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第十二話:転生先で貴族令嬢として美男子達の日常を垣間見てみる

 すみません、女性向けって別にネタじゃないんです、他意はないんです、気が付くとこうなるんです(´;ω;`)ブワッ。



第一話:美男子達の日常を垣間見る



 ルカンティナ公国の上流は優雅でなければならない。


 その優雅さとは、本人の振る舞いが大事であることは言うまでもない。


 だがその優雅さを体現するのは本人だけではない、いや、なしえない。


 貴族としての品格を保つためには家族を直接支えるリズエル達と言った表舞台に立つこともある上級使用人の存在も必須であるし、縁の下の力持ちである下級使用人達の存在が欠かせないし、たくさんの使用人を雇えるというのも大事なのだ。


――ユト公爵家、中庭


「貴方は、本日より由緒正しきユト公爵家の使用人となりました」


 と先輩女性使用人は新人に呼びかけ「はい!」と元気よく返事をする新人。


 彼女の役職はハウスメイド、下級使用人の1人、部屋を掃除し家具の調度品を調整するのが仕事だ。


「いいですね、ユト公爵家で働いていた、ということはそれだけでステータスとなるもの、貴方の将来に必ずこの経歴は役に立ちます、その自覚を持ち職務に励みなさい」


「はい!」


 と気合を入れる。


 使用人たちの道はそれぞれあり、使用人の使い方もその家のやり方が全然違うから一概には言えないが、4大貴族の一つに採用されるというだけで今後のステップアップになることは間違いないのだ。


 さて、そのステップアップを果たした彼女であったが、仕事以外に一つ楽しみがあったのだ。


「あの先輩、ロルカム様とナオド様は……」


 そんな年相応な彼女の質問に先輩はクスリと笑う。


「この時間なら中庭にいるわ、ほら」


 と指し示す先、そこは噴水、その傍らにあるベンチ。


(キャー! 本物!! 救国の3騎士!!)


 という興奮をかろうじて抑えるの必死だった。


 救国の3騎士。


 龍討伐において公国を救ったとされる3英雄。


 勇者ナオド・カイ。


 神より与えられし神具を与えられ龍を討伐した英雄。救ったのはルカンティナ公国だけではなく他国でも英雄伝説を持つ男。その強さはただの戦闘能力だけにあらず、女性に対しても紳士的で、心まで強いともっぱらの噂だ。


 御使いロルカム。


 身分こそ所従(下男の意)であるが、それは明らかな偽装であることは公然の秘密、龍討伐に向けての暗躍し、一説にはナオドが身に付けている神の神具は彼が手配し、その出身の謎も相まって神の御使いではないかともっぱらの噂だ。


 伊達男レザ・アーツ・ルギル。


 ルギル男爵家次男、見るものすべてを魅了する美貌を持ち、社交界では数多の美女と浮名を流した絶世の美男子、龍討伐の際は龍に臆さず戦いに赴く勇気を持ち、討伐後の国家の調整役を果たすなど、政治力もあるというもっぱらの噂だ。


 そして誰が呼んだか、その3人は救国の3騎士と呼ばれるようになった。


 そしてなんといっても全員が美男子、レザはホスト系、ナオドはミステリアス系、ロルカムは中性的系の美貌を持ち、公国の女性たちからアイドルグループ的な扱いをされている。


 その3騎士の中で、ナオド、ロルカムの2人がユト公爵家に身を寄せていることは周知の事実で、2人は仲が良く、よく一緒にいるところを目撃されている。それは龍討伐でお互いにその能力を認め合ったからだともっぱらの噂だ。


 そして時々こんな感じで中庭で語らっているが……。


(凄い、まるで一つの絵画のよう……)


