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白石 世良③

「世良は胸が小さいな」


 その一言から世良と喧嘩になった。しかし俺は、世良が俺を絶対だと思わなくなったことに、喜んでいた。

 それから、気持ちの整理をしてきた世良とまた会う。


「魁にぃも男の子だもんね……」

「世良、魁にぃのダメなとこも受け入れるから」

「魁にぃはちゃんと反省してもうしないように」


 今なら……。


「魁にぃ……最低」

「そういうのは、恋人に頼みなよ」

「嫌なわけじゃないけど……」


 いけるっ!!


「一回だけだよ?」

「それで満足してね?」

「あと、他の子には絶対こんなこと頼んじゃだめだから」


 抱きついてくる世良……。世良!!

 うわああああああああああああああああ


 ハッ


 寮の自室で布団に入っている俺。そろそろ朝かな。


 ……夢か。


 まあ、世良がそんなことで怒るわけないか。俺の夢、解像度低すぎ。性欲に負けてる辺り、まだまだだな。


 しかし、こんな夢を見た原因は明らかに……これだな。布団の中で俺に抱きついて眠る世良。この匂いはまずい……。

 俺が起きたことに気付いたのか、身体を動かす世良。ゆっくり目を開けて、俺と顔を合わせる。少し眠そうで色っぽい。


「おはよ、魁にぃ」


「……世良は、胸が小さいな」


「どしたの? 魁にぃ、ムラついちゃった?」 


 やはり喧嘩にはならないようだ。セクハラしてくる奴を信用するなよ、世良。


「世良でストレス発散する?」


 します。いや、しない。駄目だ。危ない。危ない。


「魁にぃ、胸小さい方が好きでしょ?」


 え? バレてんの?

 世良、優秀すぎるんだよなあ。一番俺を理解している人間と言っても過言じゃない。

 でも、まだ俺の理想には届かないんだよなあ。俺を崇めるのをやめてくれよ……。


「うーん、ダメか~。魁にぃ、ガードかたーい」


 俺の態度から、ストレス発散をしないことを理解したらしい。世良はガード緩すぎ。


 夏期講習が思いやられるな……。世良と一緒は理性が持たないかもしれない。

 そういや、夏期講習はマンツーマンらしいけど、どんな人が先生になってるんだろうな。『語り部』については望月家が距離を置いているから、あんまり詳しくないんだよな。『語り部』なんて、偶然関わりを持った世良ぐらいしか知らない。


「夏期講習の先生ってどうなるんだろうな」


「生徒に合わせてらしいから、比良坂なら鷹見って感じでしょ」


「葵ちゃんは誰が先生か分かる?」


「一之瀬は、世良が先生指名した」


「へえ、どんな人にしたんだ?」


「桐山って人。まあまあ硬いバリア出せるから、ちょうどいいと思って」


「あと、五十嵐は"遊戯"かな」


 なんだかんだ、世良はちゃんと元チームメイトのことをきちんと把握しているらしい。

 遊戯ってことは御三家なわけだが……改めて考えると、このクラス実質御三家勢揃いしているのか。鷹見先生は狙ってたんだろうなあ。


「遊戯ってことは、阿久津さんか? もう前線は退いたって聞いてたけど」


「いや、弟子の方。阿久津のジジイはもうダメかな~」


 酷い言い様だな。あんなことがあれば仕方ないと思うけどな。精神的に来るだろ……。


「誰か他の奴分かる?」


「うーん。世良も完璧には予想できないけど、坂本って奴は南だろうなあ」


 坂道君の『言霊』は、文字を使って複雑なことができる。文字を色々と仕込んだ道具を作ったりしている。彼の『言霊』なりの理論があって、それに則って設計しないと発動しないらしい。

 それらの道具の面白いところは、彼以外でも扱える点だ。多少『言霊』の心得があれば起動して使うことができる。もちろん、道具を作るのは坂道君にしかできないが。

 彼の『言霊』の使い方は、言ってみればプログラミング言語ってところだろう。プログラミング言語って厳密に言えば言語じゃないんだけどな。

 それでも『言霊』として成立しているのは、その道具を坂道君しか作れないからだろうな。プログラミング言語を書けるのが1人しか居ないなんてあり得ない。この違いが重要なんじゃないかな。


 てか、南って言った?


「南って、司書のなぎささん?」


「いや、違うよ。なぎさの方は肉体派だし。その父親の南浩二」


 ふーん。そうなのか。一気にどうでもよくなったな。


「なぎさの方がタイマン強いけどね。世良も最初は勝てなかったな」


 最初ってのがいつか分からないけど……やっぱりなぎささん結構強いな。しかし、世良は色んな奴に喧嘩売ってきたんだろうな。そいつらに勝てるようになってどんどん強くなってきたんだろうし、これからも強くなるんだろう。

 世良は『語り部』としてそんなに強い家の出身ではないけど、努力でここまで強くなってきた。そういう意味でも、異端児である。『もののけ』が試験中に襲ってきたときも、世良はノーマークだったのだろう。学生なのに強い奴なんて、数えるくらいしか居ないはずなのに。御三家でもないのにここまで強いからな。


ーーー


 今日は寮から世良と一緒に登校している。世良が部屋にくると大体泊まっていくので、少しお馴染みではある。

 そうしていると、高崎クンが立っているのが見える。こちらに気付き、目があった。なんとなく察しはついてたけど。世良が言ってたし。これもあって、世良はわざわざ一緒に居るんだろうな。

 駆け寄ってくる高崎クン。

 それをあからさまに嫌な顔をしながら見る世良。殺しちゃダメだよ。


「望月……。本当に申し訳なかった。白石にも申し訳ないことをした」


「謝るぐらいなら最初からすんな。反省してんなら黙って消えろ」


 世良、きっつー。


「謝っただけで許されるとは思っていない。だが、せめて謝らせてほしい」


「自己満足の謝罪なんて意味ねえんだよ。お前みたいなヤツは死ぬまでそのレベルで満足してろ」


 そう言って高崎クンに近づく世良。これ相当キレてるな……。

 あ~。

 これは大変だなあ。


 ……。


 結果から言うと、高崎クンはぶちのめされた。殺されてないからセーフかな……。ちょっと校舎の壁崩れたりへこんだりしてるけど大丈夫。殺してないから……。


「魁にぃ、どうして殺さないの? 殺さないと意味ないのに」


「いやあ、別に殺すほどじゃないから」


「でも、あのときは殺したよ?」


 ああ、いじめっ子のことね。やっぱりまだ幼い世良には過激すぎたな……。


「あれは勝手に死んだんだよ……。ちょっとビビったんだからな。あれからもう殺してない」


 正直、自殺させる気はなかったんだけど……実験と思ってついやりすぎた。


「ん~? 殺してはないかもしれないけど、何人か消してるよね?」


 うお、まじか。

 世良にはバレてたのかよ。


「あ、やっぱり」


 鎌かけだったのかよ。

 やっぱり世良は優秀すぎるな……。


「アイツは消さないの?」


「消すには条件があるの。本気出さないといけないから」


「ふ~ん。魁にぃ、何したら本気になってくれるの?」


 なんか意味が違う気がするけど……。

 高崎クン可哀想だなあ。

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