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第二十一葉:夕霞プロムナード(1)

 今日は約束の金曜日。終礼が終わると同時に、鳴子がワタシの席に駆け寄ってくる。

「櫂凪ちゃん! 行こっ!!」

「そんなに急がなくていいよ。高等部はワタシ達より遅いから」

「あ、そっか。わたしったら焦っちゃった」

 焦る気持ちもわかる。なんなら、焦るのが普通だと思う。ワタシ達は今日、夕霞せきか女子学院の全生徒が憧れる雨夜あまよメアさんから、呼び出されているのだから。

「まぁ、でも。もう行って待ってようか。教室にいても仕方ないし」

「そうしよう! 涼しくなってきたし、外を歩くのきっと気持ち良いよ!」

 立ち上がってすぐ、鳴子はワタシの腕を引っ張った。いつにも増して距離が近い気がするけど、親友だからいいのかな。うん。


 玄関を外に出たら、敷地内を森の方向へ。草木はまだまだ緑色でも、外歩きが苦じゃないくらいには夏より涼しい。舗装されてない細い道を上り、目的地の池が近づいたくらいで鳴子に尋ねられた。

「そういえば、だけど。『メアお姉様とガゼボを使った』のって、なんの時だったの? 櫂凪ちゃんがここまで上がってくること、珍しいよね?」

「あー、うん。来たくて来たわけじゃなかったよ」

「どういうこと???」

 驚く鳴子に、少し昔話。ちょうど、池のほとりに白い石造り風ガゼボが見えた。あの時の水の冷たさと、メアさんの温かさが記憶に蘇ってくる。

「前に言ったことあるけど、中一のこのくらいの時期に誰かの意地悪で、学校に置いてた教科書とか隠されたんだよね。変に凝ったやり方で、点々とあるヒントを追ってったらこの場所に辿り着いて。謎解きみたいになってたのは多分、先生にチクっても『遊びでした』で済ませるためかな」

「……! メアお姉様が助けてくれたって話だよね、それ!! 遊びって言うけど、たしか教科書は水没してたんじゃ……」

 結構前に話したことなのに覚えていたらしい。鳴子が言う通り、池に着いたワタシを待っていたのは、池に沈んだり浮いたりしている教科書類だった。

「そうそう。ヒントはマトモでも、肝心の教科書は池の中。探す手間も含めた嫌がらせ。近くに密閉袋が浮いてたから、袋から出てきちゃった設定だと思うよ。実際にはあり得ない状態だろうけど」

 ガゼボの手すりに肘をついて、近場の浅瀬を眺める。教科書が沈んでいた辺り。

 同じ場所を見つめて鳴子は怒った。

「水に沈めたら、もう遊びじゃ済まされないよ! 姑息な誤魔化しまでして、許せない!!」

「まぁまぁ落ち着いて。解決した話だから」

「ううう……。えっと、メアお姉様と会ったのは、その後?」

 不服そうにしながら怒りを収める鳴子。ここまでの話で終わったら、ワタシもきっと怒っていただろう。だけど今ワタシが覚えているのは、意地悪してきた誰かへの怒りじゃなくて、助けてくれたメアさんの優しさ。

「そ。靴やら脱いで池に入ったくらいで突然、メアさんが現れたんだ~~」

 思い返すまでもなく、ワタシはメアさんに助けてもらってばかりいる。小学生の頃は考えもしなかった人助けを今のワタシが(夢の中だけど)やっているのは、もしかしたらメアさんの影響かもしれない。


──


「櫂凪ちゃん? そこで何をやっているの?」

 水に脚を踏み入れた瞬間、後からガゼボにやってきたらしいメアさんに尋ねられた。こんなところで出会う人だと思っていなかったから、最初はメアさんも意地悪に加担して、見物に来ているんだと思って。

