表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/70

若宮 さつき①

 テスト当日。

 さっちゃん対策はバッチリです。

 テスト対策?なんでしょうかそれは。


「まさか本当にカンニングできる形式になるとはねえ~、同じグループってラッキーすぎ~」


「よーし、わざと間違えるか」


「やめてよ~笑」


「じゃあわざとじゃなくて偶然ってことにするか」


「間違えないでね?」


 さっちゃん相手はボケを連発するべし。凛ちゃんがすごい顔してるな。まあ、意図は分かってるだろうけど。


「実戦訓練って言うけど、なにすんだろうね?」


「ああ、もうあれ確定だな。あれ。な、凛ちゃん?」


「え、ええ?」


「ちょ、丸投げ笑」


「え、えっと、グループに分けたということは、それが何かしらの形で関わってくるはず」


 凛ちゃんも気を使って話を振られたと分かっているので、ちゃんと返してくれる。実際、さっちゃんには真面目な話よりボケだから正に丸投げしたんだけどね。凛ちゃんの考えも聞けて一石二鳥だ。


「チーム戦だと思う。ちょっと特殊なルールだろうけど。」


「へ~、リンリン賢いねえ」


 凛ちゃん流石だね。チーム戦濃厚だよね。例えば、勝ち抜きじゃどうやってもここが勝つ。それも何も考えずに。そう考えれば、やっぱりチーム戦でしょ。

 でも、それだけだと1日も使う理由があるかは疑問だ。


「それと、時間的に多分総当たり戦をする」


「あ~、1日目がこれだもんねえ」


 さっすが凛ちゃん!

 俺は急に凛ちゃん殺したりしないからね。

 早く元に戻ってね。


「じゃあ、実戦訓練の説明を始める」


「タカミン、待ってました」


 先生にも渾名なのかよ。

 無差別すぎるだろ。

 葵ちゃんのことはなんて呼ぶんだろ。

 

「任せとけ!タカミン、説明しまーす」


 先生もノリノリなのかよ。

 無邪気すぎるだろ。

 凛ちゃんはなんて思ってるんだろ……。


「形式は、総当たりのチーム戦だ。先に一人落とされた方の負けだ。落とされた判定は、場外に出るか、地面に手をつくかだ。あと、大怪我を負わせるとか、危ないことしようとしても落ちた判定になりまーす」


「リンリンすごっ、言った通りじゃん」


 まあ、これくらいは予想できるし、させようとしてる節もある。さっちゃんの凛ちゃん好感度を上げるのに使えるぜ。さっちゃん、凛ちゃんの友達になるんだ。

 正反対っぽいけど、さっちゃんはちゃんと陽キャだし、大丈夫でしょ。

 そして、誤解を解くんだ。


「そんで、どうするの?ウチらの最初の相手はBグループだけど」


「そうだな、あの作戦だな、あれだ。な、凛ちゃん?」


 さっちゃん、俺が話してる途中でもう笑うのやめろ。


「え、ええと……」


「でも、実際リンリン頭良いし、任せとけば良い感はあるよね~」


「……相手の主力は間違いなく白石さん。一之瀬さんも強力だけど、怪我させられないなら補助しかできない」


「手加減しないと怪我させちゃうけど、手加減できる能力じゃないしねえ~」


 なんだかんだ、話が分かってるさっちゃん。いいぞ、凛ちゃんの友達になれ!!


「白石さんと…望月くんが戦うなら、負けないから、大事なのは他の2人を私たちで抑えること」


「確かに。模擬戦いっぱいしてたけど、負けなしだもんねえ~、モッチー」


 いっぱいしたけど、一敗もしてないぞ。

 いっぱいシたいね。


「タイマンに集中できるように、指揮は私が執る。若宮さんは五十嵐君を抑えてほしい」


 俺に指揮すらさせないとは。凛ちゃん優秀すぎるよ。指揮するってだけで全体見ないといけなくなるからね。


「いたかし君だけなの?」


「いたかし……五十嵐君の能力はとても厄介だから。何をしてくるか読めない」


 五十嵐隆史で、名字と名前の後ろ三文字が韻踏んでるんだな。それを入れ替えてる。こんな高度な名付けもあるのか、さっちゃん。


「いたかし君相手にはこうしとけばOK、みたいなのないもんねえ~」


「戦いの基本は数だけど、それが同じなら単純な技量と情報の違いが大きい」


 凛ちゃんスゴいなあ。頭よい。


「リンリンすごいなあ~、頭よ~」


 真似すんな!


ーーー


凛ちゃんの立てた作戦で、いざ実戦!!


