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三上 晃③

 晃と一緒に、俺の寮の近くまで来た。


「もし、魁が望むなら……私を、好きにしてもいいよ……」


「え」


 え。

 ん?

 晃?

 凄くクル状況なんだけど……やはり俺はダメらしい。


 てか、俺の部屋がそういう状況じゃないんだよなあ……。


「付き合ってなくても、好きじゃなくても、いいよ。私たちの仲だから……」


「……」


 晃、どうして正解にたどり着くのがお前なんだ。

 というか、これを言うって決めてたのか……。だからあんなにグイグイ来てたのか。


 そうこうしている内に、俺の部屋まで来た。


「晃……ありがとう。でも、その言葉だけで大丈夫だから」


 玄関の扉を開ける。

 バタバタと足音がする。


「おにーちゃん、おかえり!!おねえさんだれ?」


 6歳くらいの女の子。


「え……?」


 困惑する晃。そうなるよなあ……。


「ねえ、しらないおねえさんがいるよ」


 もう1人、幼い女の子。


「お前ら、望月に迷惑をかけ……え? 不倫?」


 更にもう一押し、こちらも幼女。


「魁にぃ、なんで晃が居んの?」


 こちらはみんなのお姉ちゃん、世良ちゃんです。


「ええと……魁くん……?」


 晃が目線で助けを求めている。


 いやあ、俺も助けて欲しいよ……。


 これは、遡ること、昨日の夜。


ーーー


 今日は来客が多いなと、またしても鳴るインターホンに対応した。

 鷹見先生が来ていた。面倒事の予感がビンビンしていたが、仕方がないので話を聞くことに。


「見てよ、この子たち」


 幼い女の子たちが3人。

 え? 鷹見先生……まさか……。


「今回の戦いでさ、"退行"と戦ってた部隊なんだけど……皆ちっちゃくなっちゃったんだよねえ」


 ああ、良かった。

 犯罪かと……。


「おにいちゃんだれ~?」


「たかみ!!このひとだれ!!」


「なぜ望月に預ける必要が?」


 1人だけちゃんとしてる子がいる……。


「この星野深雪ちゃんは体だけ小さくなったんだよねえ」


 そういうことか。


「そもそも、"退行"の『言霊』って結構不思議でさあ」


「"退行"の『もののけ』を倒したのに、戻らないからですね……」


「そうそう。ってことは、子供に無理矢理してるわけじゃなくて、大人としての情報を壊してるってことになる」


「変化させるやつなら治るはずですからね。壊したんでしょうね。『もののけ』が壊したものは、『もののけ』を倒しても戻らない」


「うんうん。死んだ人間が生き返らないようにね。まあ、君は生き返ったようなもんだったみたいだけどねえ?」


「おい、なぜ望月かと聞いている」


「これは()だけどさ、魁にこの件は預けた方がいいっぽいんだよね」


「結局それか……」


「魁、頼むよ。未来といえど、どうしようもないことだってあるんだからさ」


 そう言って女の子の頭を優しく撫でる鷹見先生。

 その子には特にたかみ、たかみと呼ばれ、懐かれているようだ。


 こんなのを見せられたら断るに断れない……。


 だが実際、俺に預けるのは悪くない選択のように思える。


 黄昏(トワイライト)が本気を出したときの、人を消す原理は、正に"退行"の『言霊』と同じだ。

 その人間のあらゆる情報を破壊する。

 "退行"は、大人の情報を、しかも中途半端に壊すだけだが、やっていることは同じだ。


 しかし、身体だけを小さくするというのは中々に面白い。肉体と魂を別だと考えてるってことだろうけど、応用すれば色々とできそうだ。

 魂だけぶっ壊して殺すとか。


「ってなわけでみんな、魁おにいちゃんと遊ぶよ~」


「え、俺が3人世話するんすか……」


「世良ちゃんも居るでしょ」


「いや……あの……ええ……」


ーーー


 かくかくしかじかを説明し、晃にも色々と手伝ってもらっている。


「こら、ちゃんと風呂入れ!!」


「世良おねえちゃんも入ろ~?」


 世良が居なかったら無理だったんだけど……。鷹見先生、クソ上司すぎるだろ。

 2人は世良が風呂にぶちこんだ。


「魁ならみんなを大人に戻せるの?」


「う~ん。できるとしてもまあまあ苦労しそうかな」


「子供になっただけなら、最悪このままじゃダメなの?」


「絶対ダメってこともないんだけど……星野さんみたいに中途半端に大人なとこがあるとバグるかも」


「なるほど……」


「私はこれで小学校行くとか絶対ごめんだぞ」


「星野さんは大丈夫ですよ。問題はあっちの2人です」


「だな。申し訳ないが、よろしく頼む」


 深々と頭を下げる幼女。

 ものすごい罪悪感……。


「恵理も美紀も、私の大切な友人だ」


「できる限りのことはします」


ーーー


 風呂にも入ったし、そろそろ寝ようかと思ったときに、あることに気付いた。


 世良も晃も布団無えぞ。


 結局、3人で1つの布団に入っている。狭すぎる。


「世良、面倒見てくれてありがとね」


「いいよ。魁にぃの頼みだし」


「晃も、今日はありがとう」


「……」


 暗くて顔はよく見えない。でも、身体から伝わってくる感覚がある。


「今までやってきたことが全くの無駄なんかじゃないって分かったよ」


「!!……そっか」


「へえ。晃、やるじゃん」


 世良、痛い。腕折れる……。痛い痛い。


「だから、もう少し頑張ってみようと思う」


 中学時代、俺を好きだった子がいる。

 案外、気付かないだけで上手く行っていたのかもしれない。


 晃は、俺の理想の状況に辿り着いた。胸が小さかったらな……。

 でも、希望が見えてきたような気がした。


「じゃあ、魁にぃ、今日も……えっちする?」


 晃に意地悪するなよ……。


「え……魁……?」


 世良は自分を差し置いて、晃が俺に希望を持たせたことが気に食わないようだ。

 まあ、晃が相手だし、ボコったりはしないでしょ。


「晃が居てもいいよね? イくとこ見てもらお?」


「ちょ、ちょっと!? 魁、何か言ってよ!?」


 こういうときは、世良の気が済むまで言わせた方がいい。

 俺が言えば我慢はできるけど、その分、他に皺寄せがいく。だったらここで発散してもらった方がいい。


「今日は何回する? 3回? 5回? 気絶するまで?」


「きぜッ……!?」


 あーあー、もう寝よう。

 おやすみなさい。


「魁にぃ、スゴいんだよ? こっちのことお構いなしに何度も何度も……」


「え、ええ……う、嘘……え……」


 真っ赤な嘘をBGMに、俺は眠りについた。


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