【フリーシナリオ】オタク友達の女の子と耳かき勝負。
(玄関のチャイムが鳴る音)
(ドアを開ける音)
ちわっす。遊びに来たよ〜。
あぁ、そうだ。君宛に荷物届いてたんだけど。
何で私が受け取っているのかって?
君ん家の前に自転車停めたときに丁度配達員の人と鉢合わせしてね。家族が聞かれたときにどうしょうか迷ったけど、宛名を見たら君の荷物だったからまぁいいかなって思って受け取っちゃった。
何、その微妙そうな表情。もしかして、あたしが受け取るのまずかった? あっ、ひょっとしてエッチいやつ買った感じ〜?
なんてね。分かってるってお母さんが荷物を受け取るかも知れないのに君が通販で怪しい物買うはずがないもんね。
それに宛名確認したときに内容品の欄も見ちゃったから中に何が入ってるのかは知ってるんだ。
うん、(名前)って人のオリジナル楽曲CDでしょ。えっと知らない方がよかったかな?
そっか、ならよかった。
ところでさぁ、その……(名前)さん? って歌手かな? 聞いたことない名前たけど。
へぇ〜個人でVTuberをやっている配信者か……。そっか、そっか……。
てか、立ち話もなんだからそろそろ中に入れてくれない? じゃあ、お邪魔しま〜す。
(主人公の部屋)
あ〜ぁ、やっぱり君の部屋は落ち着くな〜。
おっ、これ「奇天烈な八重歯」の最新巻じゃん。やっぱりここにあったか、君の家に来て正解だったよ。
いや、これ凄く売れててさぁ、本屋に行っても売り切れ続出してて無かったよ。ただでさえ人気高かったのに、アニメ化してさらに人気が出たよね。
そんなにって……君、売り切れ続出してたから予約して買ったんじゃないの? えっ、違う? 予約はたまたまで最近はテレビを見てないから知らなかった。
そっか、じゃあ。今日はこれを借りていくね。
ところでさぁ、(名前)さんってどんな人なの?
どんなって、ほら色々あるでしょ? かわいい系だとか、格好いい系だとか……。
ふ〜ん、そっか。かわいい系なんだ。
そりゃ、興味あるよ。だって君、前はVTuberなんて別に好きじゃないって言ってたのにCD買うなんてその人のことよっぽど好きなんでしょ?
君が嘘を吐いていたかもしれないって?
それはないね。君を一番理解しているのはあたしだから嘘ぐらいすぐ分かるって。
それで普段はどんな配信をしているの? ゲーム実況? それとも雑談? ……ASMR? へっ、へぇ〜何だか難しそうだね。それってどんな内容なの?
えっ、笑わないよ。君とあたしの仲でしょ〜。
耳かきの動画? えっと、どういうこと? 耳かきしているところを見るの?
違う? マイクに耳かきすることで耳かきされた気分になる配信……。
分かったかって、これが理解した人間の顔に見える? あっそうだ。だったらその動画を見ればいいのよ!
そしたらその人のこともASMRについても分かるでしょ? だから、一緒に見ようよ?
いや、イヤホンしたら一緒に見れないじゃん。ん? ASMRはイヤホンをつけて見るものなの? 分かった。じゃあ、そうする。
(動画視聴後)
あぁ、これすごい。すごくゾクゾクする。すごくゾクゾクするよこれ〜。
何か君が好きになったのも分かるような気がする。
そっか、これがASMRか〜。でもさ、実際に耳かきしてもらう方が気持ちよくない?
え〜、だってそうでしょ。実際に耳かき棒で耳垢を掻き出した方が絶対に気持ちいいって。
へぇ〜、へえぇ〜。じゃあ、そこまで言うんだったら勝負しない?
耳かきをして君が気持ちいいと感じたらあたしの勝ち、逆にあたしより耳かき動画の方が気持ちいいと思ったら君の勝ちだよ。
何でそんな話になるんだって、ふう〜ん、とか言って本当は負けるのが怖いんでしょ〜。
えっ、勝負するって……チョロ〜(小声)
じゃあ、あたしの膝に頭を、耳かき棒は……ちゃんと部屋に常備してるんだ。さすがだね……。
いや、呆れてるんだけどね。
それじゃあ、早速やっていくね。
(耳かき音)
う〜ん、君の耳結構綺麗だね。やっぱり普段自分でも耳かきしたりするの?