「ねえ、魁にぃ、今度こそ勝つから」


「そうこなくっちゃな」


 何度見てもえっちだねえ、世良。


「それでは、試合開始ッ!!」


「新月」「黄昏(トワイライト)

「燃えろ」

「辞書か辞典か持ってこーーい!」


 初手、俺が世良と接近戦を狙って近づく。こうすると、迂闊に火をだせない。葵ちゃんの火は本当の火だから、味方も巻き込んでしまう。

 さっちゃんは、五十嵐君に近づくのを狙う。でも、そもそも火で接近すらできないか。俺に火を向けるつもりは最初からなかったみたいだな。

 凛ちゃんは、後方に下がる。肉弾戦しかできない上に、それもそこまで強くない。場外ギリギリに陣取るのが正解だ。


 普通、あまりに離れすぎると、声が聞こえなくなるし、よく見えないしで非効率だ。しかし、そこはさっちゃんの『言霊』で解決。

 さっちゃんの能力は、簡単に言えば通信機だ。音とか、映像とかをやり取りできる。小さなイヤホンやマイクが使える。それを見て、凛ちゃんが指揮をする。

 凛ちゃんが対応してくれるなら、俺は目の前だけ見ていればいい。何かあれば凛ちゃんが知らせてくれる。


 さて、問題は五十嵐君だな。彼の能力は、ルーレットを召喚することだ。昔の電車の行き先表示みたいに、パタパタと表示が変わる。そして、止まったときに出ている単語を『言霊』として行使する。現れうる単語は、彼が知る単語全てだ。ゆえに、予想することは不可能。中々に面白い能力だ。文字媒体ってのも面白い。


 さて、俺は世良との一対一に集中しようかな。


ーーー


 凛ちゃんと呼んできたことは一旦忘れよう。ただの気まぐれ、ふざけているだけ。そう自分に言い聞かせる。


「一回五十嵐君から離れて。『言霊』を見てから考える」


「リンリン、りょーかい」


 火があって近づけないなら、無理するよりこれでいい。時間を稼げば問題ない。

 あくまで冷静に、冷静に。

 凛ちゃん、ってなによ、凛ちゃんって。


「ぽちっとな」


 ボタンを押すと、ガラガラと表示が変わりだす。

 段々ゆっくりになり……止まる。


(ファミレス)


 さあ、どうなる?


「お客様、3名様ですか?」


 急に五十嵐君が店員になる。

 概念に干渉するような強力な『言霊』を引いてしまったようだ。

 ここからは彼の思うファミレスを舞台に戦うことになる。


「いや、一人でーす」


 若宮さんがそう答える。

 そうか、これならファミレスに引き込まれるのは一人で済むってことね。


「お煙草は吸いますか?」


「吸わないです」


「うちは全席禁煙なんです。こちらへどうぞ」


 そういうと、2人の周りの火が消えた。禁煙だからってこと……。

 しかし、そうなると……


「一之瀬さんがそっちに行く」

「了解」


 望月くんにそう伝える。

 どうせ禁煙で手出しできないのだから、こうなるよね。


「ご注文決まりましたらボタンでお知らせください」


「ありがとうございまーす」


 しかし、若宮さんの適応能力すごいわね……。あそこでとっさに一人と言うなんて簡単にできることじゃない。

 しかし、これならいける。若宮さんに指示をだす。これで、ファミレスの料理が無事に届けばこっちの勝ちだ。


「再びのぽちっとな、パート2」


ガラガラ……


「ウチも押しちゃおっと」


 更にルーレットが加速する。


ガラガラガラガラ……


「お待たせしました、ご注文をお伺いします」


 ボタンを押したから、店員が来たのね……。こんな訳の分からない状況なら、やっぱり若宮さんに細かいところは任せて正解だったわね。


「ドリンクバー3つで」 


(福豆)


「いたっ」

「いてっ」


 空から福豆が……。


「ドリンクバーって、いてっ、どこですか?、いてっ」


「ドリンク、いたっ、バーはあちら、いたっ、です」


 どうやら、望月くんは上手くやっているみたいね。そもそも、召喚ってのが強すぎる。使うだけで数の有利を確保できる。空からの福豆もバリアで防いでいる。足元に転がってないのが大きい。


「五十嵐ィ、余計なことすんなっつただろうがッ!!」


「パワハラだー!!」


 若宮さんの準備が……終わった!!


「すみませーん、店員さん、お水溢しちゃったんですけど、拭くものありますか?」


「今お拭きしますね」


「拭くなッ!!バカッ!!」


 白石さんの忠告も空しく、五十嵐君は床に手を付き床を拭き始める。


「はーい、床に手を付いたので負けでーす」


 鷹見先生によって勝敗が告げられる。


「おい、お前」


「やめて!!消費者センターに訴えますよ!?」


「それを言うなら労基署だろうがッ!!」


 白石さん、ツッコむのね……。


 とにかく、私たちAグループは、何をしてくるか分からない怖さを味わいつつ、数の力で誤魔化して勝ったのだった。

 召喚って御三家でもないのに強すぎるわ……。


 そのまま、私たちは全勝を収めて一日目を終えたのだった。

 凛ちゃんってなによ。凛ちゃんって……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