表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/30

クラッシュ・シンバル・クラッシュ

 Awazon超お急ぎ便。箱にはそう書いてあった。

 山崎の背中に冷たいものが走る。それでも、同じリズムでドラム叩き続けた。

 箱は、平べったい形の直方体だった。それだけで、山崎はこれから起きる不幸を悟った。


 曲がサビに入る。ロックフェスに相応しい、アップテンポの曲だ。どうしたって、激しくドラムを叩かざるを得ない。


 Awazon超お急ぎ便は、10秒後に欲しくなる商品が手配されるサービスだ。

 逆説的に言えば、10秒後にその商品が必要となるような不幸が起こる、ということだ。


 箱の中は、間違いなくクラッシュシンバルが入っているはずだ。


 ——馬鹿な。


 山崎はやや上に視線をやり、クラッシュシンバルを一瞥した。


 ——昨日買ったばかりだぞ。


 ジルジャンKカスタム。ギラギラと、真夏の日の光を跳ね返していた。1枚、50000円。それが、10秒後に必要となる。それが意味することはひとつだ。


 シンバルは消耗品だ。それを承知で買った。それなのに、シンバルを叩く手に、力が入らない。曲の勢いが死んでいく。ベースの村田がチラチラとこちらを見てくる。


 あと3小節でギターソロに入る。シンバルを連発する場面だ。きっと、そこで壊れるのだろう。ありがとうジルジャンKカスタム。いいシンバルでした。山崎はスティックを振り上げる。


 轟音。山崎の前に落ちた。ステージが爆ぜた。観客席から悲鳴が上がる。

 演奏は、止まっていた。

 メンバーが、呆然と山崎の方を見ていた。


 シンバルが、まっぷたつになっていた。隕石が直撃していた。

 スタッフが一斉に駆け寄る。会場中が騒然となる。


 山崎は慣れた手つきで箱を開封し、クラッシュシンバルを付け替える。


「入ってて良かったAwazonプライム」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