 うっとりと見つめる彼女。


 救国の3騎士は、ルカンティナ公国では全員上流としての扱いを受けており、庶民が目に触れる機会は余り無い。


 そして社交に参加した時は常に淑女に注目され囲まれているという。本当にそんなことがあるのだろうかと思ったが、この2人を見て改めて噂は真実であったと納得した。


 それ以外にも色々な噂が付いて回る救国の3騎士、その2人が何かを話しているけど……。


「凄く真剣な雰囲気ですね」


 何を話しているのかは分からないが、何となく近づきがたい雰囲気を感じる。


 色々な事情を抱えているのだろうから、こういう時は迂闊に近づいてはいけないのだろう、ちょっと残念と思った時だった。


「興味があるのなら行ってきなさい」


「え!?」


 びっくりするようなことを言うが先輩は優しい笑みを浮かべたままだ。


「い、いえ! その、色々な事情があるかと思いますし、その、えっと、まだ休憩に少し時間がありますし」


「分かっています、でも今後、ここの使用人として生活していくため、そして貴方自身の為になることよ。ただ見てのとおり内緒の話をしているのだろうから、後ろからこっそりと、ね? それと」



「何を話していたということについては、女性使用人たちの間だけの秘密にすること、守れるわね?」



 真剣な表情と口調に背筋が伸びる。


「は、はい!」


「じゃあ行ってきなさい、私はここで待っているから」


 と言われるがまま送り出され、こっそりと噴水の近くの茂みに移動する彼女。


 龍討伐については様々な噂が飛び交っている。


 だが虚々実々、どの噂が本当か分からない、だが一つだけ自自がある、それは今目の前にいる2人が中枢に関わっているという事だ。


 そして先輩の口ぶりからすると何か重大な事を話しているのだろう。


(もしもここで……)


 知ってはならない国家の重大な機密を聞いたらどうしよう。


 という思い、もっと言えば……。


 偶然聞いてしまった重大な国家機密、そんな私に気が付く2人、その秘密を守るために協力関係を結び、国家の陰謀に巻き込まれるのだけど。


(そうやってナオド様だけじゃなくて! ロルカム様ともキャーー!!)


 なんて考えていると、2人の顔が見える位置にまで近づく。


(やだ、本当に2人ともかっこいい)


 思わずウットリと見つめてしまう彼女であったが。



「そろそろ結論を出そうじゃないか」



 という真剣な口調のロルカムの言葉に我に返る彼女。


「ロルカムさん、まだ早いのではないですか」


 表情を険しくするナオドに首を振るロルカム。


「いや、もう一歩、我々は先へと進む必要がある」


 ごくりとお互いに固唾を飲む。


 次にくる言葉が、本当の知ってはいけない程の国家機密だったらどうしよう、今更ながらに身震いする彼女。



 その緊張感の中、ロルカムの口から衝撃の言葉が放たれた。




「結論から言おう、女はおっぱいだ、それ以上でもそれ以下でもない」




( ゜Д゜) ←彼女


「そ、そんな極端な!」


「ナオド君、君は、巨乳派だったね、じゃあ一つ聞くよ、貧乳は見たいかい?」


「べべべべつに! 何回も言ってますけど! 俺は貧乳派ですし! 別に巨乳なんて見たくないし! 俺は男! 男は一度決めたことは!!」


「最後まで、希望を捨てちゃいかん」


( ゜д゜)ハッ! ←ナオド


「諦めたら、そこで試合終了おっぱいみれないだよ?」



「先生、ロルカム先生……(涙目)」



巨乳おっぱいが見たいです」



「ほーーっほっほっほ」



――



「どうだった?(優)」


「はい、女の価値はおっぱいであるとか抜かすクソ野郎たちでした」


「あらあら、まだ可愛い方よ、私の時は「胸の谷間に向かって流れる汗になりたい人生だった」とか話していたわ」


「ヒィィ!!」


「でもほら見てごらんなさい」


 視線を戻すと噴水の近くで真剣な顔で話している、まだあのクソみたいな会話を続けているのだろうけど。


「ほう(感嘆のため息)」


「ね? 本当に絵になるよね、色々妄想できるの、それが正しい楽しみ方なのよ」


「確かにこれは部外には話せませんね」


「救国の英雄であることとその関係者であることと公爵家に身を寄せている事実だから余計にね」


「はい、でも先輩、私、今の会話を聞けて良かったと思いました!」


「あら、どうして?」


「だって、今日、少しだけですけど、大人の階段を登った気がするからです!」


「クスッ、そうね、懐かしいわ。私も、いえ、ここにいる女性使用人たちは全員、あの2人のおかげで大人の階段を上ったものよ。さあ丁度休憩時間ね、私たちの班と一緒に食事をしましょう、そして休憩時間が終われば、公爵家の為に働きましょう」


