おれたちの失敗
コタツの上で、土鍋がぐつぐつと音を立てていた。味噌と魚介出汁が混ざった豊潤な香りが広がる。
東山はコタツに足を入れ、寝転んでいた。大きく、伸びをする。全身に疲労が溜まっていた。
「上田ー、こんなときにまで漫画読むなよ」
鍋奉行の平井が視線を鍋に向けたまま言う。上田は寝転がって漫画を読んでいた。進撃の巨人の最新刊だ。
「ほら、もうすぐ完成だから」
平井が東山と上田に、起き上がるように促す。海老、豆腐、白菜、豚肉が、鍋の中で煮えていた。腹の虫が鳴る。
「あ、そういや、こんなものもあるぜ」
上田が、赤ワインを取り出した。東山は苦笑した。確かに鍋とワインの相性は良いが、このタイミングで飲むようなものでもない。とはいえ、食欲と飲酒欲に抗うことは出来なかった。3人は紙コップにワインを注いで乾杯した。
鍋はあっという間に空になった。締めの雑炊ももう無い。
「なあ、今度はこれしようぜ」
上田が、今度はトランプを取り出した。
「もう、なんでもアリだな」
平井が呆れた顔で言った。
片付いたコタツの上にカードが配られた。今夜は長くなりそうだと、東山は思った。
「なあ」
東山が口を開いた。
「今度登山するときは、Awazon超お急ぎ便をオフにしようぜ」
雪の吹き荒ぶ音はテントの中にまで響いていた。
標高3000mの夜は、ゆっくりと更けていった。