「教科書を拾ってます。いつの間にかここにあったので。せっかく施しいただいた物ですから、乾かしてでも使いますよ」

「もしかして、そういうことかしら。……櫂凪ちゃんは、装飾隠者そうしょくいんじゃってご存知? 庭園隠者ていえんいんじゃや、雇われ隠者とも呼ばれることのある、昔の英国貴族に流行したらしいお仕事なのだけど」

 メアさんは制服のジャケットを脱ぎ、スカートの腰部分を折り曲げながら話した。

 答えは知らなかったので、予想で返答した。

「知りませんけど、庭園の装飾のため雇われた隠者だとしたら……、庭の置物みたいな役割で雇われた隠者……、じゃないな。本物の隠者が雇われるイメージがないので、雇われて庭の置物役をやる隠者っぽい人、のことでしょうか?」

「だいたい正解! お金持ちがお庭の雰囲気作りのために、住み込みで雇った隠者風の人らしいわ。冷たい水の中でしっかり予想して答えるなんて、さすがね」

「ほとんど答え言ってましたよ。メアさ、メアお姉様が。というか、何をされてるんです?」

 回答に喜びながら、メアさんは靴と靴下を脱ぎ、白く美しい脚を池へと踏み入れる。スカートを折っていたのは、濡れないよう膝上丈にするため。

「わぁ。冷たい!」

「当たり前ですよ! 止めてください!! メアお姉様を水に浸けたなんて知られたら、ワタシ、二度と学校に通えなくなります!!!」

「拾ったら干せば良いのよね?」

「いいですけど!! そうじゃなくて!!!」

 制止も聞かないで、メアさんはずんずん池を進み、沈んだ教科書等を拾った。

 ワタシも急いで拾い集め、集めた物はガゼボの手すりやらテーブルに広げて干した。

「はい、これ。どうぞ使って。濡れたままじゃ風邪を引いてしまうわ」

「悪いですよ、汚れますし」

「気にしないで。差し上げるから」

 干し終えてすぐ、肌触りの良い水色のハンカチを渡された。ワタシが遠慮しないようにか、メアさんはスクールバッグからもう一枚同じハンカチを出して、ベンチに座り手早く使った。返そうとしても取り合ってもらえず、ハンカチは結局、貰ったまま。

「あの、集めてくださり、ハンカチまで……、ありがとうございます。でも、どうしてこんなことを……?」

「なぜって、こんな皮肉をされたら反抗くらいしたくなるわ。……さて。わたくし用事があるから、ここで失礼するわね。ごきげんよう」

「あっ、はい。ごきげんよう。本当にありがとうございました」

 ゆっくり話す間もなく、メアさんはさっさと行ってしまった。


──


「~~池に入って拾ってくださるなんて、メアお姉様は優しいね。その次の日に、教科書を貰ったの?」

 明るく言う鳴子。今の説明で機嫌が直ったらしい。

「うん。昔使ってた教科書を探したんだって。隠した子がどう思ったかは知らないけど、メアさんの名前が入ってるしお古だからか、それ以来変なことはされなかったよ。『交換して!』とかはしょっちゅう言われたけど」

「そうなんだ、良かったぁ……。……あれ?」

 鳴子が考え込む。

「どうかした?」

「メアお姉様が言ってた皮肉って、なんだったの?」

「それは……、なんだったんだろ。聞いてないから知らな──」

「──わかっていたものと思っていたわ。装飾隠者の話、していたでしょう?」

「メアさん?!」「メアお姉様?!」

「ごきげんよう、二人とも」

 声がして振り向くと、ガゼボのベンチにメアさんが座っていた。足を揃えて優雅に、これからお茶会でも始めそうな感じで。いつの間に……。じゃなくて、装飾隠者の話と皮肉に何の関係が?

