序
拙作、『デラとアルフのドラゴン退治 ~リンゴール戦記Ⅰ~』の、裏話的物語の一つ目です。
本作は、駆け出し冒険者のギルガの行動を追いながら、リンゴール戦記の世界を、眺めていきたいと思います。
全十二回で、毎日昼頃更新の予定です。
誰にでも夢はある。
しかし、一歩踏み出す勇気がなければ、夢は幻にすぎない。
強くなりたい。
賞賛を浴びたい。
いい女を娶りたい。
一国一城の主になりたい。
男なら誰しもが抱く、そんな願い。
とは言え、人は産まれた時から平等ではない。
腕力の優れた者。
資産を有している者。
地位を確立している者。
そして、何も持たない者は、冒険者となる。
いわゆる冒険者の半分が、登録初年度のうちに、命を落とすと言われている。
残り半分が、その後二年以内にいなくなる。
それから五年後、生き延びた半分のうち、引退するまで冒険者として活動できるものは、さらに残りの半分に満たないと言われている。
都合、駆け出しの冒険者の九割以上が、不本意な最期を遂げることになる。
冒険に危険は付き物・・・とは、良く言われることではあるけれども、詰まるところ、冒険者と呼ばれる者たちは、本来持っているはずの能力をほとんど生かせていない。
体力においても、魔力においても、それを十全に発揮するためには、鍛錬と、道具と、経験が必要だ。
駆け出しの冒険者たちは、志と野望は人一倍大きいものの、鍛錬が足りず、十分な道具も持たず、圧倒的に経験が足りない上に、素の能力も低いまま敵に挑み、そして、若い命を散らすのだ。
冒険者組合に登録に来たギルガは、初めての依頼を受けるが・・・