「はい!」


 とこうして使用人たちの優雅な時間は過ぎるのであった。



――後日。



「キャー! 勇者ナオド様にロルカム様よ! なんてカッコイイのかしら!!」←別の新人


「そうね、カッコいいわね」←先輩


「噴水で2人で話している姿も素敵! あの真剣な表情! どんな話をしているのかしら!」


「いいわ、行ってきなさい(優)」


「え!? で、でも、まだ休憩時間には少し、あの真剣な雰囲気からすると、他人に聞いてはいけない大事な話をしているんじゃ」



「今後の使用人としての生活のため、そして貴方自身の為になると思うから、でも何を話していたのかは女性使用人以外は口外しては駄目よ」



「は、はい!」



――30分後



「どうだった?(優)」


「はい、「おっぱいより為されることは、常に善悪の彼岸で起こる」とか抜かすサイコパス野郎共でした」


「あら、もう概念の域まで達しているのね、死ねばいいのに」



――更に後日。



「キャー! 勇者ナオド様にロルカム様よ! 救国の3騎士! あんな美男子の2人が揃い踏み! 噴水の近くで話す姿がまるで絵画のよう! あの2人はきっと話している内容も素敵に違いないわ!」←更に別の新人


「いいわ、行ってきなさい(優)」←先輩


「え? でも……」



――30分後



「どうだった?(優)」


「はい「思えば私たち男は、燭光おっぱいの光に誘われて舞寄る、羽虫の様なものなのかもしれません、その先に待っている結末も知らずに」とか抜かず昆虫野郎共でした」


「あらあら、羽虫はその通りだと思うわ」



――更に更に後日



「キャー! 勇者ナオド様とロルカム様! 救国の英雄の3騎士様よ! 全員美男子! 抱いて!」←更に更に別の新人



 そう! 今回は、そんな美男子3人組の日常を垣間見る話なのである!