「してましたけど、それがなんですか?」

 メアさんは表情を変えず、澄まし顔。

「あの日わたくしね、誰かから『見せ物がある』ってお手紙を貰ってここに来たの。そしたら池の中に櫂凪ちゃんがいた。送り主の言う見せ物は、『池で教科書を拾う櫂凪ちゃん』だったのね」

「はぁ、そういうことですか。ワタシが池の景色に……、夕霞女子学院の装飾隠者になっているところを、メアお姉様に見せたかったと」

「送り主としては、皮肉のつもりじゃなかったのだと思うわ。わたくしが櫂凪ちゃんを夕霞に呼んだのを、飾り物を買ったとでも思っていたんでしょうね。それで、そんなわたくしの理解者であるとアピールしたくて、あんなことをしたの」

 発言の意味や、ここで出くわした理由がわかり腑に落ちる。それはそれとして、学力特待生のワタシの役割は学校宣伝だろうから、飾り物というのは間違いでもないのでは。

「飾り物って、遠からずじゃないです?」

「もうっ。意地悪ね、櫂凪ちゃんは」

 メアさんが頬を膨らませる。

「櫂凪ちゃんを呼んだのは、校名や教育環境の宣伝、周りの生徒の刺激が目的ではあるけれど……。そうやって離れたところから眺めて満足するためだけじゃないのよ?」

 ベンチに置いたスクールバッグから掌サイズの濃紺色洋封筒を取り出し、メアさんはワタシと鳴子に渡した。校章模様の白色封蝋で閉じられ、ただならぬ特別感を放っている。

 鳴子が目を輝かせた。

「わぁ、可愛い!!! メアお姉様、これは何ですか?」

「これはね……。すぐに教えてあげるけど、まだ秘密♪」

 ニヤリと笑い、上機嫌のメアさん。

「ええー」

 もったいぶられて嘆く鳴子。

「ところで二人とも。わたくし、ついさっき夕霞文化祭の事前手配業務が済んだの。今年も色々な催し物ができるから期待してね。夕霞プロムの飾りつけや曲も決まったのよ」

 ワタシはあまり心惹かれない話。

 だけど鳴子には違って、声に張りが戻った。

「わぁ! 楽しみです、文化祭! ……ええと、夕霞プロム?」

 そっか。転校してまだ見たことない鳴子は知らないか。ワタシ達庶民は知っても仕方がないことなので、口を挟む。

「後夜祭の時にある、自由参加のイベントだよ。『プロムナード』っていう海外の学校の卒業ダンスパーティーを模しているものでね」

「ダンス?! あー! 涼香ちゃんが言ってたのって、それのことだ!!」

 鳴子は大声で、何かに納得したらしいことを言った。

「涼香?」

「お昼休みにばったり会って、ダンスがどうのって話に……。それより、パーティってどんな感じなの??」

「飾りつけした体育館を会場に、ドレスとか着て姉妹あねいもとや友達、希望すれば先生やシスターとも踊れるんだったかな。ま、ワタシや鳴子には関係ないよ」

「? 関係ない??」

「だってワタシ達、ドレス持ってないでしょ。まともなやつ」

「あっ……」

 今までで一番くらいに、鳴子はガッカリと肩を落とした。題材となったプロムナードと違って、夕霞のはお金持ちお嬢様達のお戯れ。庶民わたしたちが用意できる程度の服装では、入場すら許されない。

 だからワタシは、入学してから一度も観覧すらしたことがない。興味ないからいいけど。

「そっかぁ、残念だなぁ……。メアお姉様。プロムのことは残念ですけど、文化祭楽しみますね!」

 しょんぼり顔をする鳴子を見ても、メアさんは笑みを浮かべたままだった。

「うふふ、鳴子ちゃん。何か忘れているんじゃないかしら」

「忘れて?」

「二人とも。さっき渡した封筒を開けてみて」

 言われるがまま封蝋を取る。中には質感の良い紙の、小さなカード(?)が入っていた。書いてある文字は──。

「「──ドレスレンタルチケット?!」」

 鳴子と声が重なる。『雨夜メアから可愛い妹達へ』と書いてあるのを見るに、このカードはどこかのお店のそれではなく、メアさんの手作り。裏面には日時と集合場所が印刷されていた。

