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第28話 積み重ねた信用

「この度はありがとうございました。本当になんてお礼を言ったらいいか……」

「頭を上げてください。私は仕事を全うしただけですから」


 仕事を終えた私は、孤児院の前でエメラさんに頭を下げられていた。


「お姉さん、ありがとう」

「ミミちゃん、元気になってよかったね」

「うん!!」


 ミミちゃんの頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細める。


 子供は可愛いな。


「姉ちゃん、あんがとな!!」

「ありがとぉ!!」

「んーん、気にしないで。それじゃあ、皆、またね」

『バイバーイ!!』


 私たちは、エメラさんと子供たちに見送られ、孤児院を後にした。


『ミミちゃん、元気になってよかったよね』

『ふんっ、人間のことなど知らぬわ』

『またまたぁ、そんなこと言って。子供たちとしっかり遊んでたくせに』

『なっ、我は仕方なく遊んでやっただけだ!! 本当だぞ?』


 アークと念話で騒ぎながらギルドを目指す。


 私みたいにならなくて本当に良かったと思う。これからのミミちゃんの人生が、幸せなものになったらいいな。





「依頼完了ですね。お疲れ様でした。報酬は口座に振り込んでありますので」

「ありがとうございます」


 ギルドで依頼の報酬の受け取りを済ませる。


「それから、ギルドマスターがお呼びですので、ついてきてもらえますか?」

「分かりました」


 このタイミングで呼ぶってことは報酬が決まったってことかな?


「よく来たな。この前の緊急対応の査定が終わったぞ」


 案の定、予想通りだった。


「早いですね」

「まぁな。それで報酬なんだが、金貨二万枚になったぞ」

「……」


 ギルドマスターの言葉を聞いた瞬間、私の脳がフリーズした。


 頭が言葉を理解するのを拒む。


 金貨が一枚、二枚、三枚――


「おいっ、聞いてるのか?」

「き、きききき、金貨二万枚!?」


 ギルドマスターに声を掛けられて、私の脳みそはようやく動きだした。


「あぁ、そうだって言ってるだろ?」

「いやいや、だって、金貨二万枚ですよ?」


 金貨一枚一万円。つまり、二億円だ。仮報酬を貰っていたから、まさかそんなに大きな金額になるとは思わなかった。


「それだけの働きをしたってことだ」

「それにしたって金貨二万枚なんて……」


 たった一日手伝っただけでそんなにお金貰っちゃっていいの?


「お前さんが作った魔法薬の品質と数を考えれば、当然の金額だろう。むしろこれでも少ないくらいだ」


 詳細を聞くと、私はその日、二百本以上の回復ポーションを作ったらしい。そして、私の回復ポーションは最低でも一本百万円の価値があるとか。


 そんな価値があるなんて……信じられない。


「とりあえず、口座に振り込んでおくからな」

「待ってください」


 ぼんやりしていたら、そのまま手続きを進めようとしていたので、慌ててギルドマスターを止める。


「なんだ? 言っておくが、受け取らないってのは無しだ」

「分かってます。でも、私のお金は私が自由に使っていい、そうですよね?」


 それは前回聞いたから当然知っている。


 だから、別の使い方をしようと思う。


「そりゃあ、お前さんの金だからな」

「それじゃあ、全部孤児院や困ってるところに寄付してもらえますか?」

「はぁ!? 寄付だぁ!?」


 正直、金貨二万枚なんて使い切れない。このままだと口座の肥やしになるだけ。それなら、孤児院みたいにお金に困っているところに使ってもらう方が有意義だ。


 お金はまた別の手段で稼げばいい。


 普通に薬を売ってもいいしね。


「それで、冒険者ギルドに仲介してもらえると助かるんですが」

「うちで良いのか?」

「アークは鼻が利くので大丈夫です」


 アークがギルドマスターを信用できる人だと判断しているので、問題ないはず。


 アークがギルドマスターにジロリと睨む。


「そりゃあ、怖えな。はぁ、分かった。お前さんがそういうのなら、孤児院や困っているところに寄付するってことでいいんだな?」

「はい。よろしくお願いします」


 私は二億円を寄付する手続きを済ませた。





「そういえば、お前さん、そろそろ少し遠出する依頼を受けてみる気はないか?」

「遠出ですか?」


 ギルドマスターからまた思いがけない言葉が。


 元々お金を稼いでマジックバッグを買ったら国を出るつもりだったから、遠出なんて考えたこともなかった。


「あぁ、この街から一泊ほどの所に村があるんだが、支援物資を持っていってほしくてな。信頼できるやつに任せたいと思ってよ」

「そんな大事な仕事なら私以外の方が……」


 私はまだこの街に来てたった数日のよそ者。もっと適した人がいると思う。


「何を言ってるんだ? 言っただろ? 信頼できる奴に任せたいって。お前さんはまだ冒険者になって日が浅いが、真面目に仕事をこなしているし、依頼人からの覚えも目出度い。それに、あの崩落事件でのお前さんの働きには目を見張るものがあった。そして、極めつけは報酬を全額寄付ときたもんだ。そんな奴見たこともねぇよ。間違いなく、ここ最近でお前さん以上に信頼できる低ランクの冒険者はいねぇな」

「そ、そうですか……」


 まさかそんなに信頼してもらえているとは思わなかった。


 ギルドマスターの言葉に心が温かくなる。


「それで、どうだ? 受けてみないか?」

「分かりました。その仕事、引き受けます」


 私はその信頼に応えたい、そう思った。


「そうか、それは良かった」


 私の返事を聞いたギルドマスターは、その熊みたいな顔を綻ばせる。


 ――コンコンッ


 その時、扉をノックする音が聞こえてきた。


「ちょうどいいタイミングだな。入れ」

「悪いね。遅れちまったかい?」


 ギルドマスターの声とともに誰かが部屋に入ってきた。

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。


「面白い」

「続きが気になる」


と思っていただけたら、ブクマや★評価をつけていただけますと作者が泣いて喜びます。


よろしければご協力いただければ幸いです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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寄付めっちゃ叩かれるんだ…。 前世病室が世界の範囲で、今世軟禁されてた部屋が世界の範囲だったと思えば視野が狭いのは仕方ないかなって思って読んでたわ。 でもいつまでも私やっちゃいましたかムーブはどうかと…
こいつが無償でポンポン治しまくって寄付しまくって正規の値段で薬草買い取った爺さん可哀想すぎる 正義と善とまた私なにかやっちゃいました?がテーマなんだろうけどこれらの題材でここまで胸糞感じる作品も珍しい…
全額寄付とか冒険者ギルドからしたら大迷惑すぎる。 寄付先の選定(困窮具合の調査)、分配する割合(あそこはあんなに貰ってるのに!が必ず発生する)、実際に支給するところまで丸投げされて、ギルド側の人件費の…
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