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鉄壁のギルガⅠ ~リンゴール戦記Ⅱ~  作者: 金剛マエストロ
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03 新たな依頼

予期せぬ報酬、そして新たな依頼がギルガを待ち受ける。

(これが、正式な認識票か・・・)

 打ち抜きではない、鋳造(ちゅうぞう)の金属板に、名前と等級、そして仮認識票から引き継いだらしい、文字と数字が混ざった並びが刻印されている認識票を、ギルガはしげしげと眺めていた。

「初回は無料ですが、再発行の場合は大銀貨五枚と、お時間を少々いただいてます。

 それから、今回の依頼の報酬がこちらです。」

「・・・えっ?」

「今回の依頼は商隊からのものでしたが、山賊団の襲撃により、依頼者も、依頼を受けた中級冒険者パーティも全滅し、生き延びたのは護衛補佐のお二人だけです。

 したがって、護衛補佐の依頼での報酬はありません。

 しかし、商隊の運んでいた積荷は無傷ですし、馬車も馬も、目だった損害はありませんでした。

 冒険者組合の規程により、一年以内に商隊の方のお身内からの請求がありましたら、その方に対して馬車と馬と積荷の売却相当額を支払うことになります。

 しかし、誰も名乗り出なかった場合には、組合の手数料を差し引いて、護衛補佐のお二人で折半となります。

 それから、捕縛(ほばく)された山賊団に対しては、商工組合から賞金がかけられていました。

 山賊団全体に対して、討伐報酬が大金貨四枚、生け捕りできた場合は一人につき小金貨四枚とのことですので、二十人分の大金貨八枚が追加となり、合計で大金貨十二枚になります。

 アルフさんからは、お三方で等分との指示がありましたので、ギルガさんの割り当ては大金貨四枚、つまり小金貨四十枚ということになります。」

 ギルガの目前には、小金貨十枚の山が四つ積み上げられている。

 ちなみに、大金貨は普通の買い物に使うには高額すぎるので、組合で支払われるのは小金貨が最高額の単位ということになっていた。

「いや、しかし・・・」

「詳細については、アルフさんからまとめて報告済みです。

 山賊団の方たちの身柄は確保されてますし、報告の内容には矛盾点などありませんでしたから、もしも報酬額が不服と言うのであれば、他のお二方とご相談願います・・・って、言ってるそばからいらっしゃってましたね。」

 女性職員の視線が、ギルガの背後に向けられている。

「どうも。」

 と、アルフが右手を上げた。

「朝食はもう、終わってますか?」

「え?

 いいえ。」

「色気のない相手で申し訳ありませんが、一緒にどうです?」

 所持金が心細かったので、そういえば朝食を抜いて組合に来ていたことを、ギルガは思い出した。

 しかし今は、期待していなかった報酬を得て、懐は温かい。

 事情も聞きたかったし、断る理由などなかった。

「あ、はい、そうしましょう。」

 いそいそと金貨を懐にしまいこむと、アルフの誘うままに、ギルガは組合を後にした。




 冒険者組合からほど近く、安くて(うま)いと評判の食堂の中に、アルフとギルガ、そしてリーリアの姿があった。

 三人とも朝食抜きだったようで、ほとんど無言のまま、食事は進む。

「・・・で、どういうことなんです?」

 人心地(ひとごこち)付いたところで切り出すギルガに、

「ここにいる三人が生き残り、山賊団はすべて捕らえました。

 得られた報酬を三等分することに、何か不都合でもありますか?」

 そう言って、スープの残りを飲み込むアルフに、

「正直言って、貧乏教会にはありがたい話です。」

 こちらも落ち着いた口調のリーリアが、口を開く。

 年の頃はと言うと、ギルガと同じくらい。

 つまり、この三人の中ではアルフが最年少という事になる。

「でも、わたしは樽の中に隠れていたので、お役にたっていません。

 それなのに・・・」

 懐から、中身の詰まった皮袋を取り出すリーリア。

 小金貨四十枚と言うことは、四人家族が三ヶ月は遊んで暮らせる金額だ。

 駆け出し冒険者が、たった一度の依頼をこなして受け取る報酬としては、破格過ぎた。

「それは、僕も同じことです。

 見張りの役目も果たせず、仲間を・・・」

 (うつむ)くギルガと、その姿を心痛の面持(おもも)ちで見つめるリーリア。

 そんな二人を見比べるようにしていたアルフは、穏やかな笑みを浮かべて、

「なるほど、俺の目利(めき)きは外れてはいないようです。」

「?」

 不徳要領(ふとくようりょう)という表情をするギルガとリーリアに、

「そんなお二人を見込んで、お願いがあります。

 山賊退治の報酬は、まぁ、その前金と言うことで。

 もちろん、依頼を受けるか否かは、そちらの判断にお任せします。

 お互いに、損はない取引だと考えてはいますけどね。」

 アルフの言葉に、視線を交し合う、ギルガとリーリア。

「法に触れるような依頼であればお断りしますが、君がそんなことをするような人間には見えないし、まずはとにかく話を聞こう。」

「リーリアさんは?」

「わたしが、何か人さまのお役にたてるのであれば。」

「それじゃ、すぐに行きましょう。」

 アルフは女給を呼び、全員分の食事代を支払った。

「これも前金ってことですか?」

「そう思っていただいて、構いませんよ。」

鍛冶工房に向かった三人は、依頼の内容を話し合うが・・・

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