第二話:いかなる闘いの最中であろうと身だしなみには気をつかう、それが男のダンディズムというものだ。


 レジャー。


 ルカンティナ公国にも当然レジャー施設が存在する。


 様々な娯楽がある中、その中の一つが、海水浴、つまり海を使ったレジャー、庶民から上流まで楽しめる裾野の広いレジャーだ。


 娯楽に庶民がちゃんと金を使える、というのは国が豊かな証拠でもあり、世界で五指に入るルカンティナ公国もまた、


 そんな浜辺に、水着姿の男女が集まり、それぞれに遊びを楽しんでいる時だった。



 そこに舞い降りる3人の天使。



「ねえねえねえ!!」


 その3人に気が付いた水着女子の1人が興奮気味に話しかけて、話しかけられた他の水着女子も気が付いて。


「う、うそ!! あの人たち!!」


 爆発的に広がる話の輪。


「ひょっとして!」

「まさか!」

「こんなところに!」

「あの御姿、本当に!?」



「きゅ、きゅ……」



「「「救国の3騎士様!?」」」



 救国の3騎士。


 龍討伐に深く関わったとされる3人の勇士達。


 伊達男レザ・ルギル。


 ルギル男爵家の次男で伊達男との異名を名乗り、数々の女性と浮名を流した社交界の雄、龍討伐では戦いを恐れず女性たちを守り、更に政治的に暗躍したと噂。


 勇者ナオド・カイ。


 神の祝福を受けた英雄であり龍討伐をした張本人、単独で龍に挑み勝利する強さだけではなく心まで強く、謙虚な姿勢を持つ。


 御使いロルカム。


 身分としては所従ではあるが、それは動きやすくするための偽りの身分であることは暗黙の了解、ナオドの武具は彼が調達し、御使いであるという噂。


 全員がそれぞれにタイプの違う美男子であり、3人合わせて救国の3騎士と呼ばれ、それぞれにファンが付き、国を超えてアイドル的な扱いを受けていた。


 女性陣の視線を一身に受ける3人、声をかけてみようかと色めき立つ女性陣、その一方で。



「はいはいはい! イケメンイケメン! よかったでございますね! ねーフォス先輩!」

「はいはいはい! イケメンイケメン! お前らがイケメンなのは俺達がいるから引き立つんだよ! ねーカグラ後輩!」


と他の紳士たちは厳しい視線を送る。


 それは無理もないこと、3人ともそれぞれがタイプの違う絶世の美男子たと言っても過言ではないのだから。


 ちなみに救国の3騎士の中で、ロルカムとナオドの仲の良さは知られていたが……。


「レザが誘ってくれるなんて意外だったよね」


 とは発言するのはナオドだ。


 そう、実は3人は旅行に来ており、その主催は何とレザなのだ。


「ふん! 別に誘いたくて誘ったわけじゃないさ、親父がお前達と親交を深めておくことが利益になると言ったからだ! まあ、俺としては、不本意だったのだが、男同士もたまには悪くないだろうさ!!」


