第167話 イートモンスターズ
「マスター、そろそろお昼の時間かと」
流石人型ゴーレムのレイン。時間も完全に把握している。
『そうだぞ、腹が減った』
「ピピィッ」
アークとエアも同調する。
「そうだね、どこかで食べようか」
アークの鼻を頼りに良さそうのお店に入って昼食を食べることに。
『あの店が良いだろう』
「了解」
扉を開けた途端、大きな声が聞こえてきた。
「終了!!」
「うぉおおおおっ、くそっ!!」
にこやかな表情の店員とは対照的にお客さんの男の人が悔しそうにテーブルを叩いている。
あれ? これってもしかして……。
「残念でした。また次回ご挑戦ください。お代は金貨二枚になります」
「ちっ、次こそは食べきってやるからな!!」
お客さんが残った料理を箱に詰めて捨て台詞を吐きながら金貨を店員に投げつける。
「またのお越しを!!」
店員は態度を崩さないまま金貨をキャッチしてお客さんを見送った。
しばらく反応がないので声を掛ける。
「あの~」
「あっ、申し訳ございません。いらっしゃいませ」
「今のお客さんいったいどうしたんですか?」
もしかしたら、私がYoTTubeで見ていた企画の一つが行われているかもしれない。
「はい。当店にはチャレンジメニューというものが存在しまして。そちらをお時間内に完食されますと、なんとお代が無料になります」
「へぇ~、それはお得ですね!」
予想通り。このお店では大食いチャレンジが行われていた。
「ただ、完食できなかった場合は、金貨二枚のお代を頂いております」
「なるほど。失敗するとリスクがあるんですね」
金貨二枚と言えば、結構な大金だ。一回の食事が銀貨一枚程度もあれば事足りることを考えると約二十倍の金額になる。
もちろん、量が二十倍になっているならそのくらいの料金を取られるのは普通だと思うけど。
「そういうことでございます」
「ちなみに、従魔もいるんですが、今から私たち全員がそれぞれ挑戦することはできますか?」
ふっふっふっ。なんて素晴らしい企画なんだろう。話を聞いたら挑戦せずにはいられない。
『お前にしては良い判断ではないか』
『ピピィッ』
『とてもいいお店ですね』
食いしん坊な仲間も乗り気になっている。
「あなた方が、ですか?」
「はい」
店員さんが私たちを嘗め回すような視線で見つめた。
「はい。構いませんよ。ただ、そちらの従魔のチャレンジメニューの量に関しましては、さらに倍、失敗時の金貨を四枚とさせていただきますが、それでもよろしいですか?」
店員さんはニッコリと笑って頷いてからアークへの条件を追加する。
アークなら通常の量では食べられてしまうと思ったのかもね。でも、その選択は命取り。
「大丈夫です」
「そうですか。かしこまりました。それではこちらをどうぞ」
「分かりました」
このお店は従魔も一緒で大丈夫みたい。バンドールでは結構厳しくて入れなかったんだけどね。助かる。
私たちは店員のあとについていく。
「こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
かなり大き目のテーブル席に案内された。明らかに全員がデカ盛りチャレンジをするための広さに造られている。
他にも同じような人がいたのかもしれない。
「それでは、チャレンジメニューはステーキを六キロをこちらの砂時計が落ち斬る前に食べてもらうことになります。準備が整うまでしばらくお待ちください」
「分かりました」
店員さんはお辞儀をして去っていった。
『ふっ、タダで肉を食べさせてくれるとは良い店ではないか』
『私たちにとっては天国だね』
『ピピピィッ』
『そうだね、早く食べたいね』
『マスターに支払いをさせるわけにはいきませんので全力で食べます』
『無理はしないでね』
私たちはウキウキしながら料理を待つ。
「お待たせしました!!」
「おお~」
しばらく経つと、料理が運ばれてきた。
私たちの前にそれぞれ山のように積まれたステーキがドンと置かれる。
――ジュルッ
肉が焦げた香ばしさとソースのフルーティな臭いがマッチして食欲を掻きたてて、涎が止まらなくなった。
アークのステーキだけ富士山みたいになっている。アークは幸せそうに頬を緩ませていた。
「それでは開始いたします……スタート!!」
店員さんの掛け声によって砂時計がひっくり返される。
ついに始まった。
一枚一枚が二百グラムから三百グラムくらいありそう。
お肉にナイフを入れるとスッと簡単に通った。フォークで刺して口に運ぶ。
「美味しい……」
最初にお肉だけ食べてみたけど、良いお肉なのかとってもジューシーで肉汁が溢れてきてとても好みの味だった。
時間がないので、できるだけ大きめに切って口いっぱいに頬張る。とても幸せな気分だ。
噛まなくても簡単にほどけていくので全然飲めてしまう。
ステーキは飲み物だって初めて知ったよ。
アークはほとんど切らずに一枚ずつ頬張り、エアは魔法で浮かせて切り裂いてバキュームみたいに吸い込んでいる。
レインは一見お嬢様のように優雅にステーキを食べているけど、その速度が人間とは思えないスピードでなされていた。
「な、なんなんだ、あいつらは!?」
「信じらんねぇ」
「化け物か!?」
周りがざわついている気がするけど、気にしない。
「ごちそうさまでした」
「わふっ」
「ピピッ」
「もうなくなってしまいました」
それから二十分もせずに全員が食べ終えてしまった。
「そんなバカな……」
店員さんが私たち全員が完食したのを見て顔を青ざめさせていた。
ちゃんと許可はとったし、問題ないよね。
「ありがとうございました! あなた方は今後当店でのチャレンジメニューへの挑戦はお受けできませんので、よろしくお願いします」
「分かりました」
店員さんは顔を引き攣らせながら私たちを見送った。
まぁ、しょうがないよね。
「いらっしゃいませぇ!! うちは食べ放題のお店だよ。寄っていっておくれぇ!!」
ホクホク顔で歩いていると、今度は食べ放題のお店が。
まさかそんなお店もあるとは思わなかった。
居てもたってもいらずに入店。
「出禁です」
楽しんでいたら、追い出されてしまった。
残念。
楽しかったので、まぁいっか。
私たちは『イートモンスターズ』と呼ばれるようになることをまだ知らない。
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