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装備枠ゼロの最強剣士 でも、呪いの装備(可愛い)なら9999個つけ放題(Web版)  作者: 坂木持丸
墓庭編 第5章 慰霊祭

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祭りの始まり

マンガUP!様にてコミカライズ版が連載中です!

そちらもよろしくお願いします!

……といっても、コミカライズ版から流れてきた方のほうが多いんですかね、今……?

 ――慰霊祭当日。

 普段は気怠げなレイヴンヤードの街も、この日ばかりは活力にあふれているようだった。

 街には花びらや紙吹雪が舞い、いつもより華やかな装いを見せている。

 市民たちは仮装して、飲めや歌えやの大騒ぎ。

 歌に、踊りに、大市に、パレード……。

 この街一番の祭りというだけあって、やっぱすごい活気だな。

 前夜祭もすごいと思ったけど、それを余裕で上回ってきた。


『ついに、祭りの日が来たわ!』


「どんどん!」「……ぱふぱふ」


 そして、ここにもテンションの高い一団が。

 ジュジュはあいかわらず腰鞄の中だけど、祭りのときは声も目立たないし、騒ぐことぐらいはOKにしてあげた。


『目指すは、屋台制覇よ!』


「せいはー!」「……制覇します」


『今日はわたくしのおごりよ! ぞんぶんに感謝するがいいわ!』


「おごるって、どうせ僕がお金出すんでしょ」


『ちっちっち、甘いわね』


「え?」


『今日のわたくしはプチリッチなの! 昨日、双子とギャンブルして巻き上げたから!』


「没収」


『あっ、ちょっと! なにするのよ! 返しなさいよ!』


 じたばたするジュジュを腰鞄に押し込め、スイとラムにお金をわたす。

 祭りの日ということもあって、少し色をつけて。


「お小遣い!?」「……臨時ボーナスです」


『ひどいわ! ノロアのバカ! この外道!』


「……わかったよ」


 ジュジュが泣きそうになってきたので、こちらにもお小遣いをあげる。あまり甘やかしたくないけど、今日だけは特別サービスということで。


「でも、本当にすごいですね! これが、お祭り……!」


 シルルも目を輝かせる。よっぽどうれしいのか、ぴょんぴょんと全身で喜びを表現していた。


「私、お祭りを回るのって初めてなんです!」


「え、サンプールって祭りとか多いよね」


 シルルの故郷は、宗教都市サンプール。

 宗教関連のイベントには事欠かないし、けっこう盛大にやっていたはず。

 シルルは、「あー……」と暗い声を出して。


「いつも主催者側でしたので、お祭り=お仕事という感じでした。子供のときも聖歌隊でひたすら歌ってた思い出しか……」


『ぷっ、灰色の青春乙』


「シル姉の青春って灰色なの?」「……リア充かと思いました」


「……あぁぁぁぁあぁぁ」


「人のトラウマスイッチは押さないであげて」


 まあ、シルルも悩み多き年頃のようだ。


「うぅ……エムド伯領にいるときも、夏至祭楽しみにしてたのに自粛になってしまいましたし」


「ああ、暴食鞄ミミちゃんが暴走したしね……」


「それで今回! ようやく、お祭りを回れるんです! なんとしてでも楽しまなければ……!」


「そ、そこまで力まなくても」


 シルルの目の輝きが、キラキラからギラギラになっていく。


『ていうか、ノロアも祭りとか出るタイプじゃないわよね』


「僕? まあ、祭りの日は部屋に閉じこもってたかな」


 人混みとか嫌いだし、騒がしいのも好きじゃない。


「そもそも祭りって、知り合いとか友達とかいないと楽しくないよね。ぼっちが祭りに出て、なにを楽しめと? 孤独なグルメツアーとか?」


『……なんか、聞いてごめん』


「謝られると、余計に惨めになるんだけど」


 よく考えたら、僕もシルルのこと言えないな……まともに祭りを回るのは今回が初めてかも。


『まあいいわ! とっとと回りましょ!』


「そうだね」


『むぎゅ』


 さりげなく腰鞄から出ようとしたジュジュの頭を抑えながら、僕は歩きだす。

 通りには、大勢の人が所狭しと行き交っていた。

 いつもより装いを凝らした人々に、外からやってきたらしい人々。時期的に収穫祭とも重なるのか、農民たちの姿も多い。この街に収容できるのか疑問になるような数の人が、往来を闊歩している。

 ……焼菓子と、化粧と、汗の匂い。

 祭りの賑やかさは、いつも妙な疎外感を与えてくるのだが。

 今日は、どこか違った。

 僕もそれなりに浮かれているのかもしれない。


 しかし、心配事がないわけでもない。


「……あ」


 ふと、と頭上を見ると。

 今日もひらひらと紅い蝶が舞っていた。

 頭上から、人々を俯瞰するように……。


「……蝶か」


 血蝶の使い手――蟲使いについては、今のところ正体がつかめていない。

 昨晩、羅針眼ラ・シンガンを使って探してはみたんだけど、相手がこちらの動きを察知したように、ひらりひらりと逃げてしまうのだ。ただでなくても人が多くなっている祭りの最中ということもあり、相手のいる方角だけわかっても仕方ない。捜索はあきらめざるをえなかった。


「今日くらいは……なにもしてこなければ、いいんだけど」


 いまだに蟲使いのほうを指している左目の針。

 それを見ながら、溜息をつく。


「どうかしましたか?」


「いや……」


『ちょっと、いきなりテンション低くない? うぇーい、の一つも言ったらどうなの?』


「それは言わないけど」


 僕は深呼吸をし、胸の中にあるもやもやを換気する。

 祭りだというのに、ずっと暗い顔をしているわけにもいかない。

 今日は、慰霊祭を楽しもう。



   *



 それから、僕たちは屋台巡りを始めた。

 レイヴンヤードは交易ルートが豊富なため、あちらこちらで異国情緒あふれる珍味や珍品を見ることができる。ぶらぶらと歩いて屋台をのぞくだけでも、充分に楽しむことができた。


『ポップコーンおいしい! ごくごくごくごく!』


「スイ、そっちの分けてー」「……拒否します」


「……っ……っ」


 みんな食料を両手いっぱいに抱えながら、満足そうに頬を膨らめていた。

 シルルだけは無言で、もきゅもきゅと食べ物を頬張っているが。

 今まで薄味の教会食ばかり食べてきた反動か、シルルはだいぶグルメになっていた。刺激を求めているのか、新たな味覚の開拓に余念がないといったご様子。

 まあでも……だんだんフードファイターみたいになってきたな。大丈夫だろうか。


「あるじー、あっちにお菓子ある!」「……実に興味深いです」


「ああ、お小遣いあげるから買ってきな」


「んー!」「……了解しました」


 スイとラムが手をつないで、ぱたぱたと屋台のほうへ走っていく。


『ノロアー、あっちにお菓子ある!』


「そう、よかったね」


『……なんか、扱い違くない? もしかして、わたくし差別されてる?』


「うん」


 だって、日頃の行いが悪すぎるし。

 と、そこで、ふいに背中をつつかれた。

 双子がもう戻ってきたのかと思って、振り返ると。


「……き、奇遇だね」


 そこには、リッカ先輩がいた。

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