重大発表!
【亜沙美の部屋】
いつもの様に21時から配信を始めた亜沙美。今夜も視聴者たちと和気あいあいと、発売されたばかりのゲームを購入して楽しんで配信しているのだが…
「納品先に到着するよぉ!…ん?あれ、あれれぇ。トラック止まらないよぉ!?」
✱「アミちゃんブレーキ」
✱「ぶつかるぞ」
✱「早よ止まりーな」
✱「あかんて!」
✱「おいー!」
「こ、これだったかなぁ?」
「ブォアアアアアアア!」
「どうしてぇ!?加速しちゃってるよぉ!わ、ぶつかるぅ!どいてぇぇぇぇぇ!?」
「…ガシヤアァァァん!!」
✱「あーあ…」
✱「倉庫に突っ込んでるよ」
✱「荷物ブチ撒けてんじゃん」
✱「クビになるぞ」
✱「トラック、ボロボロやんw」
✱「草」
「だーってぇ、ブレーキとアクセル間違えたんだもぉん!」
今夜の亜沙美は、懐かしいゲームのリメイク版【トラックでGO!】をプレイしているのだが…
✱「30分やってんのに下手くそ」
✱「街も倉庫もアミに破壊されるな」
✱「原型とどめてないやん」
✱「アミは免許取らん方がイイなw」
✱「マジでやべぇなw」
「だってぇ!トラックこんなに大きいんだよぉ?道路走るだけでも大変なのにさ、こんな狭いとこ入って行くなんて無理だよぉ!」
本物のトラック運転手ともなれば、一般人が見たら「えっ!その車でその道に入るの?」と度肝を抜かされるようなエリアへの配送も、たまにはあるのだが…
亜沙美が運転するトラックは、交差点を右左折する際に他者の運転する乗用車を巻き込んだり、バイクを吹き飛ばしたり街路樹を薙ぎ倒したりしながら倉庫に入った挙句、決められた場所に止まりきれずに倉庫に突っ込んだりしていたw
✱「まだチュートリアルなんやで」
✱「素質ねーなー」
✱「来るまでに5人以上轢いてる」
✱「過激派もビックリ」
✱「ウチの街には来ないでください」
「仕方ないでしょー!アミはまだ高校1年生なんだよ。免許なんて持ってなくて当たり前じゃん!ましてや、こんなに大きいトラックなんて無理だよぉ!」
✱「なんで配信に選んだ」
✱「乗用車も乗らないでください」
✱「破壊神の称号を与えるよ」
✱「アミ叫喚」
✱「上手いな」
「ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!ちょっと誰よ今、アミ叫喚なんて酷いこと言ったのは!」
✱「言い得て草」
✱「アミ語録爆誕」
✱「ナイス表現」
✱「素晴らしい」
✱「公用語に認定しよう」
などと視聴者たちと楽しく配信していた。そんなこんなで時刻は22時を迎えようとしている
「ふぃー、流石に疲れちゃったぁ。アミも頑張ったよ、うん…」
✱「街を破壊しまくっただけ」
✱「経済崩壊する」
✱「凄いのを見させられた」
✱「本編始まってねーよ」
✱「仕事は選んでね」
などなどアミの凄まじい暴走運転に驚きを隠せないアミーゴたち。ゲームのチュートリアル部分すらもクリア出来ないまま、配信終了の時間を迎えようとしていた
「まぁ、運転技術の方は置いといて…明日は重大発表が有るよぉ!だからね、絶対みんなに見に来て欲しいんだぁ♪」
✱「お、マジか!」
✱「胸が成長したとか?」
✱「それは無いやろ」
✱「高校生辞めて配信者を本業に?」
✱「アミー水の配布ですか?」
「ε٩(๑>ω<)۶зもう!アミーゴのみんな今夜は酷くない?とーっても大事な話なんだってぇ…本当に来てくれないと泣いちゃうよぉ?」
✱「鳴くのもあり」
✱「しゃーねーな、来てやんよ」
✱「何だろうな?」
✱「コラボ配信か」
「それは明日の配信の時のお楽しみ♪っていう事で。それではアミーゴのみんな。今夜も会いに来てくれてありがとうねぇ♪それじゃ、おやすみなさい。乙アミーゴ〜」
✱「乙アミーゴ」
✱「乙アミー」
✱「乙アミーゴ」
✱「お疲れ様です」
……………………………………………
「ガチャ」
「うんうん、だいぶ配信も上手くなったじゃない?ま、トラックの運転は散々だったけどね(笑)」
「もー!ロミータちゃんまでぇ…アレはゲームだもん、実際に乗ったらまた違うハズだもん!」
「ヾノ・ω・`)イヤイヤイヤ…絶対に亜沙美が運転する車には乗らないわ」
