卒業
いよいよ卒業!
短い修行が終わることになった。マスターが、あまり長くいてもね!という。たしかに無給だから、ズルズルいても
開業が進まない。場所もまだ決まっていなかった。楽しかっただけに名残惜しいが、俺は3月20日に卒業することにした。ここからは、たった一人で生きていく事になる。商売人として生計を立てるその本当の意味は、まだわかっていなかった。本店がこれだけ並ぶから大丈夫だろうという、甘すぎる考えが漠然とあるだけだった。マスターに色紙を頂き無事卒業となる。ここを出ても縁が切れるわけでも何でもない。いつでも来て!とマスターは言ってくれた。マスターは、多くは語らない。ただ、美味しいらーめんをね!という!
それが一番大事で、生きていく生命線だという事に、俺はまだわかっていなかった。俺の店は、9年足らずで閉店した。そこには、ただ大勝軒という看板があれば食べていけるという。バクチみたいなものだった。マスターはいう、人の道を極めなければ、らーめん屋は極められないと、それはすべてに通ずる。
福は 無欲 無為より生ず
山岸一雄