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狼少年は何を望むか?  作者: chicken
第2章 狼狩騎士団入団試験
6/7

第5話 新たな仲間と日常

今回から第2章 狩狼騎士団入団試験編スタートです。

今のところは4話完結と考えておりますので、気軽にお読みください。


〜5年後〜


“チュンチュン、チュンチュン“


「んっ…もう朝か…」


 カーテン越しに差さる朝日と小鳥のさえずりを聞き、青年は目を覚ました。

青年は徐に手を動かし、額を撫でる。その額には何かに引っ掻かれたような大きな痕が残っていた。

 青年は体を起こし、ベッドから降り、窓へ近づく。カーテンを開けると眩しい光が広がってきた。満点の青空と太陽が神々しく光を放っている。とても清々しい朝だ。


「おはよう。アリサ姉ちゃん。」


 青年は枕元に置いてあった翡翠色の宝石がついたネックレスを手に取り、家族であり恩人である人の名を呟く。朝日が反射し、ネックレスは綺麗に光り輝いている。

 ウルはネックレスをベッドの上に置く。クローゼットを開け、服を無造作に取り出し、着替えようとする。


“ガチャッ“


「おーい、ウル。もうとっくに朝飯の時間だぞ。早く行こうぜ」


 すると、突然ドアが勢いよく開かれ、活発で元気のある青年が部屋に入ってきた。


「おい、バン。せめてノックしてから入ってこいよ。びっくりするだろ」


「寝坊したお前を起こしにわざわざ来てやったのに、文句言うのかよ。ウルは酷いやつだな〜」


「最低限のマナーは守れって言ってんだよ。」


「へいへい、わかりましたよー。とりあえず飯が冷めちまう前に、早く食堂行こうぜ。」


「ああ。ちょっと待ってろ。」


 ウルは取り出した服に着替え、ネックレスを首につけ、バンと共に食堂へと向かった。


〜食堂〜


“ガヤガヤガヤ“


「ほーら、お前が寝坊したからみんな飯食っちまってるじゃねえか」


「うっせ、別にそこまで寝坊してないだろ。みんな早すぎなんだよ。」


 バイキング形式で置いてある、パンや牛乳などの食品をお盆に乗せながら、2人は他愛のない話を繰り返す。


「おはよう!ルナ!」


「ルナおはよう〜」


「みんなおはよう!」


 ブロンド色の美しい髪を持った少し幼い顔立ちの少女が、たくさんの人に囲まれ、挨拶を交わしている。一際目立つその存在に2人は目を奪われる。


「やっぱルナちゃん可愛いよな〜、1回でいいからデートとか行ってみてーわ」


「おいおい、バンもあの子のこと狙ってんのかよ」


「だってめっちゃ可愛いじゃん。まさかウルも狙ってんのか?」


 彼らも思春期真っ盛りの青年たちだ。いかにも年頃の男女が話すような話題で盛り上がっている。


「まさか、そんなわけないだろ。俺は“人狼“を殺すことしか考えてねーよ」


「だよな〜。お前人狼厨だもんな。」


「やめろよ、その言い方。俺が人狼大好き野郎みたいじゃねーか」


「ちげーの?」


「ちげーよ」


 自分がそんな扱いをされていたのかと、ウルは少し不機嫌になり、笑いながら茶化してくる友人の言葉を否定する。

 お盆にすべての食品を乗せると、2人はいつもの席に歩いていく。


「あんたら遅い!何分待ったと思ってんの?」


「ウルが寝坊したせいでーす。俺は悪くありませーん。」


「だからたいして寝坊してねーだろって。イヴが早く来すぎなんだよ。」


 いつもの席にイヴが座って待っていた。イヴの前に置かれているお盆の上には、何も乗せらていない皿が並んでいる。


「あんたらが遅すぎて先に全部食べちゃったじゃない。」


「俺らが来るまで待ってれば良かっただろ〜」


「そんなに待ってたらご飯が冷めちゃうでしょ。」


「とにかく早く食おうぜ、バン。早く訓練行きたい。」


「ほんと訓練好きだよなお前。」


「まさに戦闘狂ね」


「どんどん俺にひどいあだ名が増えてるんですけど」


 ウルの困った表情と言葉を聞いて、バンとイヴは楽しそうに笑う。

これが最近のいつもの日常だ。3人でいつもの席に座ってご飯を食べて、訓練に向かう。

この日常をウルは気に入っていた。


「てか、訓練といえば、バン。あんたこの前のランニング、1周か2周ぐらいちょろまかして、サボってたわよね?