亜沙美が配信を終えたのを見計らって、ロミータが部屋に入って来た。手にはグラスが有り、スポーツ飲料を2人分持ってきていた
「ようやく明日には発表できるよぉ♪」
「コンサート・プリンセス入社おめでとう亜沙美♪」
亜沙美とロミータが東京に行き、面接を受けてから半月が過ぎていた。2-3日掛けて会社概要と契約内容をよく読んだ亜沙美は、オリビアさんに半契約を希望すると返事していた
その返事が今日届いたのだ。明日以降なら配信で話しても良い、という話になっていた
「ありがとうロミータちゃん。でも、どうして返事に10日も掛かったのかなぁ?オリビアさんは大歓迎ウェルカム♪な感じだったのにねぇ…」
「そこは【浅宮アミ】のままでデビューしたい!って所よね。個人勢の時の名前でデビューさせてもらうのって結構、異例の事なのよ。分かってるの?」
「そうなのぉ?でもさ、オロライブの【星町 流星】さんとか個人勢の時の名前だよねぇ?」
亜沙美の言うように、大手企業に入っても個人勢の時の名前のまま配信している者も居るには居る。ただし…
「はぁ…良い亜沙美。採用した企業がタレントに1番されて困ることは何か分かる?」
「えっ!?…んーと、企業内の秘密を外に話される事とか?」
「まぁ、それもそうよね。企業情報の暴露なんてしちゃったら、どんな人気タレントでも大概速攻でクビにされてもおかしくはないわね。それよりもさ、企業内で培った売れる為のノウハウを持って外部に行き活動されると困るのよね。大損害になっちゃうのよ」
「そうなんだ?そんな凄いことになっちゃうのぉ?」
配信者になる前に一応、配信者というものは…的な部分までは自ら調べていた亜沙美だが、その時はまだ自分が企業と契約して活動する事になる。など予想もしていなかったので、下調べが及んでいないのだ
「亜沙美ったら…いい、よく聞きなさい………」
実は所属事務所をクビになってしまった配信者は、決して少なくはない。企業勢配信者が絶対にしてはイケナイ項目を、この機会にシッカリ叩き込もうとするロミータ
「企業ごとに戦略も違うし、配信者をサポートする技術や体制も違えば、仲の良いスポンサーも変わってくるのよ
つまり、そういう内部情報を持ち逃げして個人勢で活動されたり、別の企業で配信者に成って活用されたりすると会社は大損してしまうの。だから、もし【契約解除】になった場合は…配信者名や容姿の引き継ぎ利用はNGとなるのが当たり前なの」
「そっかぁ…所属先が変更になる場合は、見た目も名前も変わるのが常識なんだねぇ」
「おそらく、その辺の理解か?調整に時間が掛かったんじゃないか?と思うけど…まぁ、内部の事情はロミーもあんまり詳しくないからね」
……………………………………………
「それとね、配信では緩く魅せてはいるけど上下関係は決して軽く見て良いモノではないのよ?「何でもオーケーよ♪」って言ってた先輩ライバーの逆鱗に触れて村八分にされて、マトモに活動できなくなり…自主退職した人もいない訳ではないからねっ!…でも、まぁ亜沙美の性格を理解してもらえたら、その心配も…」
「リーンゴーン♪…クルック〜♬」
本当に必要な情報なので、説明するロミータも熱が入り過ぎたのか?亜沙美の部屋の壁掛け鳩時計が24時を報せた
「明日は学校の無い土曜日だから夜更かししても良いんだけど…明日の配信は【重大発表】をしなくちゃだからね。サッとお風呂を済ませましょうか?」
「そうだねぇ…ねぇ、エッチぃ事しない?」
「亜沙美ってロミーのこと警戒し過ぎ…」
「じゃあ、今日は触らないの?」
「( ´艸`)いんや、触るに決まってるじゃないの♪」
「やっぱりだぁ…」
亜沙美が予想した通りお風呂に一緒に入ると決まって、ロミータからの激しいスキンシップタイムが始まっていた
【ロミータの部屋】
翌日の10月最後の土曜日の20:30
「やっほー♪女子校生ライバーのロミーよ。今夜も来てくれてありがとうねっ♪
Yaho ♪ I'm Romie, a female student driver.Thank you for coming again tonight」
✱「ロミーちゃ〜ん」
✱「今夜も可愛いよ」
