強さ
俺は雪を背中に乗せ、相当な速さで飛んでいた。俺たちは爆発音のようなもののしたと思われる場所に到着し、その近くの家の屋根に降りた。
「中型だな」
慣れたような口調で龍は言った。それに続け、
「中型だね」
雪も同じように言った。
その中型の魔物は大きな顔の殆どが口で、その口は人間二人は簡単に入りそうなほどだった。
周りを見回すが、負傷している人などはいなかった。おそらくもう逃げたのだろう。
龍は青い髪をサラリとさわり、
「雪、今回は俺が試しにやっていいか?」
龍はそう聞くと、
「じゃあその次は私ね。」
雪は微笑みながらそう答えた。俺は大きく広がっていた羽をしまい、家の屋根から飛び降り怪物へと近づいた。
俺は大きく深呼吸をし、息を吐き切った瞬間に、相手を鋭い目で見た。それはほんの一瞬の出来事だった。怪物は少しためらった後に、少しこちらに飛びかかってきた。が、その怪物はその体の中心に穴を開けて後ろへ飛んでいっていた。怪物は家の塀に強くたたきつけられたのか、その塀は崩れてしまっていた。雪はその光景をその着物で口を覆い見ていた。怪物がゆっくりと消えていくのを確認し、飛ばした張本人の方に視線を移した。するとそこには、大きく拳を振った後の体制をとっていた彼がいた。
「龍拳」
雪は見慣れた光景を見ているようだったが、やはり久々にみるとインパクトがすごいもので、驚きを隠せなかった。龍は息を吐いた後、
「調節ミスっちまった。壁は破壊しないようと意識してたんだがな。」
と振り切りから体制を戻して言った。雪は龍のもとへ近づき、
「久々に見たけどやっぱりかなりすごいね。最近の建物の壁を壊しちゃうなんて。」
「これくらいもう何回も見てるだろ?」
雪はそういった龍へ小さく微笑みかけた。
その後、二人はうまい具合塀を直し、急いで部活へ戻った。
◉ ◉
〜部活後〜
俺と雪は毎日部活が終わったら同じ道で帰っていた。なんせ、二人の家は斜め前にあるのだから。
二人きりでいられる時間もあまり無いので、帰宅中は話が尋常じゃないほどはずむ。
しかし今日はいつものような話ではなく、記憶や力の話をしていた。これについて何回も話をしているのだが、話す内容が多すぎる。
「龍くんの魔力量ってどれくらいか分かる?」
俺は不審に思わず、すんなりと答えた。
「確か魔力量って水の量みたいな感じで図るんだよな?それなら多分100万ちょいくらいかな。」
「へぇ...」
正面を見たままそう返し、
「え?」
ようやく量の規模の大きさに気づいたそうだ。
雪はしばらく沈黙した後、大きく深呼吸をした。そしてー
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」
俺は必死に雪の口元を隠した。近所迷惑だしね。必死に手を退けようとジタバタしながらモゴモゴいうのが可愛い。俺はとりあえず雪を落ち着かせようとした。
これだけ驚くのは当然だ。魔力量の平均から大きく上回っているからだ。
この世界の術者は3種類いる。一つは基本能力者。要するにただ単に魔法を使える普通の魔法使いのようなものだ魔力量は最も少なく、平均としては1万~5万程度で、ファイヤーボールなどのごく普通の魔法の使用量は技量によって変わるが、大体は500程度である。
2つ目は特化能力者。基本魔術。簡単に上げていくと炎や水は当然のこと、闇や光。風やその上位互換の空間などの能力のみ使える。そうつまり、それ以外の能力を使うことはできない。風の特化能力者は水の魔術を使うことはできない。だが、応用をうまくすれば、その特化能力で回復魔法を使えるようになるかもしれない。そしてその特化能力者は、魔力量が通常より異常なほど多い。平均で言うならざっと基本能力者の10~20倍ほどである。
そして最後に特殊能力者。基本能力者と同様、基本魔術は使えるが、一つだけ違う。それは、基本魔術が基本魔術といわれるように、基本でない魔術が存在し、それを扱えるからである。例えるなら、洗脳魔術や死霊魔術、感覚強化術などの属性として存在しない魔術は常人の魔力では魔術に変換できないため、生まれつき異能の能力者のみ使える。そして特殊魔術師の魔力量は、常人と同じくらいの量である。
これらのことからわかるように、龍の魔力量はありえないほど大きいのである。
尚、雪の魔力量は40万程度である。
そんな龍と雪は、これから先、だれも予想できないほどの大きな戦いを繰り広げることとなる。
今回は短めで書かせていただきました。かなり投稿ペース遅れてしまいましたm(_ _)m




