだろ」

「だよな……俺も行きたくねぇよ……」


 でも、誰一人として手を挙げる人はいなかった。


 誰でも自分の命が一番大事。わざわざ危険を冒して助けに行く人はいない。それが高ランクパーティと呼ばれる人たちが稼いでいる階層になれば尚更。いくら高額の報酬を約束されたとしても、命に代えられる報酬はない。


「ちくしょう……そりゃそうだよな……」


 すっかり意気消沈してその場に座り込んでしまった。


 セインさんもダメ元だったらしい。


「あの……これを飲んでください」


 見るにみかねて私はソルトさんに近づいた。


 セインさんの体の状態が心配だったので、回復ポーションとスタミナポーションの入った小瓶を差し出す。


「君は……これはいったい……」

「いいから今すぐ飲んでください」

「あ、ああ……」


 困惑しているセインさんに有無を言わせずに薬を飲ませる。


 その効果は劇的だった。


「おおっ、おおおおおおおおっ!?」

「え、えぇええええええっ!?」


 傷だらけになっていたセインさんの体の傷が全て消え、顔色も良くなる。それを見てソルトさんがなぜか驚いている。


 とにかくこれで体調が戻ったはず。


「調子はどうですか?」

「うぉおおっ!! 力が漲ってくるよ!!」


 セインさんは立ち上がって答えた。


「それは良かった」

「いや、こんなに効果の良い薬を使ってくれて本当に悪いね。高かったんだろう?」

「これは自分で作った物なので気にしないでください。私は薬師なので」

「これほどの薬を作れるなんて君はいったい……」

「私はアイリスと言います」

「アイリスか、ありがとう。俺はセイン。Bランクパーティ『空鳴』の魔法使いだ」


 Bランクと言えば、上から三番目の高ランク。そんな彼らの身にいったい何があったんだろう。


「いえ、体の状態が気になっただけなので。お役に立てたのなら何よりです」

「本当に助かった。この恩は必ず返す。だけど、今は仲間を助けにいってくれる冒険者を探さなきゃならないんだ。だから、帰ってくるまで待ってくれないか?」

「いえ、その話なんですけど、私が立候補してもいいですか?」


 私なら多分どんな状態異常も効かない。ここに私以上の適任はいないと思う。


 それに力になれることが自分にあるのなら、困っている人を放ってはおけそうにない。ここで見て見ぬふりをしたらきっと後悔する。


 気づいたら、無意識に手を上げていた。


「アイリスが? 今まで見たことがなかったけど、高ランク冒険者なのかい?」

「いえ、アイリスさんはDランクになったばかりですね」


 セインさんの疑問にソルトさんが口を挟む。


「それじゃあ、耐性のついた防具を集めるのも厳しいよね。無理じゃないか?」

「私はとても頑丈なので状態異常の類はどうにかなると思います」

「確かにここのダンジョンのモンスターは、Dランクでも十分倒せるレベル。状態異常さえどうにかできるのなら何も問題ないけど……」


 セインさんは半信半疑といった視線を私に向けた。


 確かに私の見た目は、ただの女の子なのでセインさんの言いたいことも分かる。でも、ここで引き下がるわけにはいかない。


「アイリスさんなら……もしかしたらいけるかもしれません」

「本当かい?」

「はい。アイリスさんは耐性が付与された防具なしでもダンジョンに潜って、アシッドスライムは沢山倒せる方です。可能性はゼロではありません」

「それなら……」


 ソルトさんの後押しのおかげで、あと一歩というところな気がする。ここでさらにダメ押しをする。


「アークもいるので足手まといにはならないと思います。それに見てもらった通り、私は薬師です。薬でセインさんの仲間を回復させられると思います」

「わふっ」


 それが効いたのか、セインさんは申し訳なさを滲ませながら頭を下げた。


「そうか……それなら君にお願いしよう。俺の仲間たちを助けてほしい」

「頭を上げてください。必ず助けましょう」

「ありがとう。アイリスのおかげで完全に回復してるから先導するよ」

「よろしくお願いします」

「それじゃあ、早速でも申し訳ないけど、今すぐに出発しよう」

「分かりました」


 私はセインさんの後についていき、再びダンジョンへと潜った。

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。


「面白い」

「続きが気になる」


と思っていただけたら、ブクマや★評価をつけていただけますと作者が泣いて喜びます。


よろしければご協力いただければ幸いです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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