表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄壁のギルガⅠ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
5/12

04 鍛冶工房にて

鍛冶工房にて、アルフは依頼の内容を説明するが・・・

 食堂を出て程なく、三人の姿は鍛冶工房の中にあった。

 魔闘学園に程近く、学園生たちも日ごろからお世話になっている工房だ。

「ども、お邪魔しまーす。」

 声をかけつつ、アルフはずかずかと無遠慮に奥に入っていく。

 状況が分からぬまま、ギルガとリーリアも後に続く。

 建物の外にまで聞こえていた(つち)の音が、奥に進むにつれて、キンキンと耳に痛い程に聞こえてくる。

 灼熱の金属光が見えた瞬間、輻射熱(ふくしゃねつ)が、ギルガとリーリアの肌を焼く。

 ムンと、金属と炭と、添加物の焼ける匂いが、鼻を突いた。

 しかし、それ以上に二人の心を貫いたのは、工房内に満ち満ちている、職人特有の緊張感だ。

「馬鹿野郎!

 もっと腰入れて()ちやがれ!」

 親方らしいドワーフが怒鳴ると、

「へい!

 親方!」

 人族の、弟子らしき人物が、怒鳴り返す。

 二人が向き合って打っている物を一瞥(いちべつ)したアルフが、

「朝打ったものを、取りに来ました。」

「おう、分かった。

 素人さんが、あちこち触らねぇように気をつけな!」

 視線は手元に集中したまま、どうやってギルガたちの存在に気がついたものか。

 アルフは親方に向かって頷くような仕草をすると、さらに奥に向かっていく。

「おお・・・」

「すご~い!」

 長剣、短剣、戦斧(せんぷ)、長弓、石弓、長方盾、丸盾、鉄鎧、兜、長槍・・・などなど。

 まだ木枠しか組まれていない盾から、見事に研ぎ上げられた長剣まで、様々な武具が棚に並べられている。

 その一角で足を止めたアルフが、無造作に盾を取り上げると、ギルガに差し出した。

「これを、使ってみてください。」

「えっ?」

「リーリアさんには、こちらを。」

 リーリアに引き渡されたのは、ズシリとした重みのある杖だった。

「これを、僕らに?」

「ええ。

 とりあえず、長さや重さは、お二人に合わせて調整してます。

 まぁ、最初は重さに振り回されてしまうかもしれませんが、早く慣れてください。

 ある程度扱いに習熟したら、お二人の好みに合わせて、再調整します。

 報酬についてですが、調整の終わった盾と杖は、お二人にお渡しします。

 お渡しした後は、そのまま使い続けても、売り払ってもかまいません。

 それから、日当としては、大銀貨五枚になります。

 前金としていくらかお渡しすることもできますが、どうしますか?」

「どうしますって・・・」

「日当が少ないというのであれば、増額しても構いませんが・・・

 あ、そうそう。

 盾と杖が仕上がるまでの宿は、こちらで用意しています。

 朝晩食事付きで、費用はこちら持ちです。」

「あの・・・」

 黙って聞いていたリーリアが、口を開く。

「こんなにしていただいて、本当にありがたいことなんですが、アルフさんは、わたしたちに、何をお望みなんでしょうか?」

「何を?って、今説明した通りですが。」

「でも、それじゃ、アルフさんが得るものは?」

「そうです。

 せっかく作った武具まで引き渡したんでは、君が損するばかりじゃないのかい?」

「ああ、なるほど。

 本当に、欲のない人たちだ。」

 アルフは、心からの笑みを浮かべて、

「職人にとって、一番大事なことって、何だと思いますか?」

「えっ?」

「お金・・・ではないんですよね?」

 ギルガの言いように、アルフは軽く頷くと、

「まぁ、そういう類の職人もいるので、あながち見当違いということもないんですが、少なくとも俺は、技術が一番だと思ってます。」

「技術?」

「使い手に信頼される武具、極限の状況でも本当に頼りになる武具を、俺は鍛えたい。」

「しかし、何もそれは、僕たちでなくても・・・」

 同じことを思ったリーリアとギルガが、顔を見合わせる。

 するとアルフは、軽く肩をすくめて見せて、

「剣や弓、槍や鎧の使い手は多いんですけど、盾と杖は、あまり需要がなくて、困ってたんですよ。

 それに・・・」

 目前の二人の顔を見比べるようにして、

「正直、お二人の腕前は未知数ですが、面白くないですか?

 未知の高みを目指すということは。」

 愉快(ゆかい)で仕方ないという表情をするアルフに、それを拒否することなどできないギルガとリーリアだった。

厳しい鍛錬の中で、ギルガとリーリアは能力を高めてゆくが・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