第十六話:転生先で貴族令嬢として侍女の里帰りを一緒に楽しむ・後篇
そうやって始まった大狩、私は遠目で見るだけだったが、凄い連携だった。こういう表現は失礼だけど、一流のスペクタクルショーのようだった。
相手は第5等級魔物、軍隊で言えば一個中隊クラス、大きさは20メートル級のまさに魔物、そんな相手に行き当たりばったりじゃない、入念に立てた襲撃計画を実行し、不測の事態があれば、後衛の女性陣が対応する。
遠くから見ている私たちの位置もちゃんと把握して、安全に見物が出来た。
あ、ちなみに女性陣とちゃんと交流もしていますよ、男性陣の筋トレについては「スルー推奨」とのことです、流石。
ラニが輝いていた、双剣を駆使して兄たちと連携して、その小柄な体躯とスピードを生かして魔物の視覚を奪い、止めを兄がさし、無事に終了、けが人は沢山出たけど、全員生還を果たし、充実感に満ちた顔だった。
そして当然、この日の夜は……。
「ってなわけで! 大狩無事終了!! 祭りだーーーー!!!」
という、長兄テラの宣言の下。
「「「「「よっしゃああーーー!!!」」」」」
という民族の歓声が応える形で、祭りがスタートした。
メインは5等級魔物は公国に卸す用だから、解体した後氷魔法で保存措置をした後、次に狩りをした6等級魔物が一頭丸ごと使って料理に使っている。
収穫祭はノアロス族の最大の楽しみ、全員が思い思いのメンバーとどんちゃん騒ぎをしている。
「リズエルさん、第一印象で決めてました! 付き合ってください!」
「ええーー! あ、あの、私彼氏がいるので」
「ガーーン!!」
と相変わらずリズエルはモテているし。
「わぁ~、凄い筋肉です~、素敵です~(ボディタッチ・上目遣い・アヒル口のオラオラトリプルコンボ)」
「えへへぇ、筋肉はそう簡単にはつかなくてね~」
「(#^ω^)ピキピキ」←周りの女子達
と相変わらずトオシアはサークルクラッシャーしている。
全員が騒ぐ中、ラニは兄たちと、いや、仲間たちと一緒に騒いでいた。
「お嬢様!」
ラニは遠目で見ていた私を見つけて、手を振ってくれる。
感傷に浸るなんてガラじゃないか。
私もラニたちと合流し、夜遅くまで騒いだ。
何かいいよね、こういうの。
●
「はぁ~」
祭りの後は、宿泊場所である、ラニの実家の一室でくつろいでいた。
騒いだ後の温泉は格別だった、熱い温泉が好きな私としてはそれこそ疲れが身体から流れ出るようだった。
花鳥風月の眺めの温泉、甘露甘露。
あ、そうそう、ちなみに私たちが入っていたことで風呂覗きをしようとした男共は当然のように同族の女に発見され、簀巻きにされた上近くの木に逆さずりにされていた。
んで「魔物に襲われたら死ぬよう」とか泣いていたけど「ご自慢の筋肉使えばいいじゃない」と返したそうで、自力で脱出したら許してやるという、流石狩猟民族の女性陣、伊達じゃない。。
「意外だったのは、風呂覗きにラテさん達は参加しなかったんですね」
「キョウコ嬢、さも当然のように言われるのは普通に傷つくんですけど、ラニの客人ですから、流石にそれは控えます」
「ふふっ、そうね、ごめんなさい」
「さて、祭りの後ですけど、皆さん、もう少しだけ食べて欲しいものがあるんです」
「え?」
ラテが、用意したのは1人頭3切れ程の肉だった。
「これはですね、今日我々が仕留めた、山の主の正真正銘の最高級部位です。実はルカンティナ公国には最高級肉を卸しているというのですが方便なんですよ」
「何故ならこの部位だけ保存がきかず、焼いても焦げてしまい、凍らせても崩れてしまう、保存も利かずすぐに腐ってしまう。故に生食のみ、本来この部位は、大狩の中で一番の主役が食べることを許されます。前回は結婚した新郎新婦とその家族が食べました」
「そ、そんな大事なものを!」
「ちゃんと部族全て同意の上です。キョウコ嬢、リズエルさん、トオシアさん、そしてラニも食べなさい」
