12/124
忍びよる怪物
風の強い夜であった。屋根や壁が揺れる音が、浴室まで聞こえてきた。
明奈は、シャワーを体に浴びせていた。
酒を飲んだ後なので、浴槽には浸からない。軽く身体を温めるように湯を流していた。
飼い犬が、やけにうるさく鳴いていた。風の音に負けないほどだ。いつもは、滅多なことで吠えない犬だ。
「ジョン? ジョン?」
明奈は犬の名前を呼ぶ。鳴き声が止むことはない。
侵入者が、裏口から入っていた。2m近い大男である。ドアを力づくでこじ開け、浴槽へゆっくりと近づいていた。斧が、右腕の先で光っていた。
明奈は、鼻歌まじりでシャンプーを洗い流していた。侵入者の存在に気がつくことなく。
廊下が、軋む。侵入者は、脱衣場から光が洩れていることに気がつく。一歩、また一歩と近づく。口から、荒い息が出ている。
明奈は体を洗おうとする。そこで、石鹸を切らしていたことに気がつく。しかし明奈は慌てない。こういうとき、脱衣場にAwazon超お急ぎ便の箱があるはずだ。
侵入者は目標を定めた。血を欲して徐々に歩を早める。脱衣場に踏み込む。斧。振りかざす。
「きゃあああああああ!」
絹を裂くような悲鳴が家中に響いた。
ホッケーマスクをかぶった大男が、頭を強打して死んでいた。
足下には、潰れた石鹸と、Awazon超お急ぎ便の箱が落ちていた。




