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若宮 さつき⑤

 なんだかんだあった試験も終わりを迎えた。結局、規模を縮小して筆記試験を少しだけやっただけだった。

 まあ、そもそも戦いがあの試験の主な目的だろうし、試験自体はそんなちゃんとやる必要ないからな。

 因みに、試験は俺たちのグループが一位だった。凛ちゃんもさっちゃんも活躍したもんね。そして、大事なことは2人が結構仲良くなってることだ。つまり、誤解を解くチャンス!!

 

 さて、これまでの理想の相手候補は3人。

 凛ちゃんは、誤解を解くのが直近の目標。仲良くなりたいとか言い出したら惚れたサインだ。

 世良は、俺を疑ってもらうのが直近の目標。その上で俺を好いてくれるのかがネックだ。

 さっちゃんは、惚れたサインが何かを探るのが直近の目標。世良が一番作戦や、ギャップ作戦で上手く立ち回っていく。


 やはり、さっちゃんが難関だ。というのも、さっちゃんは凛ちゃんと違って人付き合いが得意だし、今まで彼氏が居たこともありそうだ。簡単にはろう絡できまい。恐らく、かなりの長期戦になる。告白されないように立ち回る必要がある以上、時間をかけざるを得ない。


 そこで、このクラスにいる残り1人の女子に目を付けることにする。

 彼女は那須こより。眼鏡を掛けたハーフアップの彼女は……明らかにお胸が小さい!!

 やっぱり世の中貧乳なんだよね。


 彼女の『言霊』は、子守唄だ。その歌声を聴いた人を眠らせる。といっても、すぐ眠るわけではなく癒されて段々眠くなっていくというものだ。実際、彼女の声はとても癒される。ASMRまだ?

 そして、彼女への接触の仕方だが、既に計画を立てている。非常に単純で誰でも思い付くものではあるが。彼女は、本の虫なのだ。だから、図書館に行けば大体居る。

 しかし、気を付けるべきことが1つ。ここまで聞いた諸君は、おとなしい文学少女って陰キャでしょ? チョロいじゃん、と思っているかもしれない。だが、そうではない。むしろ、高嶺の花と言ったところか。お嬢様的な。チョロい陰キャなら最初にアタックしてたからね。凛ちゃんは割りとそれだし。


 ということで、ここまでの話を総合して考えると、次の作戦は……


 さっちゃんに協力を仰ぎつつ、こより様とお近づきになる方法を具体化していくこと。ついでに、さっちゃんは一番になれない女だと刷り込んでいく。


 ってわけでレッツらゴー!

 レッツらのらって何なんだろうね。


ーーー


「モッチー、急に呼び出しってどしたの?」


「少し相談したいことがあってな」


 ここは放課後の空き教室。


「ウチに? どゆこと?」


「理由は言えないが、那須こよりさんと仲良くなる必要がある」


 真剣な顔で言う。嘘はついていないので、退っ引きならない事情が、壮大な理由が、あるように見えているはずだ。


「へえ。言えないなら聞かないけど……。なるほどね、ウチがこよりんと一番仲良くしてるもんねえ」


 ひとまず、納得は得られたと見てよさそうか。


「てか、そのためにウチと仲良くなったとか?」


 いや、違うけど。確かに、交遊関係広い奴を押さえるのは人間関係の定石ではあるけども。そのためじゃないよ。下心です。


「いやいや、そんなことはない。と言っておけば誤魔化せるか……」


「おい笑」


 こういうのを繰り返すのが大事なんだよね。さっちゃんが俺の中でどういう立ち位置なのかを刷り込んでいきますよ~。告白しないでね。都合の良い女枠なら空いてますよっと。ま、実際そこが正妻ポジションなんですけどね。


「そういうことなら小説の話とかがいいんじゃないかな? ウチはあんま詳しくないからそういう話題は持ってないけど、結構好きらしいし」


「小説か……」


 俺もあんま詳しくないな。ま、詳しくないからこそのアプローチの仕方があるけどね。


「詩とか哲学的なやつも好きなんだってさ。ちょっと教えてもらったけど面白かったよ。ハイデガーはハンマー好きってね」


「あー。そういうのか」


 結構ガチで学んでないか? 普通に面白そうだな……。


「てか、そもそもなんだけどさ、ウチに聞かずにふつーに『言霊』の話で攻めれば良くない? おんなじクラスなんだし共通の話題なんていくらでもあんじゃんか」


 さっちゃんは完全なる陽キャですな。まあ、単純に仲良くなるだけならそれでもいいんだけどね。惚れさせないといけないから、できることはしておきたいし。あと、さっちゃん目的もある。


「それもそうかもな。ありがとう。今度お礼はちゃんとするから」


「いやいや、そんな大層なことしてないって」


 お礼と言いつつ、関わりを持つ機会を取っておく作戦。ご飯奢るとか言ってデートにでも行けば完璧な使い方だ。

 あと、ついでに凛ちゃんと仲良くしてほしいってのも頼んでおかないと。ちょっと俺のことを怖がってるみたいだから代わりに一緒に居てあげてってな感じで。


「怖がってるっていうか……遠慮してるだけじゃないの?」


 遠慮してる……?

 さっちゃんは、結構人の気持ちの機微に敏感だ。俺よりも間違いなく精度が高い。そのさっちゃんがそう言うってことは……?


「てかさ、リンリンのことどう思ってるわけ?」


 もしかして、ワンチャンある?

 でも確かに、地獄の『もののけ』相手に全く臆してなかったのに俺にビビるのかって疑問はあるな。いや、単に殺されるってことじゃなくて仲良くなったと思ってたのが自分だけって恐怖か。


「そういうのじゃなくて……恋愛的な意味でさ。リンリン、結構モッチーのこと気になってそうだけど」


 殺す云々じゃなくて、人間関係的なやつか……。もし遠慮してるだけなら、割りといけるのか?


「あー。ま、興味ないって気持ちは正直ちょっと分かるけど」


 普通の恋愛には興味ありません!!

 さっちゃんもよく覚えておくように。

 てか、さっちゃんって思ったような人じゃないのかな? 恋愛に興味ない気持ちが分かるとな。


 真剣に奢る権利の使い方を考えておくべきだな。

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