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第42話 掘り出し物

「くしゅんっ」


 突然、鼻がむずむずしてくしゃみが出る。


「大丈夫かい? 冒険者は体が資本だよ?」

「はい、全然大丈夫です。誰かが噂をしてるのかもしれません」


 超健康だから風邪を引いたりしない。


 村の人が何か私のことを話してるのかも。


「きんじょ様がすっかり定着しちゃったからね。誰かが感謝でもしてるんだろうさ」

「流石にきんじょ様は止めて欲しいんですけどね……」


 思い出すと少し複雑な気持ちになる。


 私はあの村で、問題解決の立役者としてすっかり英雄扱い。薬師ならできて当たり前のことで、あそこまで下手に出られるとものすごく居心地が悪い。


 それに、きんじょ様という呼び方が可愛くない。言っても仕方ないことだけど、せめてもう少し可愛げのある名前にしてほしかった……。


「まぁ、こればっかりは仕方ないさ。誰かが言い始めて勝手に広まっていくもんだ」

「はぁ……ですよね」


 呼び方を変えろなんて言えないし、甘んじて受け入れよう。


「それはそうと、そろそろ馬車の運転をしてみるかい?」


 話が途切れた時、マリンダさんが私に尋ねた。


「いいんですか?」

「行きにある程度教えたから、ここからは実践あるのみさ。この馬は賢いみたいだし、ちゃんとアイリスに合わせてくれるさ」

「わ、分かりました。馬さん、よろしくね」


 まだ少し教わっただけだけど、折角だからやってみよう。


 手綱を預かり、習った指示を一通りにやってみる。


 マリンダさんの言う通り、今回曳いてくれている馬さんは、とても優秀で私の指示にもきちんと従ってくれた。


 そのおかげで、あまり緊張せずに練習を行えた。


「それじゃあ、今日はここで休むよ」

「分かりました」


 日暮れ前に帰りの野営場所にたどり着く。


 行きとは別の場所で、他に宿泊者はいない。


「今日はありがとね」

「ヒヒヒヒンッ」


 御者台を降りて、下手くそな手綱さばきにも付き合ってくれた馬さんを労いながら首筋を撫でる。


 馬さんは気持ちよさそうに声を上げた。


『我は狩りにいってくる』

『あ、はーい。気を付けてね』

『ふんっ、我がその辺りにいる有象無象に害されるはずないだろう』


 アークは不機嫌そうな顔をしながら私たちの傍から離れていく。


 その姿はあっという間に視界から消えていった。


「アークはどうしたんだい?」

「ご飯ですね」

「そういうことかい。そうだ、旅に役立つ道具もらっただろ? 確認してみなよ」

「あっ、そうですね」


 何が入っているのかは確認していなかった。


 ぶっつけ本番で使うわけにもいかない。ここで使用感を確かめていた方がいい。便利な物があるかもしれない。


「おおっ、それは良い物を貰ったね」

「そうなんですか?」

「あぁ、マジックテントって言って、マジックバッグのテント版さ。魔力を込めてから放り投げると、自動的にテントが展開される優れものだよ」

「へぇ」


 袋から取り出したのは、折り畳み傘みたいに折りたたまれた手の平サイズの布。マリンダさんによれば、相当いいものみたい。


「開いてみればいい」

「そうですね」


 私は魔力を込めた後、マジックテントをひょいっと前に放り投げた。


 ――ボンッ


 そんな効果がふさわしい膨張の仕方で目の前にテントが姿を現す。


「どうやらペグ打ちは自分で必要なタイプみたいだね。高性能なテントと比べれば、劣るだろうけど、普通のテントに比べたら便利さ。それに中も少し広いはずだよ」

「あっ、本当ですね!! 不思議!!」


 マリンダさんに言われてテントの入口から顔を突っ込むと、人間なら三人~四人ほど寝れそうな空間が広がっていた。


 これならアークと一緒に眠れそう。


 頭を入れたり、出したりして、この不思議空間を確かめる。いったいどういう原理なんだろう。何度見たところで理解できない。


 でも、空間が広くなってるなら、もしかしてマジックバッグいらないんじゃ?


「言っておくけど、テントは中に何かを入れまま畳むことはできないし、重量も重くなるからね」


 そう上手くはいかないみたい。


 まぁ、マジックバッグが入荷してれば、手に入るから問題ないけどね。


「それもいいもんじゃないか。蓄魔力式ランタンだよ。魔力を込めておくと、ランタンとして使えるんだ」

「そっちは清浄の水袋じゃないか。入れた水を浄化して綺麗な水に変えてくれる旅人なら持っておいて損はない代物だね。水限定だけど、マジックバッグ同様見た目よりも水が入るはずさ」

「おっ、それは洗浄のオーブだね。体の汚れを取ってくれる。旅人なら誰でも欲しがるよ」

「マジックトイレもあるじゃないか。大盤振る舞いだね」


 他にも沢山いい物を貰ったみたい。


「これ、どうやって分けますか?」

「何言ってんだい? 全部、あんたのだよ」

「いやいや、そうはいきませんよ。付き添っていただいた上に、私の我儘にも付き合っていただいんですから」

「いいんだよ。今回はそれが仕事なんだから。とっておきな」

「わ、分かりました」


 マリンダさんは頑として受け取りそうにない。


 お言葉に甘えて受け取ることにした。


 おかげで次の旅がずっと快適になりそう。 


「そっちは手作りのローブだね。あんたの容姿は結構目立つから気を付けることだ」

「分かりました」


 さらに、村の人たちが作ったローブやら、毛布やらが入っていた。


 ただの村の人が作ったとは思えないくらいしっかりした作りで、これから重宝しそう。


 私たちは、来た時と同じように交代で見張りをしながら一夜を超える。


「あっ、街が見えてきましたよ!!」

「あぁ、帰ってきたね」


 そして、途中で薬草採取をするために寄り道をさせてもらいながら馬車走らせ、ようやくバンドールへと帰ってきた。


 帰ってきた、という気持ちになるくらいには、街に馴染んでいたみたい……よし、報告を済ませたら、薬を売って雑貨屋に行こう。


 マジックバッグが入荷してるかもしれない。


 手に入れたら、いよいよ、本格的な旅へと出発だ!!

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。


「面白い」

「続きが気になる」


と思っていただけたら、ブクマや★評価をつけていただけますと作者が泣いて喜びます。


よろしければご協力いただければ幸いです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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