「え?」
「お前は今や公爵令嬢の侍女、そして今の仲間はキョウコ嬢たちなんだろう?」
「う、うん! そう、今の仲間は、キョウコお嬢様と、リズエルと、トオシア……」
と私達を見ながら不安げに揺れるラニの瞳に。
全員が一斉に抱き着く。
「そう! ラニは大事な仲間! チームキョウコのボディーガードよ! そうね、軍が返せと言われたら、私はこう返すの」
――「あらあら、返せとはこの公爵令嬢に言っているのかしら? 私に逆らってどうなるか分かっているのかしら? おーっほっほ!」
「とこんな感じでね」
そして私は「ちょっと失礼しますわ」と別にお皿を用意すると。
肉を更に全員分に取り分ける。
もちろんテラ三兄弟と両親の分だ。
2人ともびっくりして肉を見ている。
「言っていましたよね、前回食べたのは新郎新婦と、その家族だと」
「……そう言われては食べないわけにはいきませんね、分かりました、いただきます、その前に」
「親父に持っていく」
「ってテラ兄さん! 工房にこもっている親父に話しかけると半殺しにされるぜ!」
「いいさ、しょうがないだろ、こんな漢気を見せられたんじゃあな、皆さん、最後の簡単な宴、付き合ってくださいよ」
とそんな軽口を叩きながら、姿を消して。
顔面を片側だけ腫らして戻ってきた。
「クソ親父、まあ肉は食ってくれましたよ」
とのこと。
そして全員で命に感謝をして、大事に食べる、うん、美味しい、味は飛び抜けていた。味覚だけじゃない、心にも染み味だった。
そんなちょっとだけしんみりとした後のこと。
「キョウコ嬢」
「何ですか?」
「貴族令嬢って、初めて会ったんですけど、正直、箱入りなのかなって思ってました、すみません、なあ兄弟達よ」
(。´・ω・)ん?
「ええ、ラニを雇ったって聞いた時、正直、貴族の器が大きいですよっというアピールなのかなって、そんな感じに思ってました、すみませんでした」
(。´・ω・)んん?
「実際に会ってみれば、それこそ庶民の目線と全然変わらなくて、びっくりしましたよ」
( ,,`・ω・´)ンンン?
ここでテラがすっと立ち上がる
「ハァ!!(サイドチェストのポーズ)」
「変わった方ですね、キョウコ嬢」
( ゜д゜) ←キョウコ
その右隣に兄が立ち上がる。
「ハァ!!(サイドトライセップスのポーズ)」
「規格外の女って、訳ですね」
( ゜д゜) ←キョウコ
その左隣に兄が立ち上がる。
「ハァ!!(ラットスプレッド・フロントのポーズ)」
「面白い女、ですね」
工工工エエェェ(゜Д゜)ェェエエ工工工 ←キョウコ
違うんやで、違うんやで、変やで、そのセリフ、乙女ゲーの三種の神器のパワーワードは壁ドンされたり袖クルされたりあすなろ抱きされたりするはずやで、ボディビルのポーズされながら言われないんやで。
「さて、そんなキョウコ嬢には、今回の宴の本当の締めとして、とっておきの料理があるんですよ!!」
「え!? えっと、えっと、プロテインはちょっと」
「何を言っているんですか、プロテインは筋トレの後に食べるものですよ、まあ、食事として使ってもいいのですけどね、はっはっは!」
「(そういうことをではない)まあ、それでは、いただきますわ」
「さて、この料理の秘訣なんですけど……」
ゴホンと咳ばらいをすると立ち上がり言い放った。
「数えきれない食材・薬物を精密なバランスで配合し! 特殊な味付けを施して煮込む事七日七晩!! 血液や尿からは決して検出されず、なおかつすべての薬物の効果も数倍! 血管から注入る事でさらに数倍っ!!」
「これが! 長年にわたる研究の結果たどりついた! 俺の究極の料理!!」
「ドーピングコンソメスープです」
ゴシガァンと皿を置きクワッと私たちを見る。
「い、いやぁ、あんなマッチョになんてなりたくない」
