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比良坂 凛①

 他の生徒を一通り見て衝撃だったのは、戦いではない『言霊』の使い方が結構多いことだ。

 あと、どうやら呼ばれる順番は成績順みたいだ。後に行くほど『言霊』の練度が下がる。


 例えば、最後の比良坂凛ちゃんは、簡単な身体強化を見せただけだった。まあ筋はいいしすぐ強くなるでしょ。


 そんなことより、問題はこの凛ちゃんが今のところの理想の相手筆頭候補であることだ。


 ここで、俺の理想の相手について復習しておこう。


 周りからは付き合ってるんでしょ?とか、また痴話喧嘩かよ~とか言われてるんだけど全然付き合ってるなんてことはないがしかし、えっちなことも頼んだらしょうがないなあとか他の子だったら大変なことになってるよ?とか言いながら好意駄々漏れで押しに弱いのにこっちの好きなところを確実に突いてくる天然Sな貧乳の女の子。(再掲)


である。


 そして凛ちゃんは……

 黒髪のポニーテールという王道でありながら、見事なまな板。自分の能力や相手の立場など気にしない物怖じしない態度には天然Sの素質を感じる。そして、人との関わりをあまり持ったことがないであろう彼女は、チョロく、押しに弱い。一度ろう絡してしまえばなんでもしてくれるに違いない。


 さて、気にするべきは3点だ。


 まずは、彼女はどれだけものを考えるタイプなのかということだ。俺の理想で大事なのは、付き合っていないという点である。つまり、告白されてはいけない。告白して関係が壊れたら……とか色々と考えて踏みとどまってもらう必要がある。


 次に、彼女をろう絡する条件だ。凛ちゃんに惚れてもらう方法は簡単で、互いのことを知っていけばいい。それだけで、信頼や好感は得られるはずだ。

 しかし気を付けなければならないのは、地雷を踏まないことである。凛ちゃんは今まで人付き合いをしてこなかった。それはきっと、機会がなかっただけではない。その機会に魅力を感じなかったのだ。興味を失わせるようなことをしてはいけない。


 そして最後に、タイミングの見極めである。俺の理想のためには、えっちなことをこちらから頼まなくてはいけない。当然、時期を間違えれば拒絶され全てが水の泡だ。行けるかを確実に見定めることが求められる。


「さて、じゃあみんなのことも分かったことだし、教室に戻りますか」


 鷹見先生の呼びかけで訓練場を後にする。


 結局、誰も話しかけてこなかったんですけど。てか、ちょっと浮いてるよね、俺。成績2番目の一之瀬葵君、先生に手も足も出てなかったもんね。もっと頑張れ。


 しかし、今はいい。大事なのは凛ちゃんだ。帰り道、凛ちゃんの近くをキープ。どんな些細な情報も逃さないぜ。身長は161cmですね。

 とかやってたら、凛ちゃんが近づいてくる。シャンプーの匂いを覚えておきます。後で調べます。


「訊きたいことがあるんだけど、ちょっといい?」


 もろちん、なんでも訊いてくれ。口座番号が知りたいのかな?


「ああ」


「さっきの戦い、なぜ先生の先読みの仕組みが分かっていたの?」


 おお...…まじか。君、最高だよ。そこまで考えられる人だとは思わなかったぞ。告白はしないでくれよ~。


「正確な読みというだけでは能力は絞れなかったはず。心を読めるとか、未来が見えるとか。それに、未来が見えるといっても、見た未来が確実に起こるのか、勘がとてもいいのか、いくつもの可能性がある」


 下ネタがバレてなさそうだから思考を読んでる線は切ったんだけどね。そのまま言うわけにはいかない。ちゃんとでっちあげないと矛盾点指摘されそうだし気合い入れなきゃ。


「どうして俺が勘がいい線に絞ってるって分かったんだ?」


 時間を稼ぐよ~

 実際、気になるしね。


「包囲しつつ様子見しているとき、先生の合理的で読みやすいという言葉を無視しているような、規則的な攻撃を仕掛けていた」


「思考を読まれている可能性を考えるなら、召喚した龍に攻撃を任せるとか、敢えてテキトーに攻めるとか、そういう手を打つはず」


「決め手になった"どこか"に対する山勘には迷いがなかった。読みの仕組みに謎があるなら、山勘するか無理矢理接近戦で決めにいくか悩むはず」


 今までコミュニケーションしてこなかったのは思考のレベルが違うからだな。しかも相手の理解力を考慮に入れてないぞ。会話ってキャッチボールだからね?

 しっかし、ちょっと見ただけでこれってマジかよ。こういう質問にちゃんと答えていればいいな。地雷は頭の悪い解答だ。惚れたかどうかのサインは非合理的な行動。仲良くなりたいとか言い出したら惚れたこと間違いなし。


「でも、それだけじゃまだ俺が勘がいいと確信してたかは分からなくない? それこそ山張ってたのかもよ?」


「本当の意味で分かったのは、さっき。こっちの質問の意図をすぐに把握した」


 こりゃ一本とられましたな。

 それこそ勘だったわけか。


「魁がなんで分かってたは、教室に戻ってからする授業で明らかになるよ」


 鷹見先生が横入りしてそう言う。

 

 え? 明らかになっちゃうんですか?

 てか、今俺が凛ちゃんと話してんだろうが!!邪魔すんな!!


 教室に戻ってから、早速授業をするようだ。自己紹介しないの?と思ったけど、多分さっきのテストが自己紹介も兼ねてるんだな。聞いてなかったよ。


「この授業では『言霊』や『語り部』の基本的なことから知っていってもらう。まず、さっきの比良坂の疑問に答えよう」


「『言霊』には、何世代にも亘って受け継がれるものがある。その中でも、強力な3つをまとめて御三家と呼んでいる」


「その3つとは、"遊戯"、"色彩"、そして"未来"だ」


「これらの能力については、『語り部』なら誰もが知っていることだ」


「つまり、魁はおれが"未来"であると看破した時点で、その能力の全貌を把握していた」


 なるほどね。上手く話は繋がってるんじゃないかな。それだけで俺は決めつけないけど。まあ、"未来"じゃね?って根拠をいくつかでっち上げればいいか。


 てか、教室の他のやつら置いてけぼりだろ。レベル高すぎるぜ凛ちゃん。


 ひとまずの目標も早々に達成したし、次なる目標を立てないとな。

 さて、放課後に補足説明とか言って凛ちゃんに話しかけに行こうかな。とりあえずこれを連打で良さげだ。

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