✱「Good evening, Romie♪」
✱「重大発表って何?」
「むふふ( *´艸`)それはまだ内緒よ。今夜は21:30までの配信になるの。25分になったら発表させてもらうわね。それまで、ロミーと【ソウルバスター】で対戦しましょ♬」
【ソウルバスター】
主に武器を使って戦う3D対戦ゲームである。自由度の高いキャラクリをして対戦するのが、このゲーム最大の魅力と言える
「さて、最初の相手は誰かしらね?」
✱「お願いします」
「お!バニラじゃん。良く出来てるわね♪」
【この素晴らしい仲間に爆竹を】というアニメに出てくるキャラなのだが、敵だったにも関わらず途中から仲間のような立ち位置になり、クセのある愛されキャラクターだ
……………………………………………
【21:25】
「はぁ〜楽しかった♪対戦ゲームしてると1時間なんてあっという間よね〜♬」
✱「1時間は短いよ」
✱「入れなかった…」
✱「ロミーちゃん上手くなった」
✱「It was a good match」
ロミータは常に楽しいトークを挟んで静かな時間を作らない配信内容で、今夜も視聴者を楽しませていた。オリビアやメルルが評価していた様に、彼女の配信には静かな時間はあまり存在しないのだ。その配信スタイルが、彼女を半契約ながら35万人VTuberへと登らせたのだが…
「さって…重大発表をしちゃうわよ?」
✱「何やろ?」
✱「ドキドキ」
✱「引退とかはダメやで?」
✱「それは無いやろ」
「それはモチロン無いわ!今夜の重大発表、それは…ロミーは引っ越ししまーす!…って言うか、もう引っ越ししましたっ!」
✱「なんやて!?」
✱「国内?」
✱「全然気付かなかった」
✱「一人暮らしすんの?」
「ロミーはね〜、一人暮らしはパスね。自炊とかは出来るから生活面は問題ないけど、静かな日常は嫌なのよね。楽しい方が良いじゃない?…それでね、同じVTuberの子の家に同居させてもらったら、もっと楽しくなると思わない?」
✱「何とっ!?」
✱「マジかよ」
✱「どの子?」
✱「ロミーちゃんと仲良い子?」
✱「待てよ、最近デビューした子で…」
「ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)あはは!鋭い人が居るねっ!そう、最近って言うか…だいたい半年前にデビューした子と仲良くなってね〜。もう既に同居させてもらってるから、今からこの配信を閉じて、その子の配信にお邪魔させてもらうから、みんなもソッチに来てね。じゃあね〜、また会いましょう♪Let's meet again♪」
【21:28 亜沙美の部屋】
「…お待たせしましたぁ。それでは重大発表しちゃいます!実はアミ、同い年の子と同居生活を始めてるのぉ!」
✱「マジっすか」
✱「俺も住みたい」
✱「誰や?」
✱「女の子やんな?」
「それでは発表しますねぇ!良いよ、入って来てぇ♪」
「ガチャ」
「ハーイ!アミーゴのみんな、お久しぶりねっ!ハーフ系VTuberのロミーよ!」
「何度かコラボしてもらったロミーちゃんだよぉ♪はい、ココに座ってねぇ♪」
✱「.゜おぉ(*゜O゜ *)ぉぉ゜」
✱「ロミーちゃん来た!」
✱「ロミーちゃんだ」
✱「仲良さそう」
「…という訳で、アミと一緒に住ませてもらってるロミーです。アミーゴのみんなもロミーの事よろしくねっ♪」
「ロミーちゃんは料理も上手いし、パソコンにも詳しいし何より、配信者としても大先輩だから何度も教えてもらったり、助けてもらったりしてるんだぁ♪」
✱「俺も入居できる部屋有りますか?」
✱「凄い甘い匂いしてそう」
✱「楽園はココに有ったんや」
✱「うらやまし〜」
✱「ええやん、ええやん」
ロミータが実際に竹取家に同居させてもらってから約3週間後、ようやくロミータとの同居生活を公に発表できた亜沙美
今夜の配信は始まったばかりだ。2人の仲や生活の事などの質問をされまくるのが容易に想像できる。モチロン亜沙美とロミータも、ソレに答えていく為の打ち合わせは済んでいる
ソレに今夜の重大発表はコレ1つでは終わらないのだ。今日は土曜日。今夜はまだまだ盛り上がろうとしていた
続く