とシクシクと泣くリズエル、うん、そうだね、リズエル達、原作読んでたよね。
「「「…………」」」
しかしどうすんだよこれ、飲むのか、変だな、なんで急にこのテンションなんだろうか、さっきまですごくいい雰囲気ではなかったのか。
いや、別に筋肉トレ自体を否定する気は毛頭ない、さっきも述べた通り痩せマッチョはごっつあんなのは認める次第だ。
だがそれは筋肉をつけたいと同義ではないのだが、筋肉至上主義に、筋肉否定しても頑なに理解しようとしないんだよな。
「おいおいテラ兄さん、いきなりネタ振ったって突っ込めるわけないだろ、身内ノリは駄目だぜ」
「そうだったな、ラニの仲間たちがこんなにもいい人たちで嬉しくて嬉しくて、すみませんキョウコ嬢、これって我が民族の鉄板ジョークなんですよ!」
「へ?」
「つまり、こんな感じで返すんです、ごほん!」
すっと立ち上がる。
「お前の筋肉ドーピングの結果かっつーーの!!(ビシッ)」
「…………」
「…………」
「…………」
シーン。
「はは、は、はは……」(無表情)
「まあもちろん、他の我々の筋肉は純正の筋肉です、ささ、冷めないうちに召し上がれ」
「…………」←手が伸ばせず呆然と見つめるリズエル
「リズエルさん」
「ひゃい!!」
「どうしたんですか? ひょっとしてコンソメはお嫌いですか?」
「い、いえ! コンソメは好きです! た、ただ飲んで、こう、飲むといきなりマッチョになるんじゃないかって思って!?」
「?? 飲んでいきなりマッチョになるわけないじゃないですか、何を言っているんですか、筋肉に近道はないんですよ?」
(゜o゜) ←3人
Σ(゜Д゜)!!! ←3人
「あ! そうですよね! あ、あれ? そうですよ、そのとおりですよ、どうして私、マッチョになるって本気で心配したんでしょうか???」
「はっはっは、これが貴族ジョークってやつですかな?」
確かに、リズエルの言うとおり、この物語はフィクションですって散々書いてあるんじゃん、何でこれ飲むとマッチョになるとか信じたんだろう。
まあよかったよかった、いや、いいのだろうか、となると、結局私が先陣切って飲まないといけないのだが……。
そして一口飲む、うん、これ、本当に……。
(すげーーうまい)
うん、コンソメスープって、あまりおいしくない奴だと「えぐみ」だとかがあったりとか、塩味でごまかしたりとかしている美味しくないのもあるんだけど、これは本当に美味しかった。
私が飲んでのを皮切りに2人も飲む。
「美味しい、本当に美味しい、料亭でも通用するかと思います」 ←トオシア
「…………」 ←体の変化を確かめるリズエル
さり気なく視線を母とラニに移すが……。
(本当にすみません、悪気だけは本当にないので)
と頭を抱えていた。
何かこう、本当に濃い人たちだなぁと思ったのだった。
――その日の夜
「うーんうーん、ミカサは可愛いとは思うの、だけどそれは筋肉が可愛いという意味じゃないの、彼女の一途さが可愛いと言っているの、だから筋肉じゃないの、一途さなの、だから一途じゃなくてさ! 筋肉だーつってんだろ! って間違えたわ! だから話きけや!!」←寝言
●
そして最終日、出立の準備を整えて最後の挨拶をする。
「お世話になりました、とても貴重な滞在でしたわ」
という私の挨拶に答えるのはテラさんだ。
「ありがとうございます、それでですね、キョウコ嬢」
すすっと私に近づく。
「ラニは、不器用な子なんです、世渡り下手で、人付き合いも苦手なんですけど、ウチの民族からでは珍しく頭が凄くいい子が出たんです」
そんな彼女は狩猟民族としてではなく、彼女は軍の士官としての道を選んだ。
「狩猟民族としての特性が生かせると思ったのかもしれませんが、しかも軍の本業は戦い、そして戦いって男にとっては神聖なんです。だからそこに女が入るってのは、その神聖を汚されたと思うのです、私もやっぱり、ラニが前衛に参加したいと言った時に、女だからという理由で入れませんでした」
