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第11話 新しい目標

「できるだけ早くカバンを買おう」

『そうだな』


 薬屋を後にした私たちは、お爺さんに教えてもらったお店のざっくりとした位置と名前を元に街を歩いていく。


「あ、ここだ」


 色々彷徨ってようやくカバンを取り扱う雑貨屋さんにたどり着いた。


「こんにちは~」

「おや、いらっしゃい」


 店内には沢山の雑貨が置いてあって、その一つ一つが異国情緒が溢れていてファンタジーを感じる。


 私、ずっとこのお店の中に居たいかも。


『おいっ』

『あっ、ごめん』


 ぼーっとしていた私の背中をアークが突っつく。


 すっかり自分の世界に入ってしまった。


 店主はのほほんとしたおばあさん。雰囲気が少し前世のお婆ちゃんに似てる。


 とにかく、せっかくカバン買うなら異世界ものの定番、マジックバッグが欲しい。


 これから旅をするとしても荷物が沢山必要になる。快適に過ごすためにはマジックバッグは必須だと思う。


 どのくらいの値段なのか分からないけど聞いてみよう。


「あの、すみません。薬屋のお爺さんに紹介されてきたんですけど、マジックバッグはありますか?」

「へぇ~、あの爺さんがねぇ、珍しいこともあるもんだ。マジックバッグかい? あるよ。でも、幌馬車の荷台程度の容量でもかなり値が張るけど大丈夫かい?」

「えっと……いくらですか?」


 あまり高すぎると諦めなきゃいけないけど……。


「金貨三百枚だね」

「!?」


 めちゃくちゃ高い! 日本円で三百万円……あれ、でも、三百万円で幌馬車の荷台くらいの荷物を気にせず持ち運べると考えれば、安いのかな?


 それに、思ったよりも届きそうな値段。


 妖精の雫は全部で二十個。一つ金貨十枚で買い取ってもらえたから、金貨二百枚。それからミルフォーゼとかの薬草なんかと合わせて、金貨二百二十枚くらいある。


 金貨三百枚まで残り金貨八十枚。


 でも、八十枚だけ稼いでもカバンを買ったら全部なくなっちゃう。これからいろんな買い物をすることを考えると、さらに百枚以上ほしいところ。


「どうするんだい?」

「……また今度にします……」


 先立つものがなければ買えない。今回は諦める。


 でも、これで次の目標ができた。


 それは、マジックバッグを買うことと、旅に必要な資金を溜めること。それまでは、この街を拠点にして冒険者として活動したり、薬を売ったりして稼ごうと思う。


「そうかい。他に必要なものは?」

「大きめのリュックと肩掛けカバン、それと革袋が沢山欲しいんですけど、ありますか? それと野営や旅に必要そうな雑貨も教えてくれると嬉しいです」

「あぁ、ちょっと待ってな」


 まずは普通の収納道具と必要な道具を購入した。


 次に向かったのは服屋。


 私はいかにも冒険者風のパンツスタイルの動きやすそうな服を試着している。


「どう? 似合う?」

『ふんっ、何を着ていようがお前はお前だ』


 アークは興味なさそう。


 なんだかこれを着ているだけで冒険者になったみたいな気分。


 他にもいくつかの着替えと下着類を購入し、武具店も覗いたけど、高すぎて手が出なかった。


『我は腹が減ったぞ』

『もう、そんな時間かぁ』


 色々を回っていたら、結構時間が経ってたみたい。


 私はお腹が空かないので気にならなかったけど、ご飯は昨日食べたきり。


 私とアークは食事処を探す。


 お昼時は過ぎているみたいだし、すぐに入れるでしょ。


『すまんな、嬢ちゃん、うちはそんなに大きな従魔は入れられないよ』

『悪いな。うちは従魔の同伴はお断りなんだ』

『獣に食わせる飯はない!』


 そう思っていたのに、どこのお店に行っても入店を拒否されてしまった。


 アークは大きいし、食事処に獣を入れるのはハードルが高すぎたみたい。


『災厄である我に食事をさせないとは人間どもはなんと傲慢になったものか!! 昔は我が近づくだけであんなにビクビクと怯えておったくせに!!』


 そうすると、当然アークはご立腹になる。今にも大暴れしそう。それは困る。


 あっ、そうだ!! 良いことを思いついた。


「それじゃあ、食材を買って宿屋の厨房借りて作ろうか?」

『お前は料理が作れるのか?』

「実際に作ったことはないけど、料理を作る動画を見てたから作れると思うよ」


 YoTTubeで動物系チャンネルの他に、レシピ動画や料理動画を何度も見ていたので予習はバッチリ。作り方も覚えてるから作れるはず。


『動画?』

「あ、なんでもない。まぁ頑張れば作れると思うよ」

『ふむ。仕方あるまい。それで良しとしよう』


 宿屋に行く前に市場に寄ってみる。


「これが市場かぁ……」


 市場には人がごった返している。あちこちで呼び込みや値段交渉の声が飛び交い、とても賑わっていた。


 こんなに人が沢山いる場所には来たことない。


 前世で賑わう日本の有名な商店街や海外の市場の様子を見て行ってみたいと思ったけど、人の多さに圧倒されそうになる。


 でも、立ち止っている場合じゃない。お店を見て回る。


「うっ」

『どうしたのだ?』

「い、いや、なんでもないよ」


 でも、立ち寄って後悔した。だって、見たことのない食材ばかりだったから。地球と同じだとは限らないということをすっかり忘れてた。


 今世では碌な食事も摂れなかったので、正直、食材の味や特徴が何も分からない。このまま調理したら、失敗するのは目に見えている。


 でも、楽しみにしているアークには今更作れないとは言いづらい。


 どうしよう…………そうだ、お肉料理にしよう!!


 こっちの世界の野菜とかは想像もつかないけど、お肉なら味の想像ができる。焼くだけなら失敗もしないはず。


 早速肉屋さんを訪問。


「これはなんの肉ですか?」

「フォレストボアの肉だよ。臭みが少ないけど、少し脂っぽい感じ」

「こっちは?」

「ビービーバードの肉だね。臭みが少なくて、あっさりした味かな」

「これは?」

「ダッシュブルの肉だね。少し臭みがあって、コッテリした味かな」


 豚、鳥、牛って感じの肉が売っていた。


『ダッシュブルで我慢してやる』

『はいはい』


 一番高いダッシュブルをご所望されたので数キロ購入。でも、アークの胃袋を考えるとこれでも足りなさそう。


 最後に調味料を購入した私たちは、勧められた宿に向かった。

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。


「面白い」

「続きが気になる」


と思っていただけたら、ブクマや★評価をつけていただけますと作者が泣いて喜びます。


よろしければご協力いただければ幸いです。


引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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 『厄災』なら尚更お断りだぞ、アークさんや(笑)
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