「(ツンデレ?)はは、どうも」


 と目の下に思いっきりクマが出来た状態で話すレザ、うん、思いっきり楽しんのだろうけど、まあそれはこっちも嬉しいことなので黙っておく。


 とはいえ、誘われた時、ナオドやロルカムの陰キャからすればレザは「スクールカーストの最上位」的な存在、正直話が合うとは思わなかったのだが。


 意外や意外、ヲタク趣味は持っていなかったものの、所謂「趣向」が一緒であるため、かなり盛り上がった、普通に徹夜状態で話しまくったのだ。


 レザではないが、ロルカムもナオドも滅茶苦茶楽しかった、男同士のノリってなんであんなにも楽しいのだろうかと改めて思う。


 さて、救国の3騎士はルカンティナ公国では上流の扱いを受けているのは先に述べた通りだが。


「でも、レザが大衆宿屋で泊まるなんて意外、大丈夫なの?」


 そう、旅行の段取りは全てレザが組んだものの、3人が泊まった宿屋は一番いい部屋を予約したものの普通の大衆宿屋なのだ。


「貴族からすれば高級ホテルの方が安全なんじゃない?」


「今みたいに高級ホテルが「安全」って解釈は民衆はしないんだよ、「贅沢」って解釈して反感を買うんだと、くだらない」


「へー、政治家って何処も大変だなぁ、俺の祖国でも、ちょっとしたことで色々と叩かれてたっけ」


 そんなナオドの言葉にロルカムも頷く。


「まあ為政者というのは、それも仕事なのでしょうね」


 そう、レザは、ルカンティナ公国の立法部門、つまり政治家の息子、レザの親父は簡単に言えば一大派閥の長と解釈していい。


「って、こんなつまらない話は終わりだ! 折角だから楽しまないとな! さてと……」


 とここでフッと気障に笑うレザは、ある物を取り出す。


「へえ、カッコイイ、これ」


「男だって、お洒落しなきゃだめだぜ、お前らは素材は良いんだから、もったいねえぞ、それに」


 ゴニョゴニョ。


「「!!!」」


「どうだ? いいだろ?」


「イグザクトリー(そのとおりでございます)」←ナオド


「流石政治家の家系、策謀は一枚上手ですね」



 お互いに意味深に笑うのであった。



――



 男のファッション。


 異性を惹きつける魅力というのは二つある、先天的に備わっているもの、後天的に備えたもの。


 先天的とは一言でいえば「容姿」だ。これは生まれ持った物であるため、どうしようもない、これは才能と言い換えることもできる。


 後天的なもの、これは一言言えば「努力」だ。自分の格好や仕草に気を使い、自分を磨く。


 とはいえ先天的な才能があっても単純に顔がよければいいだけではない、ちゃんと異性の視線を意識して、媚びないという意味で不快感を与えない必要がある。


 だが男の場合は女と違い派手に着飾ることは出来ない、故にちょっとした小物に拘るし、女性はそこをちゃんと見ている、当然にゴテゴテしいものなど身に付けては駄目。


 何より大事にしなければならないのは清潔感、そんな彼らは、適当な場所を見つけるとそのまま手に持っていた荷物を下ろして、簡単な設営を始めて、砂浜に座り顔を海の方を見ながら語り合う。


 そんな中、おもむろにレザが取り出したのがサングラスだ。


 当然にサングラスの色は全て違う、自分に合わせる色というのは自分の性格を表す色と反対の色が良いと言われている。


 レザは女に対してはオラオラ系、故に赤だと更に攻撃的なイメージを与えてしまうため癒しを与える青色のサングラス。


 ミステリアス系なナオドは、癒しの青だと大人しすぎてしまうため、攻撃的な赤色。


 中性的なロルカムは、2人と被らない形で茶色のサングラス。


 それをかけて、3人並んで仲良く座り、他愛のない話に花を咲かせる美男子3人。


 そんな3人に対して周りの水着女子達は。




「あれ絶対見てるよね」ヒソヒソ ←水着女子




「ふっ、透き通るような青空、いい天気だぜ(キラキラ)」←斜め上を見て掌で影を作るレザ



「顔を上げているけどさ、目線下だろ絶対」ヒソヒソ ←水着女子



「んーっ!(伸び) 今年の夏も暑くなりそうだ(キラキラ)」←伸びをしながら斜め上を見るロルカム



「だから顔を上げても無駄なんだよ、目線下なんだろ、分かってんだよ」ヒソヒソ ←水着女子



「海は広い、見ていると心まで広くなりそうだ(キラキラ)」←斜め上を見ながら遠くを見るナオド



「だから無駄なんだよ!! 何で全員不自然に顔が上に向いているんだよ!! 外せやサングラス!!」←水着女子



「まったく、あんだけのイケメンなのにね~」

「本当にさ、カッコいい人には馬鹿な事をしないで欲しいよね~」

「3騎士様に似ているけど」

「いやいや、似ているだけで完全に別人でしょ」



と散々な言われ放題で、徐々に遠ざかっていく水着女子達。



「その手があったっ! サングラスっ! 圧倒的サングラスっ!!」←カグラ後輩

「そうか! これならバレずに見れるっっ! 合法っっ!!」←フォス先輩



 とイケメン達もそうではない男達も、彼らが望むひと夏の恋には無縁、というか向こうかの圧倒的絶縁状態だったけど。


 サングラスをかけて盛り上がる男達の顔は皆子供のように輝いていて、それはそれで十分に楽しいひと夏の思い出であった。



:おしまい:



第三話:男とはなんぞや…!? 命とはなんぞや…!? 返答せい!



 社交界。


 上流階級にとって社交とは本業以外で抱えるもう一つの仕事だ。


 誰と誰が仲が良い、誰と誰が仲が悪い、上流特有の面倒事が集約されている場所であると言ってもいい。


 だがここはチャンスの場でもあることに代わりはない、社交界に招かれることは立派なステータスだ、それに華やかなドレスに優雅な佇まいは憧れの的だ。


 その煌びやかなドレスに身を包んだ淑女たち、その視線を一身に集めるのは。


「素敵よね」

「本当に美男子」

「いつまで見ても飽きないわ」


 救国の3騎士。


 龍討伐に深く関わったとされる、3人の英雄、伊達男レザ、勇者ナオド、御使いロルカムの3人。


 それぞれがタイプの違う美男子であるため、淑女たちからはアイドル的扱いを受けていた。


 レザは貴族であるため正真正銘の上流、ナオドは国賓待遇であり上流、ロルカムは身分は所従ではあるが、タダクス公爵の計らいにより上流階級として扱われており、この3人を招くことがステータスとばかりに引っ張りだこだ。


