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第十一話:転生先で貴族令嬢として侍女の弟と交流する


 日本のヲタク文化を異世界でも楽しむ。


 何回か述べているが、その為に私が採った方法は失われた超技術を持ち、その存在すらも疑問視される架空の古代文明である日本文明、その研究材料を収集するためという方便を使ってロルカムを通じて買ってこさせている。


 そのロルカムであるが、今はナオドと仲が良くやっているようで、私の買い物ついでにロルカムが望んだ男性向け作品を買ってヲタク友達としてお互いに楽しんでいるようだ。


 まあこの点については2人の気持ちは分かる。好きなものを共有できる友人は得難いもの、それは私だって同じだ。


「えへへ」


 と傍でBL本を読みふけるリズエル、すっかりBLにハマった彼女、んでありがたいのは変に原理主義化せずに、良いと思ったものは何でも取り入れるタイプだったことだ。私が好きな枯れ専の良さも理解してお互いに語り合っている。


「…………」


 ラニも無言で熱心に少女漫画を読みふけっている、もちろん私も少女漫画は大好きでよく読むのでお互いに語り合えるヲタク仲間だ。出来ればBLもどうかなぁと思って勧めて読んでみるも、余り好みではないとのこと、ちっ、残念。


「ふむ、こういう展開になるのか」


 トオシアは、格闘漫画を読むのはもちろんだが、今は日本語を更に覚えて簡単な小説まで読めるぐらいにまでなっている、流石王国最高学府を卒業した才媛。


 そんな中で、もう1人加わったのは……。



「雑種! お前の美しい理想は己の醜さを隠すただの言い訳にすぎぬ!」



と漫画を見ながらポーズ付きで練習するロイだった。


 うん、確かに文字通り最強の中二病キャラよね、んで、このキャラと作品にドはまりして、ずっと練習を続けている。


 そんな平和な時間が過ぎていく、ああ甘露甘露。


「そういえばロイ君は知っているの? ニホン文明」


「え!?」


 とおもむろに話しかけるリズエルに、ビクッと反応するロイ。


「ニホン文明は失われた超技術を持つ古代文明で! 生活水準と娯楽水準が高いんだって! そりゃそうだよね! こんなにも面白い漫画がたくさんあるんだものね!」


「む、む」


「色々な趣向があって面白いよね! 私たちが生きている世界の物語だったり! 見たことも無いような技術がある世界の物語だったり! 凄い文明だよね!!」


「そ、そうだ、な」


「ねえねえ、ロイ君、ニホン文明って本当にあったの? あったら話して欲しいなぁ! 悠久の時を過ごしてきた龍族なんでしょ!? 歴史の生き証人として、本物のニホン文明の話が聞きたい!」


 と目を輝かせて語るリズエルにダラダラと冷や汗を流すロイ。


(さあ、どう反応するか……)


という私の思いに。


「日本文明か、何もかも懐かしい……」←窓の外を見ながら


(案の定知ったかぶったね!!)


「わあ! 本当にあるんだ! ねえねえ、日本文明って何処にあったの!? その技術はどんなものだったの!?」


「え!?」


 と再びビクッと震えてプルプル震えるが……。


「作中に出てくる、すす「すまほ」と呼ばれる、と、遠く離れた人間たちが時間差無しに会話できり技術があったのは事実だ! えーっと、それと何百人を乗せ、それこそ龍の如き大きさを誇る鉄の塊、つまり「ひこうき」も実在する!! もう一つおまけに! 「かくへいき」と呼ばれる我の閃光を遥かに凌ぐ威力を持つ武器も実在しているのだぞ! だが、唯一の違いは、作品にもあるがニホン文明には魔法文明は存在しないのだ!!」


(知ったかぶったけどあってる!!)


「ばば場所は! そうだな、案内してやりたいが、えーっと、つまりこの世に辿り着けない場所にあり、それを目にするのは、それこそ神でない限り不可能な場所にあるのだ!!」


(知ったかぶったけどあってる!!)


