探偵の国のシイラ
シイラが目覚めると、そこは探偵の国でした。ハンガーにシャーロック・ホームズとお揃いのコートが掛けられていました。シイラはその新品のコートを着て、まだ肌寒いベーカー街からテムズ川へ向かって霧の中を歩き出しました。
街では事件が起きていました。公爵夫人の飼っているウサギが誰かに盗まれたというのです。偶然通りかかったシイラを、警部が呼び止めました。
「シイラ君、ぜひこの複雑怪奇な事件を解決に導いてほしい」
シイラはウサギがいたはずの部屋に通されました。ドアも窓も閉まっていましたし、高そうな壁時計をはじめとした家具に失われたものはありません。しかし、シイラは部屋に一歩入っただけで、犯人の特徴を掴みました。
「警部さん。犯人はタバコを吸う人です」
すぐに屋敷中の人が集められました。タバコのパイプを持っていたのは庭師だけでした。何を見てタバコを吸う者が犯人だと考えたのか、警部が尋ねるとシイラはこう答えました。
「何も見ていないわ。あの部屋だけ、警部さんのとは違うタバコの匂いがしたんですもの」
庭師は犯行を認め、売りに出されようとしていたウサギは無事に帰ってきました。