準備期間
「やはり、望月賢は『もののけ』を匿っていることは間違いありません」
「そうか……」
全ての『語り部』のトップに立つ言霊協会の会長、水上総一は会長室で報告を聞き頭を悩ませていた。
望月賢、それは望月魁の父であり、召喚の使い手である。
「15年前のあの事件に続き、またしても召喚か……」
「絶対に始末するべきです。『もののけ』を仲間にするリスクは会長が一番よく分かっているはずです」
「ああ、それは決定事項だ。勘などには任せられん」
「お任せください。暗殺すれば召喚と正面切って戦う必要もありません」
「油断はするな。できるだけのことはしておけ。腐っても鯛だ。警察の名は伊達じゃない」
「もちろんです。誘い込み孤立させて確実に仕留めます」
「せがれがいたな、上手く引き離せるか?」
「学校に手を回せば可能かと」
「分かった。任せよう、高崎信也」
「はっ」
「そういえば、お前は召喚に助けられたことがあったな」
「ヤツのお陰で後継者争いを生き残ることができたようなものです。しかし、それとこれでは話が別でございます」
「頼もしいことだ」
ーーー
「じゃあ、そろそろテストの詳細を伝えようか」
鷹見先生がそう言うと、プリントを配りはじめる。
「二泊三日で、三日あるわけだけど、メインになるのは最初の二日だ」
「一日目は、実戦訓練だ。この中には戦いが得意でないものもいるだろうが、どんな形であれ『語り部』は『もののけ』を相手にする以上、最低限身を守れるようにはなってもらう」
「二日目は、筆記試験。単純な知識問題もあるが、ほとんどは考えないといけない記述問題だ。」
うーん、やっぱり泊まりでこんな急いでやる理由には弱いな。
「そして最終日は、結果発表。それだけで解散だ」
「で、なにより大事なのはこの三日はグループで行動してもらうってこと。修学旅行的な感じね。そして、訓練もテストもグループでやるからね」
なるほど。
実際、『語り部』としての活動は複数人のグループに別れて行う。その予行練習も兼ねているわけか。単純な戦いの相性だけじゃない。共同生活の中で、性格の相性も見るわけか。体の相性は?
「で、そのグループについては、プリントに書いてありまーす」
プリントに目を通す。
Aグループ
望月魁
若宮さつき
比良坂凛
さっちゃんキタコレ!
ラッキーと思ったけど、これ成績で分けてるだけだな。さっちゃん真ん中だもんね。
しかし、さっちゃんが真ん中に位置しているということは……
他のグループが心配なんですけど……。
「既に気付いていると思うけど、特別クラスも一緒にやるからね」
Bグループ
白石世良
一之瀬葵
五十嵐隆史
葵ちゃん……。
でも、本当に心配なのは、五十嵐君である。
世良に殺すなって言っとかないと。
ま、そんなことは置いといて、
さっちゃんろう絡作戦、開始ッ!!