「こんなところだな!!」


「そうなんだ、連れて行ってもらいたかったけど、神でない限り不可能な場所にあるんだったらしょうがないよね、それにしても、異世界ファンタジーだと思っていたんだけど、本当にあったんだなぁ」


「異世界ファンタジーか、まあそう言っても過言ではないであろうぞ!」


(過言というか、そうなんだけどな)


 と若干テンパっているが何とかやり過ごした様子。


 ちなみにリズエルの言う「異世界ファンタジー」とは、私たちの現代物語を指すのだ、そして私たちの世界の「異世界ファンタジー」がこちらの現代物語となる。


 私たちにとってお馴染みのスマホは、ここで例えると「異世界ファンタジー」となる。


 ややこしくて申し訳ないが、異世界転生や転移物は、こちらの感覚だと「超技術を持った日本文明人がこちらに転生してくる」という感じなのだ。


「何でも知っていて凄いよね~、ロイ君は」


 とそんなロイの頭をなでなでするリズエル。


「……リズエル、我を子ども扱いするな」


「はいはい、ごめんね、お菓子作ってあるけど、食べる?」


「……ふん、お前の作る菓子はまあまあであるから、食べてやる」


「はーい、ちょっと待っててね~、お嬢様もトオシアさんとラニさんもお茶にしましょう!」


 とテキパキとお菓子の準備をするリズエル。


「随分可愛がっているよね」


「え?」


「ロイの事よ、慣れてるって言うか」


「ああ、はい、ケー君、あ、弟の事なんですけど丁度あれぐらいの年頃の時にロイ君みたいな感じだったんですよ」


「あ~、言ってたわね、そんなこと」


「ロイ君は本物の龍ですけど、弟は「龍がこの世に転生し、その記憶が長らく失っていたが、先日覚醒した」という設定だったんですよ、それでですね」



――「我は災厄! 我は奇禍! 我は悠久の時を統べる王!!」←バンと片手を突き出す


――「我は龍である!!」←ルルーシュポーズ



「これが口上なんです、喋り方もロイ君のまんまで、でも私は「姉として役割を果たしてくれたから守ってやる!」なーんて言ってくれて、可愛かったなぁ~、それでですね、決め台詞なんですけど」



――「龍の祝福をくれてやる(`・ω・´)キリッ」



「こんな感じで、私の作るお菓子も大好きなんですよ~」


 と上機嫌なリズエル。


 微笑ましい、そう、リズエルは弟、つまりベール男爵家の次期当主の弟がいる。


 性格ブスはベール男爵家を貧乏だから落ち目だ何だと言っていたが、実際は違う。ユト公爵家当主、つまり父親は日本で例えると最高裁判所長官で、リズエルの父親は高等裁判所長官であると解釈していい。


 人を裁く巨大な権限を持つ裁判官という職業、故に豊かな暮らしは必要ないと、他の交流を最低限に、富を集めず質素に務めているのだ。


 んで現在リズエルの弟はベール家の次期当主として、私の父親、タダクス公爵の補佐官として裁判官をしている。


 そして見てのとおり姉弟仲は良好なようで、弟が可愛くてしょうがないそうだ。


「姉妹仲が良いのは素晴らしいことよね、トオシアとラニは?」


「私は4姉妹の末っ子です、2人の姉はモデルをしていて、1人は実業家をしています、姉妹仲はまあまあですか、バリバリの女家庭で育ちました」


「うん、凄い想像できる、ラニは?」


「私は逆で男家庭で育ちました、まぁ、父親も兄も馬鹿でガキですけど、お嬢様は確か」


「そう、私も兄が2人いるの、多忙で中々実家には帰ってこない、まあ私も仲は良い方かなぁ」


 なんて兄弟話に花が咲いていると思い出したようにリズエルが話しかけてくる。


「あ、そうそう、キョウコお嬢様、今日はその弟がタダクス公爵主催の会議に参加しているのですが、前々から是非キョウコお嬢様に挨拶がしたいと言っていまして、急で申し訳ないのですが、会議が終わった後はここに来るように言っても大丈夫ですか?」


