表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/113

水中

「……ぼごっ」


 水の中に沈んでいく。

 勢いよく水に叩きつけられた衝撃で、肺の中の空気が泡となって出ていく。

 すぐに地上に戻ろうとするが……ダメだ。水面がどんどんと影で覆われていく。なにかで蓋をされているのか。


 まずい、息ができない。暗くてなにも見えない。苦しい。

 迂闊だった。もっと警戒するべきだった。敵から近づいてくるんだから、なにかしらの対応策があると考えるべきだった。

 そして、またしてもラヴリアを無防備な状況にしてしまった。


 早く戻らないと……そう、焦燥感が膨れ上がるが。

 そういえば、深い水に入るのは初めてだ。もちろん、泳いだこともない。まともに動くことすらできない。

 というか、え……? 水の中って、自動的に浮くものじゃないの? 船とかすごい浮いてるじゃん。おかしいな、沈む一方なんだけど。


「……!」


 さらに、悪いことは重なるものなのか。

 黒い影のようなものが、こちらに迫ってくるのが見えた。シルエットだけでもわかる――あれはシーサーペントか?

 まずい、水中ではまともに戦うことはできない。少しパニックになりかけていると。


『……ぼろろろっ! ……おろろろろろろろっ!』


 ジュジュが僕の頬をぺちぺち叩いてきた。なぜか、上のほうを指差している。その指の先に視線を向けてみると。


「……っ」


 ――光。

 水面の一部がきらきらと光っている……脱出口だ。

 それを見て、少し冷静を取り戻せた。

 僕はジュジュに向かって頷き、スライムシールドを膨らめて浮き輪代わりにする。それから魔物から逃げるように、急いで光のほうへと向かう。

 はたして、脱出口はたしかにあった。

 しかし。


「……っ……っ」


 透明な障壁に阻まれて、脱出口までたどり着けない。

 ……これは、結界か?

 目を凝らしてみると、うっすらと四角い氷のようなものが、いくつも積まれているのが見えた。

 おそらく、聖都の土台に結界が使われているんだろう。

 これが聖都が浮いている理由か。このタイミングじゃなければ、もっと感心していたと思うけど。


「……ぅぶっ」


 ダメだ。結界の間にも隙間があるが、人が通り抜けられるほどのスペースがない。

 試しにスライムソードで斬ってみるが、結界はびくともしない。

 もう息が持たない。意識が遠のいていく。

 そうこうしているうちにも、魔物がすぐ目の前まで迫ってくる。

 牙だらけの口を大きく開けて、僕を飲み込もうとし――。


「……?」


 ふと、そこで。

 どこからか、不思議な笛の音色が響いてきた……。



   *



 マーズが去ったあと、ラヴリアは道の真ん中でへたり込んでいた。

 ノロアが水路に落とされてから、もう数分は経っている。

 この間に、彼を助けようといろいろ試してはみたが……どれもダメだった。

 水路の上には建物や道がぴったりと敷きつめられ、完全に蓋をされている。わずかに空いた隙間も、人が通り抜けられるほどの広さもない。

 どんな強者だろうと確実に殺すための罠だ。


「…………ああ」


 自分なんかのせいで誰かを不幸にしてしまった。

 自分なんかを守ろうとしなければ、こんなところで死ぬような人じゃなかった。

 誰よりも強くて、みんなから愛されるような人だった。


「……どうして」


 視界がぼやけていく。

 どうして、いつもこうなってしまうのだろう。


「……ごめ……ごめんなさい……」


 そう、謝罪の言葉を口にしたとき。

 ふと……そのぼやけた視界の中、それを捉えた。

 小さな影だ。突然、水路上の隙間から飛び出してきたそれは――牙だらけの口をがばっと開けて、ラヴリアへと踊りかかってくる。


「…………え」


 ――魔物の襲撃だ。

 それに気づいても、ラヴリアの体は金縛りにあったように動かなかった。

 完全に警戒を解いていた。

 そして、突進してくる魔物になすすべもなく――。


「……え、あれ?」


 ぽすり、と。

 魔物がラヴリアの胸の中に収まる。

 魔物は大きく口を開けると、そこから……。


「うわっ!?」


『ぷぎゅっ』


「んんん~~!?」


 なぜか、ノロアとジュジュが飛び出してきた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『世界最強の魔女』8/7、漫画9巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『ラスボス、やめてみた』7/7、漫画7巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『時魔術士』漫画3巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『レベルアップ』漫画5巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『装備枠ゼロの最強剣士』漫画7巻発売!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

漫画ページはこちら↓
i595023
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