「日時はわたくしがなんとなくで決めちゃったから、都合が悪ければ教えてね。一緒にドレスを選びましょう。夕霞プロム、二人にはぜひ来てほしいもの」

「でも、わたし達お金が……」

 誘いに困惑して鳴子が言う。だけどそれは無用な心配。

「大丈夫だよ。ワタシ達の経済状況くらい、メアお姉様はお見通しだから。……ですよね?」

 ワタシの問いかけに、メアさんはニッコリ笑って返答した。

「もちろん。レンタルもクリーニングも全部、費用はわたくし持ちよ」

「それはありがたい話ですけど、どうしてそこまでしてプロムに参加させたいんです?」

 万歳して喜ぶ鳴子を横目に質問。三年目にして突然持ちかけられた話。意図が気になる。

 メアさんは話しながら、スクールバッグから何かを探した。

「一つは、夕霞女子学院の全てを楽しんで欲しいから。もう一つは、大切な妹達の可愛い姿を見たいから。そして……」

 バッグから何かが取り出されて、ワタシの左手首に通される。

「なっ……」

「伝わるかしら? ドレスが決まったら改めて、色合わせした本物を贈るわ」

 二輪の白色造花とリボンで作られた、清楚で可憐なリストコサージュ。鳴子にはないらしく、ワタシだけに用意されたものみたい。胸の鼓動が速くなる。

 いつになく真剣な表情で、メアさんは片手を差し出した。


「わたくしと一緒に踊ってくださる? 伊欲櫂凪さん」


 本場のプロムでは、【特別なパートナー】とペアでダンスするのが主流であり理想。ペアになる男女は、男子から女子へ腕につけるプロムコサージュを、女子から男子へジャケットにつけるプロムブートニアを、生花で作って贈りあう。

 夕霞プロムでのそれはあくまでも友情の延長線上、【特別時間をかけて踊るダンスパートナー】という意味までだけれど、それでもメアさんが【選んだ相手】には違いない。全校生徒憧れのメアさんからの、プロムへのお誘い。この上ない名誉。恐ろしくなって手が伸ばせない。

「……本気、なんですか? ワタシみたいな下賤げせんの者の相手をしたら、メアさんの評判が下がりますよ」

 精一杯の言い訳は、いとも簡単にねじ伏せられた。

「あら。わたくし、人生で一度も悪評を受けたことがないの。輝くことしかできないから。だからそれは無意味な想定。それに、仮に評判が失墜しても、貴女の影響なら構わないわ」

 澄んだ青い目で真っすぐ見つめられ、当たり前に言い切られる。

 何も言い返せなくなってようやく、ワタシは差し出されている手を取った。

「……その、不束者ですが、よろしくお願い、します」

「ありがとう。……では、一輪いただくわね」

  メアさんは空いている手でワタシの腕のコサージュに触れ、外した一輪の花をジャケット左胸のポケットにさした。白のブートニアとして。

「わたくしね、今とっても嬉しいわ」

 直視を躊躇うほどの美貌に、無邪気な笑顔が咲く。

 夕霞プロムの特別なところ。女子校らしくペア二人ともがドレスを着る場合が多いけれど、女子校だからかペア二人でごっこ遊びをする場合も少なくない。ペアの申し込み時に送りあう花を、どちらもコサージュとして身に付ければ、二人ともドレスを。片方がブートニアとして身に付ければ、男役と女役に分かれた衣装を着る意思表示になるらしい(ブートニア側が男役として男装)。いつだったか、沙耶が言っていた。