「あらあら、もちろんよ、貴方の弟なら私も会ってみたいもの」


「はい! ありがとうございます!!」


 という満面の笑みに「リズエル、菓子はまだなのか?」というロイの言葉でお互いに笑いあったのであった。





 そんなこんなで会議が終わり、迎え入れるための準備を整えた後に、リズエルが迎えに行く。


 そして弟はリズエルと共に緊張気味に入ってきた。


「紹介します、私の弟のケルン・ベールです」


 そんな感じに紹介された弟、決して美男子ではないが好青年という感じ、ふむ、派手にモテる感じではないが、意外と侮れないかもしれない。


「初めまして、キョウコお嬢様、ルカンティナ公国第1高等裁判所、長官補佐ケルンです。姉がいつもお世話になっています」


 男性貴族の貴族流のお辞儀に私もそれに習い、女性貴族の貴族流にお辞儀をして答える。


「(この子が元中二病の弟か……)初めまして、キョウコと申します。こちらこそ貴方のお姉さんには世話になっているわ、今では私達に無くてはならない存在よ」


「そう言っていただけると私も嬉しく思います。えっと、両隣にいらっしゃるのはトオシアさんとラニさんですよね、トオシアさんは秘書、ラニさんはボディーガードだと姉より伺っています。トオシアさんはずば抜けた能力を持つ才媛、ラニさんは文武両道の才女だと伺っています」


 との言葉にトオシアが笑顔で答える。


「(この子が元中二病の弟か……)才媛なんて過分な言葉ですよ。人の倍努力をしてやっと人並みであると自負しております」


 続いてラニが答える。


「(この子が元中二病の弟か……)私も文武両道なんて過分な言葉です、その言葉は皆さんの手柄で得ているにすぎませんから」


「姉の言うとおり、皆さんとても謙虚な方なんですね、見習わないと」


 と言った時だった。


「リズエルよ、菓子がなくなったぞ! 追加を食べてやる!」


 とロイが入ってきて、ケルンを見つける。


「ん? ほう、お前が話題に出たリズエルの弟か!」


 というロイの言葉にちょっと戸惑った様子のケルン。


「えーっと、君は、確か姉が言っていた、ロイ君?」


 という言葉に満足気に頷くロイ。


「ふむ、お前の話は聞いている、リズエルの弟ならば今後とも付き合いがあるだろう、となれば我が正体を明かしても構わないだろうな」


「え?」


 という反応を余所に、


「我は災厄! 我は奇禍! 我は悠久の時を統べる王!!」←バンと片手を突き出す


「我は龍である!!」←ルルーシュポーズ


(°◇°;) ←その姿を口を半開きにして見つめるケルン。


「ふむ、確かに人の姿では説得力に欠けるか、聞くが良い、公になっていないがな、今のこの我の姿は仮初の姿……」


 ここで再びロイは両手を広げて言い放つ。


「我は龍は人の姿に変え人間界へと降臨したのである!!」←両手を掲げる


(°◇°;) ←その姿を口を半開きにしてロイを見つめるケルン……。


(///ω///)カアアア!! ←赤面してプルプル震えている


(((ああーー!! だよねーー!! 目の前で黒歴史やられたらその反応するよねーーー!!)))


「ほう、我の正体を知っても驚かないか、流石リズエルの弟、ただの雑種だと思っていたが、骨があるようだな!!」


「へ、へぇ、ロイ君は龍族なんだね、知らなかったよ、た、たた、確かに驚いたなぁ」←真っ赤になって震えている


「先ほど言ったとおり、訳あって我は人の世に顕現しているが、その訳は聞くなよ」


「う、うん、分かった、聞かないよ、ででも、す、凄いなぁ、龍は強くて大きくてカッコイイものね」


「ほう! 中々に見る目があるな! 何かあれば我を頼るが良い」



「龍の祝福をくれてやる(`・ω・´)キリッ」



「うん、ありがとう(///△///)」両手で顔を抑えている


 とひとしきりプルプル震えた後。


「まま、まあ、ここ、子供は! これぐらい腕白じゃないと! ねえ皆様方!?」←自分達に視線を向ける


「「「ガバッ」」」 ←一斉に視線を逸らして笑いをこらえている3人


「…………」←それを見て何かを考えているケルン


「…………」←何かを察して顔が青くなるケルン


「リ、リ、リズエル姉さん、ま、ま、まさか……」


 と見た先、リズエルはニッコリと笑って。


「うん、とっても可愛かったなぁって話をしていたの」


「何で言うの!!?? なんでそういうこと言うの!!?? ほんとうにさぁ!! ほんとうにさぁ!! 昔からもうさ!! この馬鹿姉!! この阿保姉!! ちくしょーーー!!」


