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装備枠ゼロの最強剣士 でも、呪いの装備(可愛い)なら9999個つけ放題(Web版)  作者: 坂木持丸
墓庭編 第1章 装備狩りと略奪者

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さすノロです!

「そういえば、“お仕事”のほうはどうでした?」


 食後。

 皿洗いや湯浴みも済み、スイとラムも寝かせつけ、あとは寝るだけとなったところで。

 くしで髪を梳かしていたシルルが、思い出したように言った。

 というより、夕食時は気を使って聞かなかったのかもしれない。


「うーん……まあまあかな」


 声のボリュームを絞り、部屋の外の気配をうかがう。隣の住人に聞かれたい会話ではなかった。シルルが言う仕事とは……おそらく、“呪いの装備の収集”のことだろうから。


「うまくいかなかったのですか?」


「いや、呪いの装備の収集のほうはバッチリだったよ」


『でも、いつも通りランクはしょぼかったわ』


「いや、Sランクじゃ充分でしょ」


 最高ランクより2つ低いといっても、通常装備の限界ランクは超えているのだ。

 といっても……たしかに、この街にある呪いの装備のランクが低いのは確かだな。

 今日手に入れたのはSランクだったけど、今までにこの街で見かけたのは、どれもF~Dランクだった。

 もちろん低ランクの呪いの装備だって可愛いし、高ランクのものとは違って、緊張感のない身の丈にあったお付き合いができるわけだけど……実用性という面では、やっぱり今までの呪いの装備より劣ると言わざるをえない。

 その分、代償も軽いし、コレクションが増えたから万々歳ではあるんだけど。


「たぶん、神聖国ここでは高ランクのものが優先的に処分されてきたんだろうね。それで残ったのが、低ランクのものばかりって感じかな」


『ここにいても、雑魚いのしか手に入らないわけね。どれも毒にも薬にもならないし』


「まあでも、呪いの装備の収集だけが目的じゃないしね」


 もちろん、それがメインの目的の1つではある。

 この街――レイヴンヤードは、呪いの装備の処分場があるためか、呪いの装備の数も多い。この街にいれば収集も捗る。


 ただ、もう1つ、目的があるのだ。

 そもそも、ただ収集するだけなら、わざわざ規制が厳しい神聖国で収集する必要はないしね。

 じゃあ、その一番の目的はなにかというと。


 ――“彼女”ノコト、知ッテルヨ?

 ――大罪人サン、教エテホシイ?

 ――ダッタラ、ワタシノトコロヘオイデ?

 ――アナタノ全テヲ、教エテアゲルヨ?

 ――来タクナイッテ、言ワナイヨネ?

 ――ダッテ、ソシタラ死ンジャウモンネ?

 ――楽シイ楽シイ■■ゴッコ、終ワッチャウモンネ?


 先日、僕のもとに送られてきた謎の手紙。

 その手紙によると、手紙の送り主である“ドールマスター”に会わないと、僕は死ぬとのことだが……神聖国に入った今でも、その人物の手がかりすらつかめていない。

 ただの怪文書だったんじゃないか説もあるけど、そのわりには、こちらの事情に精通しているのが気になるし……無視するわけにもいかないだろう。


 というわけで、ドールマスターについて目下捜索中でもあるのだ……一応。

 ほとんど、呪いの装備の収集がメインになっているけども。


「あー……あっ、そういえば!」


 シルルが一段階、明るい声を出す。

 おそらく、暗くなりかけた空気を切り替えようとしたのだろう。


「ノロア様は“略奪者ファントム”の噂、知ってますか?」


「え……あー……」


「最近、街で噂の“謎のヒーロー”なんです! 夜のように黒いマントをまとい、月のように青白いカラスの仮面をつけて、悪い“呪い持ち”をやっつける! らしいです!」


「あ、うん」


 そういえば、シルルには伝えてなかった。

 だって……普通に恥ずかしいし。


「街では略奪者ファントムグッズが流行ってるんですよ! 略奪者ファントムまんじゅうとか、略奪者ファントムクッキーとか、略奪者ファントムジュースとか! 子供たちも、略奪者ファントムごっこに夢中で……」


「そ、そうなんだ。それで、その略奪者ファントムだけどさ」


「運動神経バツグン! 頭脳明晰! さらに、その仮面の下には、絶世の美男子の顔が隠されているそうです!」


「あ、うん。すごい」


 やめて……伝えるハードルどんどん高くするの、やめて……。


「かっこいいですね! 一度、見てみたいです!」


 シルルが童女のように目をキラキラさせる。

 なんだか、子供の夢を壊すようで申し訳ないが……さすがに、教えておかないわけにもいかないだろう。


「……たぶん、シルルはもう見てるんじゃないかな」


「えっ、まさか」


「そのまさかだ」


「肉屋のハンナおばさん(46)が!?」


「あ、うん。ごめん違った」


「え? でも、ハンナおばさん(46)は、夜な夜な、仮面をつけて繁華街にくり出すという噂が……」


「なにやってんだよ、46歳」


 仕方がない、と僕は肩を落とした。


「……略奪者ファントムは、僕のことだよ」


「へ?」


 シルルは本気で気づいてなかったのか、ぽかんとする。


「そっか……街では、そんなことになってるのか」


 あんま聞きたくなかった。なんか、変な汗が出てきたし。

 なるべく、こそこそ動いてたつもりだったんだけどな……。


「でも、ヒーローなんて、さすがノロア様です! さすノロです!」


「さすノロって」


 ジュジュの影響か? まあ、それはいいんだけど。


「いや、僕はヒーローなんてたいそうなものじゃないよ」


 僕が動いてるのは、ただの私利私欲のためだ。その行動で、結果的に助けられたと感じている人がいるだけで。こんな見知らぬ街を、わざわざ救おうだなんて思ってるわけじゃない。


「変に期待されても困るのにな。こっちとしては目立ちたくないし」


『閃いたわ! ノロアのサインを高値で売りましょ!』


「あっ! 握手会のチケットもセットでつければ……!」


『それだわ!』


「……実は仲いいよね、君たち」


 とにかく、目立つのはNGだ。

 呪いの装備を持っていれば、死しか問わず(デッド・オア・デッド)なのが神聖国という国。

 審問官相手に殺されることはないだろうけど、それでも素顔のまま指名手配されるのは避けたい。

 少なくとも、この国ではかなり動きにくくなるだろうし。いくら戦闘力があろうと、街に入れなくなれば生活に困るのだ。情報収集どころじゃなくなってしまう。


「身バレだけは、なんとしてでも避けないとね……」


『それって、フリ?』


「違うよ」


 僕は首を振ってから、ふわ、とあくびを一つ。


「そろそろ寝るよ。明日は早いし……」


 僕の活動時間は夜だけではない。

 昼には昼で、別の仕事が入っているのだ。

 遅刻なんてしたら、リッカ先輩(、、、、、)から大目玉を食らってしまう。


 僕は毛布にくるまり、壁にもたれかかるように腰を下ろした。

 冒険者としての性なのか、座っているほうが横になるよりリラックスできる。

 目を閉じて、呼吸のペースを落としていくと、すぐに睡魔がやってきて……。

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