「こんな考え方、女性差別と軽蔑しますか?」
「いいえ、まあ殿方の誇りを理解していると言いたいところですが、実際はそういうところは凄く面倒だなと思いますけどね」
という私の返しに苦笑いを浮かべるテラは続ける。
「ですが、ラニは所謂気配を察知するというか、抜群の視力と聴力と察知能力があるんです。これは民族で一位、二位を争うほど、しかも身軽、能力を考えてみれば、前衛ではなく後衛向きの能力であるという理由もあります」
「ですけど、ラニは納得しなかった、だからこそ反対を押し切って軍に入ったのでしょうが、そもそも軍に求められるのは、武力というよりも人間関係が全てというような職場、どう考えても向いていないと思って、家族全員が心配していました」
「実際に士官学校では思うように馴染めなかったみたいで、でも辞めるのはプライドが許さなかったのでしょう。結局後衛というか、半分事務職みたいな立場で配置されたみたいですが、その中で、キョウコお嬢様に侍女として採用されたことは驚きました」
「その後、ラニがキョウコお嬢様を始めとした方々を連れてくると聞いた時、私は嬉しく思ったのです。「ああ、いい人に囲まれて仕事をしているのだな」と」
ここで言葉を切るテラ。
「とんでもありません、私こそラニに助けられてばかりですわ」
「その言葉を嬉しく思います、それにしても、実際お会いしてみて、キョウコ嬢は、ラニとあまり変わらない年だと伺っていましたが、もっと、こう経験を積まれているというか、年を重ねているというか」
「あらあら、テラさん、それは「女性に対して失礼な言い方」ですわ」
「おっと、これは失敬、これだからラニに怒られるんですよ」
「ふふっ、では皆さん、名残は尽きませんが……」
とその時だった。
「おい、テラ、勝手に帰すな、こっちの用件はまだ終わっていない」
と三つの木箱を抱えてコウさんがやってきた。
「ああ! 親父! それ!! やっぱり!!」
「そうだよ!!」
「ずるいぞ!!」
「うるせえ! 直感が来ないってことはお前らはまだ未熟ってことだ! 一人前と認めたら作ってやる!!」
「なーにが未熟だよ、ラニには甘い癖に」
「だから黙ってろ!!」
と三兄弟をいなして、私と対峙する親父。
「武器とは」
「え?」
「武器とは使い方を誤れば己を傷つけるもの。一級品であればあるほど、その傷は深くなり、取り返しのつかない傷を体だけではなく、心まで傷を負うことになる。故に族長である私が武器を贈るは、一人前の証としてか、そして大事な人への証です」
親父は、トオシアに語りかける。
「能力に驕らず、謙虚に見つめひたむきに努力を重ね、結果を出し、貴族に認められたトオシアさんには、切る、突く、引っかけるといった、様々な能力を持ち、様々な攻撃手段を持つハルバード」
次にリズエルに話しかける。
「人と人とつなぐ橋は、生まれ持った才能にのみなしえるもの、それは武器でありながら、盾になる武器、フランベルジュ」
最後に私に語りかける。
「そしてキョウコ嬢、こちらを」
すっと木箱を開け、その武器を見せる。
一瞬、その武器の形状を見て、何なのか「理解できたけど分からなかった」のだ。
そのコウさんが私に作ってくれた武器は、女で武器に興味なんて無くても知っている武器だったからだ。
その柄と鍔と見惚れる程の美しい銀色の刃。
「日本刀!?」
間違いない、日本刀だ、でも、これが、どうして、この形は「この世界では」ありえない武器の筈なのに。
「キョウコ嬢と会った時、直感は来たのですが、何故か手が動きませんでした。その時にラニよりニホン文明に傾倒していると聞いて、娘から日本文明の話を聞いた時にその直感が繋がり、閃いて作ったのがこの武器です」
「これが、私の武器……」