 と言いながら部屋を去ったのであった。



――後日・キョウコ自室



「あの後カンカンに怒っていたんだけど、可愛いと思うんですけど、ねえ、お嬢様」


「そうね、確かに実際に男の子は龍に憧れるものね」


「可愛いのはいいんですけど、だからなのかモテないんですよ、姉としては心配で」


「あらそうなの? んー、でも真面目で誠実だし、好きになる子もいそうだけどね」


「それに加えて弟のことで更に心配なことがあって」


「心配な事?」


「いかがわしい本を持っていたんですよ!!」


「あらら、でも弟さんも男の人だもの、それぐらいはしょうがないんじゃない?」


「普通の本ならよかったんですけど、ひょっとしたら変な趣味を持っているのかもしれないと心配になって、色々と読んでみたんですよ」


「ふんふん、それで」


 という私の言葉にリズエルは、ゴソゴソとカバンの中を探ると。


「水着の日焼け跡に萌えるシチュエーションが3冊もあったんですよ!!」


 とドサっと机の上に置いたのだった。


「しかもこの3冊って水着の日焼け跡に絞った感じで、お気に入りなのか、一番取り出しやすい位置にあるんですよ!!」


「ああ、確かにこれは多いね、ちょっと問題かも」


「ですよね!? モテない上にこんな趣味あって、もし相手が出来ても、こんなことを求めたなんて考えたら姉として心配で心配で!!」


 といった時だった。


「でも健全な趣味だと思いますよ」


 とパラパラ読みながら言うトオシアに注目が集まる。


「け、健全ですか? だって、水着跡も写真の撮り方とか見ると、なんかちょっと変態チックじゃないですか?」


「殿方のそういうのって食欲と一緒なんですよ」


「しょ、食欲?」


「今日は自国料理、次は外国料理、ずっと同じものを食べ続けると飽きるから別物を食べたくなる、水着跡は今のケルンさんの好みってだけだと思います」


「そ、そうなんでしょうか」


「多かれ少なかれ、そういった趣向は持っているものです。とはいえ私が過去付き合った男がピーーーな感じの物ばかりが20冊見つけた時には、流石に恐怖を感じましたけど、はっはっは」


「笑えない!! 普通に怖い!!((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」


「でも顔は良かったんですよ、評判の美男子でした」


「相変わらず濃い男遍歴よね、凄いわホント、ラニはどう思う?」


「うーん、水着自体は海に行けば皆着ますし、士官学校時代に遠泳の訓練があった時は、男共は全員「興味ねえよ!」とか言いつつ目をランランとさせてましたから、心配する必要はないかと、兄貴も似たようなものを持っていましたよ」


「そっかー、そう考えれば、普通かもしれないですね」


 と3冊をそれぞれ4人で交互に見る。


「へー、水着跡でも、色々あるんだね」

「露出が全然ない方がなんか好きみたいなんですよね」

「あ、この女の人綺麗、腰が細くて羨ましい」

「それで胸が大きいとか反則」




――中略・後日




「お疲れ様です、キョウコ嬢、ケルンです、姉さんに書類を届けに参りました」


 とまだちょっと恥ずかしそうにケルンが来た。


「(水着の日焼け跡が大好きな)貴方だったらいつでも歓迎するわ」


「トオシアさんも、先日は資料集めを手伝ってもらってありがとうございます」


「(水着の日焼け跡が大好きな)ケルンさんの頼みですから、お役に立てたのなら幸いです」


「ラニさんも軍の資料提供ありがとうございます」


「(水着の日焼け跡が大好きな)ケルンさんのお人柄のおかげ、私はただのつなぎ役です」


「折角だから、お茶でも飲んでいきなさいな、リズエルに聞いたのだけど甘い物が好きだと聞いたわ、有名なお菓子店のスィーツを用意したのよ」


「わあ、ありがとうございます、それではお言葉に甘えて」



――小一時間後



「だから勝手に人のエロ本読むなって何度も言ってるだろーーーがい!! この馬鹿姉!! この阿保姉!! ちくしょーーーー!!!」



:おしまい:



完結してありますが、続きます。

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