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兄と弟と二人の寝言

作者: 小宮治子
掲載日:2024/12/17


 昔々あるところに、二人の兄弟が住んでいました。

 

 兄は勇敢な一之助。

 弟は怖がり屋のニ之助。

 性格は違う二人でしたが、いつも一緒でした。


 ある冬の日。

 二人は家の(そば)を流れる川で遊んでいました。

 すると風で倒れたのか、一本の木が川の向こう岸へ渡れる橋となっていました。

 一之助は喜んでその木を渡ろうとしました。

 するとニ之助が言いました。


「兄ちゃん、駄目だよ。危ないよ」

「心配するなって。大丈夫だから」


 ですが、渡橋(わたりばし)に駆け寄ろうとする一之助の袖をニ之助は掴みました。


「兄ちゃん、お願いだよ」


 泣きそうな弟を見た一之助は、言いました。


「ごめんな。怖がらせるつもりはなかったんだ。ほら、泣くなよ。もう帰ろう」


 ニ之助は鼻を啜ると、俯きながら頷きました。

 二人は手を繋いで、家へ帰りました。

 

 その夜。

 二人は並んだ布団の中で眠っていました。

 そして、二人して寝言を言っていました。


「にいちゃん……あぶないよ……」

「だいじょぶだよ……はなせったら……」


 二人は同じ夢を見ていたのです。

 そして夢の中で、またあの木の前にいたのです。


 夢の中で一之助は木を渡り始めていました。

 ニ之助は寝言で呼び続けました。


「にいちゃん……にいちゃん……」


 すると、夢の中で一之助が足を踏み外し、川に落ちてしまったのです。


 川は(こご)える程冷たく、水の流れも速いのです。

 一之助は水の中でもがきながら、叫びました。

 

「たすっ……けてぇっ……!」


 ニ之助も兄から目を離さないよう、川岸を走りました。


「兄ちゃん! 兄ちゃん!」


 兄が危ない。でも自分は怖くて、助けられない。

 

 ですがやはり怖いのは、兄に何かあることです。

 ニ之助は息を切らして一之助の少し先に行き着きました。

 そして川の真ん中辺りまで伸びている木の枝によじ登り、兄に向けて手を伸ばしました。


「兄ちゃん!」


 声を上げることすらできなかった一之助は、弟の手を掴みました。

 そしてニ之助は、兄を川岸へ引っ張って行きました。

 岸へ上がった一之助は言いました。

 

「怖かったぁ……!」

 

 ニ之助は目を丸くしました。

 

「兄ちゃんも怖くなったりするの?」

「もちろん! でもこれが今までで一番怖かった」

 

 暫く黙っていたニ之助は、やがて言いました。

 

「そっかぁ」

 

 二人は笑い合い、また手を繋ぎました。

 

 自分も怖いと言えた兄。

 怖さを少し克服できた弟。

 布団の中でも手を繋いだ二人は、これからの夢を見ました。

 

 さぁ、冒険にでかけよう。

 二人で行こう。

 沢山の仲間と出会おう。


 楽しみ、楽しみ。



実はこのお話、2024年の童話祭の短編「みかんと猿と男の子」と同じ世界なんです!

宜しければ、そちらも是非!


https://ncode.syosetu.com/n9600io/


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― 新着の感想 ―
どうなるのかな、と思っていたら……。 無事で良かった!
2024/12/18 21:50 退会済み
管理
性格は違う兄弟だけど、仲の良さというか兄弟愛を感じました。 現実ではなく、夢の中で起こっているのが、少し不思議で良い雰囲気だと思いました。
Nice
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