「げっ…なんで知ってんだよ。絶対バレてないと思ってたのに。」


「何年の付き合いだと思ってんのよ。少しはウルを見習って訓練しなさいよ。」


“コツっ“


「いてっ。ウルばっかひいきしやがって〜。少しは俺にも優しくしろよ。」


「お前に優しくしようとは思わない。」


「同感ね」


「ひでー。まじひでー。」


 ウルは責められているバンを見て、クスクスと笑う。


「(こいつらが居なかったら、俺は今頃どうなってたんだろうな)」


 バンとイヴはウルの幼馴染みだ。メリル村での事件のあと、さまざまな色の頭巾を被った集団にウルは保護された。その後、家族を失ったウルは孤児院に預けられた。そこで出会ったのがバンとイヴというわけだ。


(えっと、俺の名前はウル・ヴォールグ。その…よろしく。)


(おー!お前が新入りか!てかウルって名前かっけーな!)


(バン、うるさい。ウルが怖がっちゃってるでしょ。ごめんね、こいつバカなの。)


(おい、バカは余計だろ。俺そんなバカじゃねーよ。)


(私の名前はイヴ・クローネ。イヴって呼んで。)


(おい、無視すんなよ。あ、俺の名前はバン・オムニスだ!バンって呼んでくれよな!)


(これからよろしくね、ウル。)


(…うん。よろしく、バン、イヴ。)


お調子者のバンとしっかり者のイヴ。そんな2人と共にウルは今まで歩んできた。


「(それにしても、全然あの人に会えないな。会ったら色々と聞きたいことがあるのに)」


 メリル村人狼襲撃事件後、ウルはその時、気絶していて、当時のことはあまり覚えてはいなかった。しかし、松明のような光が照らされ、一瞬だけ目を覚ました時、アリサとの家に置いてあった赤色の花のような、鮮やかな赤に染められた頭巾を被った人物だけは、ぼんやりと見えていた。

 赤ずきんに隠れ、顔はよく見えなかったが、ウルはあの人狼の群れを壊滅させたのは、赤ずきんの人物であろうと、なんとなく推測していた。


「そういえば、もうそろそろよね。狩狼騎士団の入団試験の参加者発表。」


「確か、2ヶ月後だっけか?」


「それまでに、訓練である程度実績は残しとかないとな。」


「まあ、ウルは大丈夫でしょ。いつも真面目に訓練受けてるし。どっかのおバカさんは無理かもしれないけど。」


「何言ってんだよ、イヴ。確かに俺はたまにサボったりするが戦闘訓練では、ウルに負けねーぐらい活躍してんだぜ?」


「座学は?」


「うっ…そんなん知らん。」


「入団試験を受ける資格をもらったとしても、試験には座学もあるんだぞ?なんとかしないとヤバイぞお前。」


「そん時はお前らに教えてもらう。」


「いやよ」


「やだ」


「おい」


“ゴーン、ゴーン“


 8時を知らせる鐘の音が鳴る。気がつくと、食堂には数人しか残っておらず、ぞろぞろとみんな食堂を後にしていた。


「やばっ、もう8時じゃん。9時から訓練だからそろそろ準備しないと。」


「それもそうだな。さっさと出るか。」


「おい、2人ともさっきの冗談だよな?俺マジで座学わかんないから、どうにかしないとヤバイんですけど。」


「さてと、バカは置いて早く行きましょ。」


「ああ。」


「待てよ!2人とも!頼むから俺に座学を教えてくれー!」


 バンの嘆きが食堂に響く。

食堂にはもう人はおらず、閑散としていた。愉快な幼馴染み3人組は、訓練へと向かった。

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