レオナルド・スブリーニエ②
噂から無意識に目を逸らしていたのだと思う。私は結局、義妹を失うことにただ臆して、何もしなかったのだ。
妙だと、思うことはあった。
いつまでもシャーロッテの婚約を決めないどころか、茶会どころか夜会へも全く参加させないなど、まともな親のすることではない。
娘の結婚の機会を親がわざわざ潰すようなものだ。
私も幾度か痺れを切らして、婚約者がまだ決まっていない友人を本宅へ招いたこともあった。シャーロッテは決まって困ったように微笑んでいた。
そうして静かに婚約者は必要ないと、そう言うのだ。
気乗りしないのかと問えばまた困ったように首を横に振る、その繰り返しだった。
美しい黒髪。
輝く濃緑の瞳。
白い肌にふっくらとした赤い唇。
シャーロッテの優れた容姿は何人もの友人の心を捉えた。
彼女の美貌は同世代の少女達から明らかに抜きんでていたのだ。
そもそも父が乗り気でなかったこともあるが、シャーロッテが拒めば話は進められなかった。
おかしいと思わなければいけなかったのだ。
適齢期のシャーロッテに婚約者がいないこと。
父も彼女も婚約者を作ろうとしないこと。
冷静に考えれば、わかるはずだった。
父と折り合いが悪いからと、一人で別邸で暮らすべきではなかった。
父とは合わないけれど、まさか少女を育てて自分の愛人にするなどという非人道的な行為を行う人間だとは思わなかった。
私が気付かない間に、悪魔のような計画が進められていたことに戦慄した。
私は、一人で逃げてしまった。
シャーロッテを残して、たった一人で。
家族だ何だと言いながら、私は彼女の苦しみに気付けなかった。
何度も何度もシャーロッテの言葉が頭をよぎる。
「お義兄様にはわからないでしょうね。」
「次はいつ戻ってきてくださるの。」
彼女はきっと、何も気付かない私に絶望して出ていったのだ。今思えば、彼女は何か言いたげな顔をしてることがあった。
あの雨の日のことも父へ問いただせば良かった。父と最後に会ったのはいつかも思い出せない。葬儀の時、久しぶりに父の顔を見て、こんなに歳をとっていただろうかとそう思うほどには私は父との交流がなかった。
ずっと避けていた。
私も母もそうだった。
そのしわ寄せが、シャーロッテだったなら。
彼女を失ったことも、自業自得だ。