 つまりワタシは夕霞プロムで、ドレスを着た女役として、男装した男役のメアお姉様と踊ることになる。

 胸の鼓動はもはや制御できなくて、痛いくらい速く脈打った。

「あのっ、メアお姉様、本当、なんですよね?」

 疑うつもりはないのに、現実だと思えなくてつい聞いてしまう。

 掌が優しく握られた。

「もちろん。こちらこそよろしくね、櫂凪ちゃん」

 そのまま握手。メアさんは満足して手を離し、ワタシの横でポカンとする鳴子を向いた。

「ごめんなさいね、鳴子ちゃん。置いてけぼりにして」

「……へ? あっ、いえ! 今のは一体……?」

「わたくしから櫂凪ちゃんへ、プロムでのダンスのお誘いよ。姉妹みんなとも踊るけど、毎年お一人は、じっくり時間をかけて踊ると決めているの。鳴子ちゃんも、ゆっくり踊る相手をどなたか決めることをお勧めするわ」

「……そう、なんですね。アドバイスありがとうございます」

 考える顔で、鳴子は返事。

 メアさんはスクールバッグを片手に去っていく雰囲気。

「じゃあ、わたくしはこれで。鳴子ちゃんの封筒には、わたくしからの【お願い】も入れているから、ぜひ目を通してね」

 そう言って背を向け歩いてから、急に振り返って思い出した様子で戻った。

「わたくしったら、うっかり。櫂凪ちゃん、ちょっと耳を貸して」

 ワタシの横に来て、耳に口を寄せて小声。

「プロムでは二人で、白百合のスカーフを身に付けましょう。くしゃくしゃの、夕顔の花にして」

 返事を言う前にメアさんは離れて、いつもの挨拶をした。

「今度こそ失礼するわね。二人とも、ごきげんよう」

 たった数分の出来事ながら衝撃的過ぎて、ワタシと鳴子はメアさんの背中が見えなくなるまで、ガゼボに立ち尽くすしかなかった。


──


「……はー。びっくりしたね、鳴子」

 心臓が落ち着きを取り戻してから、鳴子に話しかける。気づけば日も暮れ始めていた。

 鳴子の反応は鈍い。

「う、うん……。色々あって、混乱してる」

「ワタシも。ドレスを貸してくれるとか、一緒に踊るとか……。そもそも鳴子は良かったの? プロムやらダンスやら、正直言って面倒じゃない??」

 ダンスパーティなんて、庶民には縁がない行事。加えてパートナーまで必要となると、ドレスがあっても参加ハードルは高い。……というのは余計な心配だったようで、鳴子は笑顔になった。

「面倒じゃないよ! むしろ楽しみ過ぎるくらい!! ダンスパーティーってとってもロマンチックだもん!!!」

「ポジティブだね、鳴子は」

「櫂凪ちゃんは楽しみじゃないの? 皆の憧れの人と踊れるんだよ?」

「メアさんのはいつもの気まぐれだろうし、他の子から恨み買いそうで怖い」

 そう返したら、鳴子はニヤニヤと口角を上げて肘でつついてきた。

「そんなこと言って、まんざらでもないから断らなかったんだよね?」

「それは……。メアさんはスポンサーみたいなものだから断りようがないし……。はぁ、踊ったことなんかないから、恥かきそうで嫌になってきた……」

 憂鬱な気分になっていると、鳴子はワタシの手を取った。

「じゃ、じゃあさ! わたしと練習しよっ! わたしもダンスわからないから!!」

「二人ともわからないなら、練習にならなくない?」

「大丈夫! わたしツテがあるの! とにかく任せてくれていいよ!!」

 謎の自信。あと、ツテってなんだ。……まぁいっか。鳴子が言うなら。

「そんなに言うなら。いいよ、練習しよう。と言うか、本番もずっとメアさんと踊るんじゃないだろうし、一緒に踊ろうよ」

 せっかく一緒に夕霞プロムに出るんだから、鳴子とも踊りたい。変なことを言った気はしなかったけど、鳴子の声はどこか静かだった。

「……うん。そうしよう。わたし、楽しみにしてるね」


 どこかで。ざり、と、金属が擦れる音が聞こえた気がした。

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