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尋問中、嘘の供述をしたら、義父一家の罪が軽くなるのかもしれない。そういう考えが頭から離れなかった。
でも、私は義父たちを信じていた。私が嘘をつかなくたって、義父と義母は潔白だと信じていた。義兄についてはどうだかわからなかったけれども。
尋問はほんとうにつらかった。私一人だったら、きっと楽になるために相手の望む供述をしてしまっただろう。
でも自分を信じてくれている人がいる、と思っていたから自分の主張を曲げることはしなかった。
それは私を友人にしてくれたクリスティーナであり、彼女がさそってくれた生徒会の仲間であり、私に婚約を申しこんでくれたブライスのためでもある。私の闇魔力保持がばれた際に、彼の両親から婚約解消が伝えられたが、わたしは自分を一人の女性として扱ってくれたブライスに感謝していた。彼といる間は、私は自分の存在に価値があるように思えたからだった。その経験は私に自信を与えてくれたし、この先何があっても、誰にも奪えない大切な記憶の宝物になった。
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「・・・君は限りなく黒に近いグレーだ。一連の家族の犯罪行為と全くの無関係だったわけがないし、何も知らなかったはずがない」
ルーファスは椅子にもたれて足を組み、ため息をついて天井を仰いだ。
彼は損得で助けてくれたわけではないと私は思っていた。彼は、自分の良心に従って行動したのだと。
だからこそ、自分の行動の責任を取らないといけないと考えている。体制側がただしく、私が危険因子であった場合は、ことばどおり私を殺してしまうだろう。
そんなことを考えながら、私はルーファスを見つめていた。そして、突然あることを閃いた。
この先彼の言う通り、私に未来がないのだとしても。
いや、未来がないのだとしたら、だからこそ。
わたしは、私のできることをやっておきたい。