 しかも3人は全て一切のしがらみを必要としない不可侵な存在。


 招くための唯一のルールは、3人一緒に呼ぶことだ。


 今や上流の淑女の一番の関心事は、招待客のリストの中に3人が入っているかいないかだ。


 龍討伐が謎に包まれているが故に、存在が際立つ3人。


 ロルカムとナオドの仲の良さは知られていたが、近ごろレザとも急接近、3人でよくつるむようになったのだ。


 とはいえアイドル扱いとはいえ、騒がれているわけではない、不可侵な3騎士を中心に少し離れた場所から淑女たちは熱い視線が注がれている。


 だが熱い視線は淑女だけ、一方で……。



「あらやだ、聞きました奥さん、3丁目のあのイケメン旦那さんがまた浮気って」←カグラ後輩

「まあまあまあ、顔で男を選ぶとロクなことにならないのよねえ、奥さんも大変ね~」←フォス先輩



 と紳士たちは厳しい視線を送る。


 不可侵の存在である3人、何やら真剣に話し合っている、小声で良く聞き取れない、彼ら3人も細心の注意を払っているようだ。


「素敵よね、何を話しているのかしら」


 うっとりする淑女たちであったが。


「それに比べて……」



「ウヒヒ、フォス先輩、ドレス姿って意外と露出がありますね」

「あ! 見ろカグラ後輩! あの淑女! まさに果実おっぱい! ウヒヒ」

「おお、どうして神は男をオッパイに弱い生き物に創り給うたのか!」

「あ、そうだ、カグラ後輩よ、おっぱいとはいえば実はこの後、打ち上げというか、ショーがあってな、ゴニョゴニョ」

「フォー! でもバレるんじゃ」

「大丈夫、変装して潜り込めばいいのさ(爽)」



((うわぁ……))


 よくこんな冴えない会話できるよな、だから相手にされないだよ、分かれよ。



 と救国の3騎士と真逆の意味で遠巻きに見られている冴えない男2人組。



「それに比べて……」


 視線は再び3騎士へ。


 凄く真剣な様子で会話をしている


「ほう(感嘆)」


「あの3騎士様方は違うわね」

「きっと素敵な会話をしているに違いないわ」

「いえいえ、多分、国家の中枢部」

「まあ、素敵」



――救国の3騎士



「それにしても淑女のドレス姿ってエロいのも結構ありますね!」←ナオド

「あ! 2人とも、見てみろよ! あの淑女、まさに果実おっぱい!」←レザ

「おお、どうして神は男をオッパイに弱い生き物に創り給うた!」←ロルカム

「ロルカムさんが言うと説得力が違いますね」←ナオド

「あ、そうだ! さっき知ったんだが、この後の打ち上げで、ショーがあって」←レザ



:おしまい:



第四話:男塾おとこのろまんの教科書に死という文字はあっても敗北の文字は無い!



