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装備枠ゼロの最強剣士 でも、呪いの装備(可愛い)なら9999個つけ放題(Web版)  作者: 坂木持丸
墓庭編 第1章 装備狩りと略奪者

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悪いけど……僕の剣はSSSランクだ

「この刀刈鎌があれば、どんな装備も紙きれみたいに切り裂ける。どんな装備でもだ。もはや、審問官すら敵じゃない。この最強の武器に選ばれた俺に……勝てる者など、いない」


 そして、装備狩りは大鎌を構えると――前のめりに突進してきた。

 一気に間合いをつめ、大鎌を振り下ろす。

 狙いは、僕が手にした剣。

 その一撃必殺の刃が、僕の剣をとらえ――。


 ――微動だに、しなかった。


「は……?」


 数秒ほど遅れて、装備狩りが間の抜けた声を出した。

 呆然としたように彼の体が固まる。まあ、それも仕方ないだろう。自分が絶対の信頼を寄せていた大鎌を、小ぶりの剣があっさり受け止めているのだから。


「あー……その鎌、Sランクって言ったっけ?」


 ちょっと言いにくい空気だったから黙ってたけど。一応、教えておくか。


「悪いけど……僕の剣はSSSランクだ」


 Sランクでは、僕と戦うには少し力不足だ。

 僕が、ちょいっと剣を振ると。

 それだけで――がきんっ、と大鎌が弾き飛ばされる。


「え……」


 理解できないことの連続のためか、完全にフリーズする装備狩り。

 そんな彼に向かって、僕はさらに剣を振りかぶり――。


「当て身」


 剣の柄で、とんっ、と首筋を叩いた。


「え……あ……?」


 装備狩りが白目を剥いて……あっさりとノックダウン。

 そして、静寂が訪れる。


「あ、終わり?」


『ざっこ……』


 ジュジュが呆れたように言うが、僕も同じ感想だった。


「まあ、Sランクの武器じゃ、こんなものか」


 審問官が苦戦してるっていうから、少しは警戒してたんだけど。


「むしろ、これに苦戦するレベルなのか、審問官って……」


『完全に名前負けしてるわね』


「まあ、僕も苦戦はしたか」


『そう?』


「うん。手加減するのが大変だった」


 世界最強とされている聖剣の攻撃力が500なのに対して、僕の最高攻撃力は軽く3万オーバー。桁が2つも違う。ここまで強いと、軽く攻撃した余波《、、》だけで相手が爆発四散しかねないし、本気で攻撃しようものなら街の地図が変わってしまう。

 普通の剣のように使うには、けっこう繊細な力加減が求められるのだ。


「と、そうだ」


 僕は辺りに人がいないことを確認してから、仮面を外した。


「二人とも、お疲れ」


 僕がそうねぎらいの言葉をかけるなり。


「ゲームクリアー!」「……ミッションコンプリートです」


 仮面と剣がぽんっと膨らみ、双子の女の子の姿となる。

 スライムソードのラムと、スライムシールドのスイ。

 透明感のある水色の髪に、宝石みたいな水色の瞳、水色を基調としたワンピース……と、鏡写しにしたように、髪型から服装までそっくりな双子だ。

 唯一の違いはといえば。


「じゃあ、あれやるよぉ!」「……あれ?」


「二人合わせてー!」「……えっ」


「スラ!」「……イム」


「決まったぁ!」「……恥の多い生涯です」


 ……この二人の性格だろう。外見の違いのなさを中身の違いでカバーしたかのように、二人の性格は綺麗に正反対だった。こちらもある意味では、鏡写しといえるけど。


「あるじー、今日はラムがMVP?」「……笑止。スイのが活躍してました」


「えー、スイなんもしてないじゃん!」「……縁の下の力持ちという言葉があります」


「まあまあ、二人とも活躍してたから」


「にゅふふ……」「……ん」


 二人の頭を撫でると、ふにゃりと、とろけたような笑みを浮かべる。


『ねぇ、幼女キラー・ノロア』


「誰が、幼女キラーだ」


『さっさと呪いの装備を奪わなくていいの?』


「ああ、そうだね」


 べつに、僕は装備狩りを倒しにきたんじゃない。

 呪いの装備を奪い(、、)にきたのだ。

 地面に転がっている大鎌を見る。いかにも、死神が持っていそうな大鎌だ。柄や刃などいたるところに髑髏の装飾があしらわれ、なんだか悪っぽい印象を与えてくる。だけど、そこがいい。こういう装備こそデレたときのギャップがすごそうだし。結婚しても幸せな家庭を築けそうだ。

 Sランクとはいえ、やっぱり萌え度は高いな。SSSランクが可愛すぎるだけで、この大鎌もとりあえずナンパしたくなるぐらい可愛い。夜景の見えるレストランとかでデートしたい。


『……って、なに他の装備に、鼻の下伸ばしてるのよ』


「いてっ!」


 ジュジュに脇腹をつねられる。僕はごまかすように咳払いを一つ。


「じゃあ、早くやっちゃおうか」


 これからすることを、他人に見られるわけにはいかない。

 世界の理に反した、神をも冒涜する行為だから。


『よし、ばっちこいだわ!』


 ジュジュがふわりと浮かび上がり、愛する人の抱擁を待つように両腕を広げた。

 僕の手のひらに、ぽっと点火するように光の針が現れる。

 繊細でありながらも、荒々しく――。

 神々しくも、禍々しい――。

 そんな魔性と聖性が混じり合ったような……病的で、破滅的で、呪いのように美しい針だ。

 僕はその針を握りしめ、導かれるように。


 ――人形の心臓を、刺した。

廃人vsエンジョイ勢

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