そっかそういう音声聞くと本当に耳が痒くなるんだ。
まぁ、イヤホンしてたら耳に湿気が溜まるし、本当に耳垢を取り出してる訳じゃないからね。
その点、あたしの耳かきは本当に耳垢が取れるからリードしてるでしょ。
はぁ! (名前)の方が可愛くて、百倍リードしてる!? あたしだって可愛いでしょ!!
全然違う。そもそも声が可愛くない。あっ、あたしだってその気になれば可愛い声ぐらい出せるんだから。
やっ、やってやるわよ!
「お兄ちゃん……お兄ちゃんはどこにも行かないよね。ずっとあたしのそばにいるよね。あたしを一人にしないで」(ヤンデレ声)
あっ、ちょっと顔赤くなった! ふふん、どうだ。あたしだってやれば出来るでしょ。
今までどれくらい君とアニメトークしてきたと思ってるの? 君の好きなヒロインの特徴から、君の好きそうな台詞を当てるなんて造作もないんだから。
それでも(名前)さんの作品には敵わない? もう、意地っ張りなんだから。
君ってそういう所あるよね。一途っていうか頑固って言うか。まぁ、でも好きなことに対して真摯に向き合う君の姿は、ちょっとは格好いいかなって思うよ。
えっ、今のは口説き文句かって……ちっ、違うし。今のは本心でって……ちょっと、何言わせるの! 格好良いって言ったのは尊敬できるって意味で恋愛感情的なやつじゃないから。
はい、こっちの耳はおしまい。じゃあ、反対向いて――あっ、そうだ。じゃあ、あれやろうか。
(耳に息を吹きかける)
これ耳フーって言うんだよね。
うん、さっき見た耳かきの配信でやってたよ。
じゃあ、反対向いて。
(反対。耳かき音)
耳の中をゴソゴソ。こんな感じかな? こうやって耳元でささやきながら耳かきをするんだよね。
うん? ゴソゴソじゃなくてカリカリの方が好き? こだわりが強いなぁ。行くよ、カリカリカリ〜。
どう? 別に悪くはないでしょ。うんうん、そっか。それならよかった。
あたしの耳かきで君が気持ちよくなってくれるならあたしも嬉しいよ。
あたしさ、結構君には助けられてるなって思ってるんだよ。だから、これで少しでも恩返しが出来たらいいなって。
ほら、あたしたちの学校ってさ、アニメの話する人ってあまりいないじゃん。
それにあたしの好きなジャンルって、その男同士のさぁ……だからあたしの好きな物をバカにしないで話聞いてくれるのってすごく嬉しいんだよ。
むしろ、いつもアニメの話に付き合わせているからお互い様だって? そんなことないよ。だって、君はいつも分かりやすく説明してくれるし、話も面白いから付き合ってあげてるとかそんなつもりは全然ないんだよ。
でも、そっか。君そんなこと考えてたんだね。迷惑なんてしてないから気にしなくっていいんだよ。って、あたしが言えたことでもないか。
だけど、君が嫌な思いしてないならよかったかな。ほら、世間じゃオタクって一括りにされがちだけど好きなジャンルと嫌いなジャンルとかもはっきり分かれてたりするから。
うん、共感してくれて嬉しいよ。
それで君はコスプレってジャンルは好き?
嫌いじゃない? なら、あたしがその(名前)さんのコスプレをしても不快じゃないかな?
その……二次元の物を三次元にすると怒る人っているでしょ? 君はそういうタイプなのかなって……。
いやじゃない。むしろ、ファンアートとして投稿してもいいなら推しからいいねやリプがもらえるからむしろ嬉しい。
そっか、よかった。なら、今度のコミケでコスプレしようかな。
コミケが始まる前にファンアート投稿用に写真取らせてくれって?
う〜ん、でもどうしようかな〜? だって、あたしよりも(名前)さんの方が何倍も可愛いんでしょ? だったら、写真撮ってツイートされるのは恥ずかしいかなぁ〜。
本人と比較されて悪く言われても困るし。
えっ、(名前)さんと同じぐらいあたしが可愛い? あたしの耳かきが気持ちいい? そっかそっか。
(耳に息を吹くける)(ささやき声)
じゃあ、この耳かき勝負あたしの勝ちだね。