 ルカンティナ公国であり、4大貴族が統治をする世界で五指に入る国力を持つ大国。


 その中枢部分はルカンティナを一望できる高台に建設されているルカンティナ宮殿。


 国家の中枢の担う全てが集まる場所。


 その中の中枢区画と呼ばれる場所は選ばれた者しか入れない。


 その中枢区画内でのこと……。


「う、うそ!! あの人たち!!」


 その中枢区画に入ることを許された女性たちが色めき立つ。


 本来そんな場とは無縁の場所でありながらの嬌声。


 爆発的に広がる話の輪。


「ひょっとして!」

「まさか!」

「こんなところに!」

「あの御姿、本当に!?」



「きゅ、きゅ……」



「「「救国の3騎士様!?」」」



 救国の3騎士、龍討伐に深く関わったとされる、伊達男レザ、勇者ナオド、御使いロルカムを讃えてそう呼ぶ。


 全員がそれぞれタイプの違う絶世の美男子であるため、アイドルグループ的扱いを受けている。



「ほう(感嘆)」

「美しいですわ」

「そうよね、カッコいいというよりも、綺麗よね」

「いつまで見ても飽きないわ」



 そんな場ではないと分かりつつも、身分を問わず立場を問わず淑女の熱い視線を一身に集める3英雄。


 その一方で……。



「救国の3騎士様は、どんな会話をしているのかしら(裏声)?」←カグラ後輩

「女のオッパイとお尻の話をしているに違いないわ(裏声)!」←フォス先輩

「まあそれは素敵、世界各国共通で嬉しい(裏声)!」

「男って全員一緒ですものね(裏声)!」



 と紳士は厳しい視線を送る。



 とはいえ場所と雰囲気問わずと言ったがそれを抜きにしても話しかける雰囲気ではない。


 真剣、いや、深刻な様子で3人はそのまま何かを話しながら、中枢区画を区切る重厚な扉を開けて出た。



「とても深刻な様子でしたけど」

「ま、まさか! 再び龍が!?」

「ど、どうしましょう!」

「でも大丈夫、わが国には救国の三騎士がいるもの!」



「救国の3騎士様! 美男子で勇気もあって女性に優しくて物腰も優雅で、本当に素敵よね!!」



「それに比べて……」



「しかし退屈な会議だったな」←フォス先輩

「まあ、会議というのは方針決定と意見調整の場ですからね」←カグラ後輩

「帰りに何処か寄っていくか?」

「先輩! 噂によるとここの花街の最高級店に巨乳美女揃いの店があってウヒヒ」

「フォー! これぞ海外出張の醍醐味!」

「周りにバレないようにしないとな」

「我に策あり(ドヤァ)」



(((うわぁ……)))



 お前らここを何処だと思ってんだよ、だから相手にされないんだよ、分かれよ。


 と身分を問わず立場を問わず淑女の冷めた視線を一身に集める冴えない男2人組。


 そんな2人もまた、中枢区画から扉を開けて外に出る。



――救国の3騎士



「しかし退屈な会議だったな」←レザ

「まあ、会議というのは方針決定と意見調整の場ですからね」←ロルカム

「折角だから帰りに何処か寄っていきましょうよ!」←ナオド

「だったらいい所があるぜ、お前ら知ってるか、噂によるとここの花街の最高級店があって巨乳美女揃いの店があってだな!」

「フォー! これぞ仕事の醍醐味!」

「周りにバレないようにしないとね!」

「我に策あり(ドヤァ)」




:おしまい:


:裏設定メモ:


 いたるところに出没する登場する冴えない男2人のどうでもいい裏設定。


:フォス先輩:

・世界最大最強国家の第一王子であり次期国王。

 愚鈍との評価があるが、絶大なカリスマ性であり支持者は少数ながらも熱烈な支持を集めている。

 為政者としても残酷な部分もあり大胆な施策もやってのける、乙女ゲーにおける腹黒王子ポジション。

 だがイケメンではない上に男のしての器は見てのとおり、というよりも見ていられない小ささであるため、淑女からは「自称没落国の王子の末裔を名乗る痛い人」と評価を受けて相手にされていない、カグラ後輩とはソウルメイト。


:カグラ後輩:

・世界最大最強国家に設置された世界最難関のエリート養成機関出身。

 そこでは最下位という成績であったが、卒業後「一流と呼ばれる人間が一生をかけて能力の全てを費やし運にも恵まれて受勲する勲章」を1年で二度受勲するといった桁外れの功績をあげ続けている。

 今では自国内の超名門貴族達から注目され、その名は国を超えて国外の傑物と称される宰相からも一目置かれている上に、暗黒街にまでその名を轟かせて恐れられている乙女ゲーにおける腹黒エリートサラリーマンポジション。

 だがイケメンではない上に男のしての器は見てのとおり、というよりも見ていられない小ささであるため、淑女からは「自称エリートを名乗る詐欺師まがいの人物」と評価を受け相手にされていない、フォス先輩とはソウルメイト。



:おしまい:


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