表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

169/170

第169話 一休み

 私たちはレースで大勝ちして宿に帰ってきた。


「おかえりなさい」

「楽しめたかしら」

「はい、とっても」

「それは良かったわ。夕食もうすぐできるから待っててね」

「ありがとうございます」


 初日と同じように夕食を食べ、地下の鍾乳洞温泉に入ってベッドに潜り込む。


 なんだか今日はちょっと疲れた気分だ。楽しい場所はいっぱいあるし、賑やかなのもいいところだけど、ずっといるとちょっと窮屈に感じてしまうんだよね。


「明日は街の外に行こうかな」

「なぜだ?」

「この街ギュウギュウで息が詰まるんだよね。外に出て羽を伸ばしたいなって」

「確かにこの街はかなり窮屈だな」

「だよね」


 アークもストレスを感じていたみたい。


「ピピィ……」


 エアも少し元気がない。


 バッカーノはあまり長くいるような場所じゃないと思う。ふらりと立ち寄って目一杯楽しんだら、次の街に旅立つくらいがちょうどいいんじゃないかな。


「この街は娯楽が多くある反面、人の多さや建物の狭さなど、ストレスが上昇する要素も詰まっています。長居はあまり推奨できません」


 レインもこう言っている。


 手に入れたい物はもうほとんど手に入れたし、オークションが終わり次第、ハーベストへ旅立とう。




 翌日。


「女将さん、すみません。この街は少し息が詰まるので、何日か街の外に行ってきてもいいですか? その間の料金の返金は不要なので」

「えぇ、構わないわ。私もその気持ちは分かるもの。気を付けて行ってくるのよ?」

「ありがとうございます」


 女将さんに相談すると快く了承してくれた。


「いってらっしゃいませ!!」


 私たちは門番さんたちに見送られて街の外へと出発。


「うーん!!」


 街から離れた場所でググーッと伸びをすると、一気に解放感が襲ってくる。


 街の中と違い、どこまでも続く草原の景色が心を浄化してくれる。やっぱり私にはこういう解放感のある場所が性に合っている。


「ピピィッ!!」


 エアも解き放たれた矢のように空を飛び回っていてとても楽しそう。


「我も少し走ってくる」


 そう言ってアークも元のサイズに戻って駆け出した。


 一瞬ではるか遠くまで消えて見えなくなる。


 皆、相当ストレスが溜まっていたらしい。


「私もちょっと走ってくるね」

「お供します」


 私が走り出した後をレインが追ってくる。


「わぁあああああああっ!!」


 私はなんとくなく叫びたくなって叫んだ。


 思い切り叫ぶのは気持ちがいい。


「私もやってみます。わぁああああああああっ!!」


 レインも私の真似をする。


「発声に一定のストレス発散効果があることを確認しました」

「やっぱりそうなんだね」


 ストレス発散にちょうどいいみたい。


 私とレインは、体の中に溜まったストレスを全て吐き出すつもりで叫び続けた。


 ある程度満足すると、アークとエアが帰還。


 アークの口にはシモフリバイソンに似たモンスターが咥えられている。


 私たちはアークが見つけた川の側まで移動した。


「これで料理を作れ」

「はいはい。分かったよ」


 エアもお腹が空いたようなので料理を始める。


 血抜きはすでにされていてアークがバラバラに解体した。


 今日はその肉を塊のまま使おうと思う。


 まず最初に鍋に水を張り、米を洗ってつけておく。


 沢山のフライパンを並べ、肉の塊に塩と胡椒を刷り込んで、フライパンに油を引いて肉の表面を全面しっかりと焼き付ける。


 全体に焼き色がついたら、火を弱火にして蓋をする。


 この状態で十分くらい蒸し焼きにしつつ、途中で一回ひっくり返した。その後、火を止めて蓋をしたまま十分くらい放置。


 取り出して薄く切ってみる。


「うーん、少し火が通りすぎちゃったかも」


 塊の肉の内部も結構火が通ってしまっていた。


 もう分かると思うけど、私が作っていたのはローストビーフ。


 外側と中身の色のコントラストがとても大事。でも、袋やアルミホイルがないから、フライパンとフタだけで作ってみた。


 その結果、少し火を通し過ぎてしまった。加減はなかなか難しい。


「レイン、今よりも蒸し焼きの時間を少なくして揺らぎを持たせていくつか作ってみてくれる?」

「かしこまりました」


 そこで、レインに指示を出して時間別にローストビーフを作ってもらう。レインは一度見れば工程を覚えてしまうのでそのくらい簡単だ。


 その間に私はローストビーフに掛けるソースを作っていくことに。


 にんにくしょうゆのソースと、シャリアピンソースの二種類。どちらもそこまで時間がかかるものではないのでどんどん量産していく。


「マスター、いくつか作ってみましたが、いかがでしょうか?」

「これが一番良いと思う」

「かしこまりました」


 ソースを作っている間にレインが何パターンかのローストビーフを持ってきたので、一番色合いが綺麗なものを選んだ。


 レインは米を火にかけ、一番色合いのいいローストビーフを量産していく。私はサラダを作り、購入したばかりのガラスの器に盛りつけた。


 見た目がとても涼やかになっている。


「ローストビーフ丼も完成!!」


 出来上がったのは花のように盛りつけた見た目も美しいどんぶり。


 ソースはお好みで。追いローストビーフもたくさん用意してある。


『いただきます!!』


 準備を終えると、私たちは勢いよく食べ始めた。


『うまぁああああああい!!(ピピィイイイイイッ!!)』


 外で食べる料理は店とはまた違った良さがある。


 私たちは終始無言で食べ続けた。

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。


「面白い」

「続きが気になる」


と思っていただけたら、ブクマや★評価をつけていただけますと作者が泣いて喜びます。


よろしければご協力いただければ幸いです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
地元の女将まで感じる街の窮屈感なら、より冒険者と鳴らしお付きを従えるヒロイン一行には息苦しいのでしょう。また、幼き時より屋敷に監禁状態であったトラウマ的なものも心の何処かにあるのでしょう。只、顔貌の良…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