の国のシイラ
「ここは……?」
シイラが目覚めると、そこは の国でした。この国では、シイラに役割はありません。台詞も用意されていません。窓もドアもない部屋にいて、あるのはベッドがひとつだけ。普段のシイラは次の出番が決まるまで、ここでずっと待っているのです。
これまで、シイラはこの部屋でずっと眠り続けてきました。シイラが目覚めるときは新しい国ができたときか、これまでの国に新しい何かが起きたときだけだったのです。それなのに、今日は目覚めてしまいました。よく見ると、天井が少し欠けていました。
「どういうことかしら?」
初めてのことに、シイラは混乱しました。しばらく考えて、シイラは壁を叩き始めました。
「わかったわ。私を忘れかけているのね。よく寝たと感じたもの。ほら、思い出して! 私の物語はまだ終わっていないわよ!」
どんどんと壁を叩いていると、急に眠気が襲ってきました。シイラはベッドに戻る余裕もなく、その場に倒れて眠ってしまいました。
そして、またシイラは目覚めました。壁には学校の制服が掛かり、その隣にはギターが置かれていました。新しい国のようです。
「今度はどんな国かしら。楽しみだわ」
窓の外からは、ありふれた日常を感じさせる朝日が、カーテンの隙間から差しこんでいました。