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ストーカー退治

「――痺れろ、ランスボルト!」


 雷が落ちたような衝撃が、辺りを襲った。

 ばちばちと辺りに飛び散る、青白い閃光。その光が収まる頃には、魔物たちは、ぷかぁと水面に浮かんでいた。

 魔物たちは気絶したらしい。

 ラヴリアを守ったのか……? ストーカーが……?

 いや、それより気になるのは。


「おい。とどめを刺すのを手伝え、ノロリッシュ」


「ノロアです……って、やっぱりセインさんですよね?」


「あ、いつもの人だ」


 我に返ったラヴリアが、セインさんを指差す。


「いつもの人?」


「魔物に襲われてると、いつもタイミングよく出てきて助けてくれるの」


「あ……」


 そういえば、ラヴリアは以前言ってたな。いつも審問官の人がたまたま魔物から助けてくれる、と。

 その審問官というのが、セインさんのことだったのか。


「お礼を言おうとすると、なんかすぐに逃げちゃうし、なんでいつも居合わせるのかなって不思議だったんだけど……ラヴ、わかっちゃった♪」


 ラヴリアがすっきりしたような笑顔で、ばびゅんっと指で鉄砲の形を作る。


「あなたがストーカーさんだったんだね♪」


「ま、待ってくれ。話を聞いてくれ」


 セインさんがあたふたと弁解する。


「俺はストーカーじゃない! 俺はただ、君を守りたかっただけなんだ」


「守る……? もしかして、セインさんも護衛任務を?」


「いや、ラヴたんを守るのは、ラヴリストとして当然の務めだろ」


 セインさんが、すっと審問官の制服を脱ぐ。

 その下から現れたのは、“ラヴたん命”とプリントされたシャツ。

 ――ラヴTだった。

 あ、うん……ストーカーだ、これ。


「つまり、セインさんは……常日頃から自発的にラヴリアを尾行していたと?」


「当然だ」


『よし、通報しましょ』


「よ、よせ! 俺はストーカーじゃない! ラヴたんの騎士だ! 俺にはラヴたんを守る使命があるッ!」


 使命感がひしひしと伝わってくる声だった。

 僕はその声を聞いて、うんと頷く。


「よし、通報しよう」


「なぜだ」


「ストーカーなので」


「お前はラヴたんの護衛をしてるのに、俺はダメだというのか!? 不公平だぞ!」


「そう言われても」


「そもそも、なぜ俺が護衛じゃないんだ! 俺のほうがラヴたんのことをよく知っているのに! ラヴたんの歌なら全曲そらで歌える! 身長も体重も座高もスリーサイズも全て頭に入ってる! ラヴたんの聖都に入ってからの食事内容も全て把握してる! それなのに……なぜなんだ!」


「ストーカーだからでは?」


『なんか、アイドルの彼氏ヅラしてるファンみたいでキモいわ……』


「ぐっ……かくなる上は……! お前を倒して、俺が護衛となる!」


 セインさんが襲いかかってきた。

 しかし、冷静さを欠いたランスボルトなど当たらない。


「当て身」


「ひぎぃ!?」


 地面に伸びるセインさん。


「とりあえず、ストーカーは退治できたってことでいいのかな……?」


『それじゃ、お祝い会やりましょ! もちろん、お金はストーカー持ちで』


「いいね、ラブリー♪」


 きゃぴきゃぴとはしゃぐラヴリアとジュジュ。

 しかし……セインさんは一応、ラヴリアを守っている立場だったのか。

 となると、“呪い持ち”とは関係がなさそうだな。いや、ラヴリアの好感度を稼ぐためのマッチポンプという線もあるにはあるけど。


「セインさん」


「……なんだ」


 膝を抱えているセインさんの肩に手を置く。


「一応、確認しますが、“呪い持ち”と関わってたりしないですよね?」


「俺が“呪い持ち”と……? 馬鹿にしてるのか?」


「いや、馬鹿にはしてますよ?」


「そもそも、俺にそんなことをする動機はないだろ」


「ほら、ラヴリアにいいところを見せようとして協力したとか」


「そんなことはしな………………はっ、その手が……」


「そこで、なにかを閃かないでください」


「まあ、安心しろ。俺がラヴたんを危険な目にさらすわけがない」


「はぁ」


 たしかミィモさんが言うには、セインさんの行動原理は“英雄願望”だったか。とすると、ラヴリアの騎士を自称しているのも、英雄っぽく振る舞いたいからだろう。

 もともと正義感は強いと聞くし、ラヴリアを守ろうとしていたという言葉も、一応信じてもいいのかもしれない。

 実際にそのおかげで、ラヴリアは助かっていたわけだし。


「しかし、犯人はなぜラヴたんを狙うんだろうな。考えられるとすれば……『理性を失ったラヴリストが、ラヴたんを殺すことで“永遠の美少女”にしようとしている』といったところだが」


「…………」


「……いや、なぜそんな目で俺を見る。俺じゃないぞ。俺がそう考えてるわけじゃない」


「いや、そんな発想がすぐに出る時点で怖いんですが」


 一応、要注意人物として、ミィモさんに報告しておこう。


「まあ、セインさんが敵の一味じゃないのはわかりました。とりあえず、ラヴリアは僕がちゃんと護衛しますので、セインさんは安心してストーカーから足を洗ってください」


「だから、ストーカーじゃないと言ってるだろ! そもそも……」


 と、セインさんがいきり立ったように睨んできた。


「貴様は、全然ラヴたんの護衛を果たせてないじゃないか!」


「え? ラヴリアが外出するときは、いつも一緒にいるようにしてますが」


「そんなことはない! ラヴたんは今でも、よく1人で出歩いてるぞ!」


「……え?」


「護衛なら、しっかりラヴたんを守れ! 貴様がふがいないから、俺が代わりに護衛をしなければならなかったわけで……って聞いているのか!?」


「…………」


 ラヴリアが1人で出歩いている、か。

 彼女もさすがに、その危険性には気づいているはずだ。

 だとすれば……僕たちに隠れて、なにかをしているということか……?

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