「様々な状況において矜持を貫くことができる誇り、それはただ斬るという目的に特化し、一切の装飾を排したにも関わらず、芸術品にまで昇華させた日本刀です」
日本、かつて私が住んでいた国、生きていた国、未練はないけど、家族はもういないけど、それでも友人もいたし、楽しい思い出もたくさんある。
「ありがとうございます、とても、とても嬉しいですわ、宝物にします」
「ありがとうございます、これら3振りに私の銘を入れて、贈らせてもらいます」
と恭しく差し出し、ずっと無言で私を見ている。
そんなコウさんにウルさんが、とりなす。
「女性に贈るものとしては色気皆無ですが、夫の最大限の誠意なんです、ラニをよろしくお願いします」
続いてストラドス三兄弟も頷く。
「ラニは末っ子で甘えん坊」
「俺たちに比べればまだまだ未熟で」
「胸もないし、色気もない」
「ですけど、頭の悪い馬鹿な俺達から、初めての出世頭なんです、何よりキョウコお嬢様達を慕っているんです、俺達からもよろしくお願いします」
そんな家族の一言に私は……。
「はい! 貴方方の大事な娘であり妹さんを責任もってお預かりします!!」
と力強く返事をする。
その横でラニは恥ずかしそうにしている。まあそうだよね、家族にこんな感じで言われるのは恥ずかしいよね。
「じゃあ、また会いましょう!!」
と手を振りながら、ノアロス族の集落を後にしたのであった。。
――そして後日・ユト公爵家・キョウコ私室
「どうして休日はあっという間に過ぎてしまうのか」
「それでも今回は充実した休みでした」
「本当気持ちのいい人だったです」
「色々とご迷惑をかけたような気もしますが、楽しんでいただけたようで何よりです」
とラニに対して笑顔の私達、大満足だった。
コウさんから贈られた武器は、話し合った結果、自室の一部を改装して飾ることに決めた。一応女子の部屋に4振りの武器があるというのはどうかと思ったが、壮観の一言だ。
「はーそれにしても凄いです、武器のことは全然わかりませんけど、魂が籠っているのが分かります」
としげしげと眺めるリズエル。
「様々な能力を持つ7名匠の銘が入った逸品か、この武器に負けないようにしないと」
とはトオシア。
「色気は皆無と言っていたけど、だけど意外と贈り物としてはアリよね、武器って、そういえばラニはどうして双剣なの?」
「……文武両道、だからだそうです」
と、まあ本当はいろいろ言われたんだろうけど照れくさいのだろうなラニにクスクス笑う。
「さあ! 武器から気合を貰ったし、休み明けの社交よ! トオシア!」
「はい、招待客は挨拶の順序も含めて全て頭の中に入っています」
「グッド! リズエル!」
「はい、応対はお任せください!」
「ラニ!」
「はい、何かあれば、皆様をお守りします」
「それと後一つ、今日から社交にも軍刀ではなく双剣を身に付けてね」
「え?」
「私の侍女でいる限り、貴方の武器は双剣よ」
「……お嬢様」
「軍が何か言って来たら、私の名前で突っぱねてね! まあ世界の七名匠の銘が入った武器だもの、社交の格は相応しい過ぎる程よ、私も自慢できるわ! 私のボディーガードは世界の七名匠の銘が入った武器を持っているってね!」
「……はい、ありがとうございます、お嬢様」
「さあ! 英気を養ったチームキョウコ! いざ行かん! 戦いに向かうわよ!!」
と社交に向かうのであった。
――ラト公爵家主催の社交にて
トオシアが繋ぎ、リズエルが気遣い、ラニに守られて、社交に参加するキョウコ。
その姿を遠巻きに見る参加者の1人。
その姿を遠巻きに、感嘆のため息をつきながら見守る淑女達。
その「彼」は、双方の黒い瞳でじっと彼女を見つめる。
もう間もなく、彼に挨拶の番が訪れる。
佇まいを但し、キョウコの挨拶に備えるのであった。
完結してありますが続きます。




