猫の需要・人間の供給
Awazon超お急ぎ便の箱が置いてあって晴彦はどきりとする。
Awazonプライム会員になって2ヶ月目だが、未だに晴彦はこの現象に慣れなかった。気がついたときには、そこにあるのだ。
箱は、膝の上に乗るくらいの大きさであった。カッターナイフを取り出して封を開ける。包装が過剰過ぎるのは、超お急ぎ便に関わらず、Awazonの欠点だと晴彦は思う。
『新発売!猫ちゃん快適ふわふわキャットハウス!』
テレビからCMが流れる。欲しい。晴彦は即座に思った。既に、手元にあった。精度が良すぎて、気味の悪さを感じるほどだ。
にゃあ。晴彦の親愛なる同居人アレックスが、傍らで鳴いていた。今日もその銀色の毛並みはふわふわで艶々だ。この彼が、あのキャットハウスで優雅に寝る様を想像する。恍惚が全身を駆け巡った。
にゃあ。アレックスはもう一度鳴いた。晴彦は急いで開封する。
「アレックス! 君の素敵な寝床を用意したよ!」
アレックスは、それに見向きもせず。おもむろに段ボールの中に居座った。寝転がり、微動だにしない。
「アレックス! 新しい寝床だよ!」
「アレックス? ふわふわだよ?」
「アレックス……? ほら、こういうの好きだろ?」
「……アレックス?」
「アレックス!」
「アレックス……」