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天ノ龍  作者: オレパ
始まった災厄
5/8

変化

俺が「死ぬ」と告げた少しあと、

「は、早まっちゃ...ダメだよ?」

と言ってきた。

「大丈夫だよ。別に今すぐ死ぬってわけじゃないし、そう言うスキルを手に入れてからだよ。」

「それでも結局死んじゃうってことでしょ!」

さっきまでの固まった顔が真剣な顔になった。

「そんなの今まで守ってきた龍くんの方が不利、不平等だよ!」

いつもより強く、大きく、早口で言ってきた。

「それに...」

「龍!何かあったの?早く来なさい!」

雪の言葉に合わさるように母の声がした。

「大丈夫!すぐ行く!」

俺はふっと雪の方を見てすぐに背を向けて、

「すまん。勝手に決めて。けど、この呪いは俺にも、お前にも、残りの3人にも迷惑がかかる。もう...何千年も苦しんできたんだ。」

俺は 自分の胸元をグっと握って言った。

「俺は...お前との[普通]が欲しいんだ。」

そのまま俺は窓からするりと家に入った。その場に、何かを言いかけていた雪を残して。

      × ×

リビングに着き、最初に目に入ってきたのは、ソファに腰掛けていた義妹、木葉の姿だった。俺は流れるように木葉に近づき体に傷や異常がないか確認し、

「大丈夫か?」

と問いかけた。

「大丈夫だよ...まあ怖かったけど...というか助けようとくらいしてよ!知ってたんでしょ?」

と頬を膨らませて言った。俺は頭を撫でながら、

「まったく...心配かけさせやがって...。」

木葉は一瞬笑い、頭の手を退けた。

「ほら。いちゃついてないでご飯食べなさい」

「「いちゃついてないよ」」

血はつながっていないとは言え、息はぴったりだった。

    # #

翌日、いつも通りの時間に家を出て、雪を呼びに家に向かった。しかし、

「雪ならまだ寝てるわよ。」

と、雪の母親がインターホン越しに言ってきた。

「何度も声をかけたのにねぇ...。」

皿洗いをしているか、かちゃかちゃと音をたてながら言ってきた。すると俺は、何の躊躇いもなく、

「俺が起こしに行きますよ」

最後の「よ」を口にしたすぐ後、あっと思った。付き合っているとはいえ、お年頃の女子の部屋に上がるのは流石に気がひけるものだった。しかし、表情は変わらず、赤面もしなかった。

「それじゃあお願いしていいかしら。今ちょっと手が離せなくてね。鍵は空いてるから入って大丈夫よ。部屋の場所は変わってないから、お願いね。」

と、淡々と言ってきた。俺は返事をして、家の門をくぐった。

彼女の部屋の前につき、深呼吸をした後ノックをし、声をかけた。

「ゆきー家出る時間だぞー。はよ起きろー。」

ドア越しでも十分聞こえすぎるほど大きな声で言った。

30秒くらいたった。返事がない。音もしない。ただの屍のようだ。と、ヘンテコなことを考えつつ、返事をさらに待った。

さらに1分が経った。明らかに遅い。音がしないにも程がある。俺はもう一度ノックをし、

「おーい、生きてるかー。入るぞー。」

と棒読みで言った。俺は毎度のごとく考えなしに発言するなと一瞬ためらったが、考えるのをやめ、ドアノブに手をかけた。カチャッと音を立てて開いた扉の先には、実に女の子らしい白色の部屋が待っていた。と、ゆっくり思い出に浸っている暇もないので、右側に見えたベッドへ歩いた。そのベッドには、大きく膨れ上がった毛布があった。

「遅刻だぞー」

と、変わらず言った。しかし布団は動かない。なんだかカブが抜けない話があったのを思い出した。流石に待っている時間はないので、布団をポンポン叩き、揺さぶり、

「起きてるかー?」

揺さぶりながら、心配が膨れ上がっていった。これは雪ではないハリボテなのでは、と思ってしまったが、確かに存在は感じる。

「一回布団をどけるぞ。」

と、倫理がなっていない発言をし、そのまま手で布団を掴み、持ち上げた。すると、一昨日のような赤みとは違うような顔の赤さだった美少女の顔がひょこっと出てきた。少し固まった後、赤くなっている顔の上部、おでこに手を乗せた。予想通り、熱はあったが、予想以上に熱く、すぐに手を離してしまった。

(何があったんだろう...)

そう思いつつ、彼女の母の元へ駆けつけた。

その後、雪の母は、雪が休むことと、俺が遅れることを学校に連絡してくれた。俺は彼女のことが心配なのでもう少しここにいるとお願いをしたら、意外と潔く了承をしてくれた。俺は頭に濡れたタオルをかけてやり、じっと見つめていた。


一方その頃、真っ暗な空間で、球体越しに龍が雪の看病をしていることを見ている瓜二つならぬ、瓜四つな4人組がいた。

「おい「あい」。今回は何代目だ」

眉間に皺を寄せている逆立った赤い髪が特徴の男が言った。

「...今は20代目だ。また...来てしまったのか。」

「哀」と呼ばれる水色の長髪の男は涙を流しながら言った。すると、先程の男が舌打ちをした後、

「いちいち泣きながら言うんじゃねぇよ。って20代目か...」

その会話を聞いていた笑顔の二人のうち一人が、

[怒]はいっつも怒りすぎだよぉ。そんなんじゃ人生楽しめないよ。」

「っせぇ!俺はこうなんだよ!仕方がねぇじゃねぇか!」

そう怒鳴り、

「テメェみたいにへらへらしてらんねぇんだよ、「らく」今は20代目だぞ。この意味分かってんだろうな。」

先ほどよりは声を抑えて言った。そして黙っていたもう一人の笑顔の男が、

「悲しいことだけど、うれしいことでもあるよね!2000年待ったのがついに果たされる...。」

楽という男とは違うほっこりとした笑顔を浮かべてで言った。そして全員は黙り込み、龍の姿が映し出されている球を見た。すると哀が、

「喜、怒、楽、あと少しだ。あと少しで天災が訪れ、彼。いや、我らは覚醒する。それまでゆっくり彼の行動を観察しながら待とう。」

一同は黙って頷いた。

球体の奥にいる少年は、自分に変化が訪れはじめていることを、まだ知らない。

投稿ペースバラバラですみません!

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