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装備枠ゼロの最強剣士 でも、呪いの装備(可愛い)なら9999個つけ放題(Web版)  作者: 坂木持丸
聖都編 第3章 姫の護衛

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黒幕からの接触

「……ほぅ、見事だ。ノロア・レータ」


 いつの間にか、人気ひとけのない路地の奥に、陰気な男が立っていた。

 フードの影に隠れた顔には、片眼鏡のレンズの光だけが見て取れる。

 手には1冊の本を開いて持ち、そのページ上には――仕掛け絵本のように浮かび上がる、街のパノラマ模型のようなもの……。


『な、なんて、怪しさMAXなやつなの!?』


「うん……申し訳ないけど、それ僕も思った」


 不審者やるにしても、もうちょっと普通の格好したほうが目立たなくていいと思う。目立たないファッションのなんたるかを1からレクチャーしてあげたくなる。だけど、今はそんなことしている場合じゃないか。

 僕はとっさにラヴリアを後ろにかばった。


「……あなたは誰ですか? ラヴリアに魔物をけしかけたのは、あなたですか?」


「……答える義理はない」


『はぁ? 初対面なんだから自己紹介するのが常識だと思うんですけど?』


「……お前たちに名乗る義理はない」


『じゃあ、“メガネビーム”って呼ぶわ』


「…………え?」


「なになに、ビーム出るの? なにそれ、ラブリー♪」


「…………え、いや」


『ほら、一発ビーム出してみなさいよ! ほら、ビーム! ビーム!』


「ビーム♪ ビーム♪」


「…………マーズだ」


 すごい複雑そうな顔で名乗ってくれた。ちょっと申し訳ない気分になる。


「それで……僕たちになんの用ですか」


 十中八九、このマーズという男は、呪災の犯人だ。

 彼が手にしている本は、その可愛さを見るに呪いの装備で間違いないだろうし。

 とすると、わざわざ自分から顔を出す理由がわからない。


「……ノロア・レータ……貴様が危険だと判断した」


 マーズがぼそぼそと語りだす。


「……貴様の動きは見させてもらったが、他の審問官とは明らかに違う。魔物との戦闘に慣れているというのもそうだが、戦闘力がまず桁違いだ。それもそのはず、調べてみればSランク冒険者という話ではないか……」


『ちょっと、声が小さくて聞き取りづらいんですけど! なに、聴力検査なの!? 聴力を試されてるの、わたくしたち!?』


「しっ! 君の声でさらに聞こえなくなるから」


「つまり……貴様の存在が、俺の計画に支障をきたしかねないのだ……っ」


 心なしか声が大きくなった。

 気を遣わせてしまったみたいで本当に申し訳ない。


「計画に支障……というと、僕を排除する気ですか」


「……そう身構えるな。俺は話し合いに来ただけだ」


「……“この通りにいる、嘘つき”を示せ」


 念のため確認してみるが、羅針眼は反応しない。

 話し合いに来ただけ、というのは本当か。

 ただ……マーズが手にしている本は、おそらく呪いの装備。こちらが下手に動けば、すぐにでも攻撃してくるはずだ。

 背後にラヴリアがいる以上、まずは話を聞くしかないだろう。


「……俺の要求はただ1つ。お前には、この呪災から手を引いてもらいたい」


「ラヴリアを見捨てろと? そんなこと……」


「噂に聞くところでは、お前は装備に目がないらしいが……俺たちの組織は、限定装備でも、違法装備でも、呪いの装備でも、なんでも用意することができるぞ?」


「……!」


 限定装備に、違法装備に、呪いの装備だと……?

 くっ、なんて甘い誘惑なんだ。

 たしかに、ラヴリアも僕が護衛するのを嫌がってるし、そもそも今回の呪災に首を突っ込んだ理由も、呪いの装備が欲しかったからというのも大きいわけで……。

 いやでも、ラヴリアになにかがあれば寝覚めが悪い。

 ラヴリアはシルルの友達だし、こうして知り合った人間を見殺しにはできない。

 だから。


「残念だけど、僕はそんな誘惑には乗らないッ!」


『一見勇ましいけど、30秒は悩んでたわよね?』


「即答してくれたら、ラヴ的にもカッコいいかもって思ったのに……」


 すごいジト目で見られる。


「……期待はしていなかったが、やはり交渉決裂か。できれば平和裏に解決したかったのだが」


 マーズが疲れたように溜息をついた。


「では、せいぜい……その選択を悔いるがいい」


 そう言い捨てて、くるりと踵を返す。


『あ、尻尾を巻いて逃げる気よ!』


「逃がすか!」


 慌てて追いかける。

 マーズの呪いの装備は、魔物を操る類のものだ。だが、羅針眼で確認してみるが、すぐ近くに魔物はいない。

 これなら――短期決戦で終わらせられる。


「ジュジュ、針だ」


『久々の出番ね!』


 僕の手の中に、光の針が現れる。

 他人の呪いの装備を奪い取るための針だ。

 僕はマーズに接近し、ジュジュの心臓にその針を突き刺そうとして――。



「――書き換え(リライト)



「…………え?」


 彼がページ上の模型を指で動かすと、いきなり眼前の景色が変わった。

 前にあったはずの道が――横へスライドする。

 想定外の出来事に、とっさに対応できない。

 足場がなくなり、がくっ、と浮遊感。

 しまった、と思った頃には、もう遅く……。


「――ノーくん!?」


 とっさに手を伸ばしてくるラヴリア。

 しかし、その手が僕に触れることはなく。

 気づけば、僕は水路の中へと落下していた。

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