第17話 光と影(実家視点あり)
「今日の作業は終わりだ。全員、嬢ちゃんに感謝しろよ!!」
『ありがとうございました!!』
仕事が終わるころには全員の態度が物凄く丁寧になった。
あの後、皆に心配されたけど、そういうスキルなんだと誤魔化して事なきを得た。
そして、お昼過ぎにはお仕事終了。本来は夕方ぐらいまでかかるんだけど、私が頑張り過ぎたおかげで今日やれることはもうなくなったらしい。
体を動かせるのが楽しくて張り切りすぎてしまった。
「嬢ちゃん、今日は助かった。明日も頼むな」
「はい。勿論です」
この依頼は五日間の依頼になっている。だから、明日以降も続く。
「それじゃあ、森に寄ろうか」
「ようやくか。随分待ったぞ」
「今日も宿のご飯つけるから許して」
「ふんっ、そんなもので許すと思うなよ!!」
「つけなくてもいいの?」
「いいとは言っていないであろう!!」
皆がいなくなったのを確認して、賑やかに話しながら街の近くの森に向かった。
「それでは行ってくる。ウロチョロするなよ」
「分かってるよ」
付近のモンスターはアークが倒してくれるから動いても大丈夫だと思うけどね。
気づいていることは言わないでおこう。
アークを見送った私は薬草を探し始める。
「あ、これは回復ポーションに使われるピュリア草だ。毒草のシヴォレ草とよく似てるから間違える人が多いんだよね」
見分けるコツは葉の裏の模様の色。シヴォレ草は模様に赤い筋が入っている。そこをしっかり見極めれば、間違わずに採取できる。
回復ポーションは怪我や体内の炎症などを治療する薬のこと。
傷の治癒速度を促進して早く治してくれる需要が高い薬の一つだから、今日はこの薬の材料をメインに探す。
「納品されたピュリア草の中に混ざってて、気づかずに使って酷い目に遭ったなぁ」
当時、まだ調合に慣れてなくて、家族だった人たちにめちゃくちゃに怒られた。
ただでさえめちゃくちゃになっていた私のメンタルは、もっとズタズタにされたのを他人事みたいに思い出す。
今は前世の私が強く出ているので、他人の記憶を見ているような感じなんだよね。
「あぁ~、勿体ない。これは成長しすぎてもう薬には使えないね」
勿論、良い物を見つけたら採取するのは忘れない。
見つけたのはルーリン草。
魔力を回復するマナポーションの材料になる少し珍しい薬草。この草は芽が出たばかりの時が一番薬効が高くて、蕾をつける頃には完全に薬効を失ってしまう。
たけのこみたいな感じ。
しばらく探すと、適した成長段階のルーリン草をいくつか見つけられた。
「スタミナポーションの材料になるクアロ草。これはちゃんと根っこごと丁寧に取らないと、すぐに品質が落ちちゃうから気をつけないと」
私はシャベルで土ごと掘り返し、丁寧に土払って革袋に詰める。
スタミナポーションは疲れにくくなったり、疲労を回復させてくれる効果がある。
他にもちらほら薬草はあったけど、この辺りに多いのはこの三種類だった。
「ノリノリ苔とヒエロ、それにピピスの蜜も集めなきゃ」
回復ポーションには、他に、ノリノリ苔とアロエに似たヒエロが必要になる。
苔は木片で端から少しずつこそげ取る。
手でちぎると、その瞬間から劣化が始まって使い物にならなくなる。
次はヒエロ。木の根元にアロエとは違う白い葉が顔を出している。
「ヒエロは折れないように……ゆっくり」
慎重に掘り出す。
葉の外皮を剥いた中のゼリー状の部分に素材同士の薬効を調和させる役割がある。このゼリーは空気に触れるとすぐに劣化が始まるから、折らずに抜き取るのが大事。
これは慣れていないと失敗する。調合小屋の裏で育てさせられて、いつもそこから引き抜いていたので問題なし。私は無言のまま、丁寧に引き上げた。
最後にピピスという花の蜜を探す。沢山咲いていたので瓶一杯に詰め込んだ。
この森にはどれも群生していて沢山手に入れられてホクホク。
各々革袋に分けてリュックに収納した。
「薬草は集まったか?」
数時間後、アークが帰ってきた。
顔を上げると木々の隙間から差し込む光の色が夕暮れへと変わっていた。
「うん、とりあえず今日の分は」
薬草採取用に買ったリュックの一つがパンパンになっているのを見せびらかす。
「そうか。帰り道にたまたま見つけたから拾ってきてやったぞ」
「あ、洋梨。ありがとう、アーク」
「ふんっ、目の前にあったからついでに取ってきただけだ」
「はいはい」
アークがまた拾ってきてくれた洋梨を袋に詰めて、私たちは宿に戻った。夕食を食べ、部屋で薬屋に持っていくポーションを作る準備を始める。
今日のうちに作っておけば、明日の朝には売りに行けるからね。
匂いがこもるのを避けるために窓を開け放ち、すり鉢などの調合器具を取り出した。机の上に材料を並べて、まずはピュリア草を刻む。
刻んだ葉と茎をすり鉢に入れ、手からすりこぎに魔力を流し込みながら潰していく。
その間、少しずつノリノリ苔を湿ったままほぐして混ぜ、ドロドロの液体状になるまでしっかりと潰す。
そして、ボウルに移し、ヒエロの中身を少しずつ加え、撹拌用の木棒から魔力を流し込みながらゆっくりと混ぜていく。
全体が馴染んできたところで、仕上げにピピスの蜜を数滴だけ垂らした。
指先から魔力を伝えながら、最後にひと混ぜ――
色が透き通った緑色に変わった。アイリス――今世の私の瞳の色によく似ている。
「うん……成功」
手の甲に乗せて品質を確認。
匂いはサイダー系の爽やかな香りに、フルーツゼリーのような味わい。
これで間違いなく回復ポーションは完成。家の道具でしか作ったことがなかったから、少し不安だったけど、ちゃんとできて良かった。
これで明日ポーションを売りに行けそう。
そう思いながら、次の分を作りはじめた。
◆ ◆ ◆
一方そのころ。
「それでは、ノーマン君、今日からここが君の職場だ」
「これは……素晴らしい施設ですね」
薬師ノーマン・ボードレスは、四十代ほどの男に真新しい建物に案内された。
そこにはありとあらゆる薬の調薬器具が揃っていて、まさに調合するためだけに用意された部屋だった。
「それでは早速調合を始めてくれたまえ」
「分かりました」
男はノーマンを置いて去っていった。
「さて、早速調合を始めるか」
すでにノルマを課されている。さっさと作り始めなければならない。
「まぁ、こんなものだろう」
ものの数分で一本の薬が出来上がる。回復ポーションだ。出来も問題ない。
「そういえば、前任者のポーションを見たことがないな。どこかにあるのか?」
別室を探してみると、すぐにそれを発見した。
木製の箱が並んでいて薬が納められていることが分かる。
「どれだけ無能だったのか確認してやろう……」
ノーマンは木箱を下ろして、ふたを開けた。
「な!? これはなんだ!? 魔法薬だと!? そんなバカな!?」
中に入っていた回復ポーションを見た瞬間、ノーマンは叫んでいた。
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