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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
蛇の少女と未来街の幽霊魔導師
92/246

山頂奈落

今回から、投稿日を変更しようと思います。

予定では火金日曜日の3回投稿し、時間は午前11時を予定しております。


もし、上記の日にちに投下されなかった場合、次の投稿予定日の午前0時に投稿します。


例)火曜日に投稿されなかった→金曜日午前0時に投稿+午前11にも投稿。


という感じを予定しております。

「・・・危険エリアってここでいいんだよな?」

「う、うん。そのはずだけど……」


 ソラ達は、アンノーン達を追って山の奥にある第一級危険エリアまでやって来ていた。


 途中、コレットが落とされた下に川がある崖を発見し、当時の事をコレットは思い出した。


 あの時、必至に逃げたコレットは、騎馬隊の1人と出くわし、この崖から落とされたと話していた。


「皇国では、その騎馬隊の人に会えたのか?」

「ううん。探して見たけど、結局何処にも見当たらなかったよ」


 ソラがその騎馬隊の人に会えたのか尋ねてみるも、会っていないと、コレットは言った。


 その事で考えられるのは、もう既に、あの城にその騎馬隊の人はいなくなっている。ソラはそう結論づけていた。


 彼女は皇国のお姫様だ。いるとするならば、一言謝罪しなければ、おそらく打ち首ものだろう。それなのに、一向に姿を現さないということは、なんらかの理由でいなくなったと考えらのが妥当だろう。


 だが、その理由がわからなかった。


 急に静かになって、何かを考え始めたソラにコレットは頭に?を浮かべる。どうしたのと尋ねようと声をかけようとすると、


 ゴソゴソッ!


 コレットの方からかけていたバックから何かがゴソゴソッと動く音が聞こえた。


 コレットはその音の正体を確かめるべく、バックを開けて、中身を取り出そうとする。


 そして……。


「・・・イッテェ?!」


 バックの中からヒョイッと何かが飛び出して、勢いよくソラの頭に噛み付いた。


 ソラはその痛みに悶えながらも、その痛みの心当たりと、懐かしさを感じていた。


 頭を押さえて痛みに耐えていると、コレットがそれが何なのかに気づき、噛み付いているそれを掴むと、それは、渋々と言った感じでゆっくりと口を開けてソラの頭から離れた。


 頭から離れたのち、ソラはすぐにその噛み付いた正体を確認する。その正体は何かある毎にソラの頭を噛み付いて、異様に空気を読み、壊してしまう噛み付き人…カメ助であった。


「おいカメ助、久々に会うのにいきなり噛み付いてくるとはどうゆう了見だ?」

「かめ〜♪」

「そんな、『ああ、スッキリしました〜』なんて顔しても、許されると思うなよ!」

「アハハ……」


 本当に、色々な意味で空気を破壊してしまう亀であった。



 そんなこんなで、ソラはカメ助をコレットに預け、山の頂上付近にある第一級危険エリアにやってきたのはいいのだが……。


「どっかで道を間違えたっけ?」

「う、ううん。ここまで私が落ちた崖以外に立ち寄ったこと以外は、殆ど一本道だったから、ここで合っている筈だけど……」

「かめ〜……」


 ソラとコレットは何処かで道を誤ったのではないかと疑い、コレットの腕の中にいるカメ助も同様に不安がっている。


 何故なら……





「なんで、ここから先の道がないんだ?」





 真っ直ぐに山を登ってきた筈なのだが、危険エリア直前になって、突如道が無くなり、それどころか、山そのものが大きく削り取られていた。


 遥か遠くには頂上へ向かう為の道があり、そこから抉り取られる様に視界に見える範囲の山が無くなっていた。


 崖となっている山道の下を覗いてみると、かなり深く掘られているのか、光をも届かない奈落と化していた。


「下の方…何も見えないな」

「それだけ深く掘られてるってこと?」

「わからないけど…とにかく、石でも落として、どれくらい深いのか、確認してみるか」


 ソラはその場にあった適当な石を拾い、奈落となっている崖へ投げ捨てた。





 ・・・あれから数分は経ったが、一向に石が地面を跳ねる音が聞こえてこない。


「これは…途轍もなく深いな」

「どうする? 一度引き返してみる?」

「・・・そうだな。もしかすると、何処かに頂上に向かう為の道があるかもしれないしな」


 コレットの言う通り、向こうに向かう為の橋なんかがあるかもしれない。そう考えたソラは早々に引き返そうと来た道を引き返す。


『おいおい! もう引き返すのかよ?!』

「だから言ったではありませんか。早く出た方がいいのではありませんかと」


 すると突然、木の上から宙吊り状態のアンノーンが現れ、それに続いて、木の上から会った時と同じドレスを着ていたユニが舞い降りてくる。


「何だ、見てたのか」

「ここについてからですが」

『そんなことよりソラ。君、諦めるのが早すぎやしないか?』

「じゃあ何か。伝統芸的な紐なしバンジーでもすればよかったのか?」

『ああ、そうだ』

「できるか!」

「・・・それで、特訓で何をするんですか?」

「えっと…あれはいいのでしょうか」

「大丈夫よ。戯れてるだけだと思いますから」

「戯れてねぇよ!」


 まるでコントの様な事をしてるソラとアンノーンを放置して、コレットは蚊帳の外となったユニに、特訓の内容を確認する。


「は、はあ……。それでは、特訓の内容をお教えします。ではまず、御二人には、」

『おい、ソラ。君はまず、ここに立ってくれ』

「え、ああ、わかった。別に構わないよ」


 ユニが説明を始めようとすると、崖の前でアンノーンがソラに対してそこに立つ様に支持する。


 ソラも、教えてもらう立場ということで、疑問に思いつつもアンノーンの指示に従って言われた通りに崖の前に立つ。


「で? この後どうするんだ?」

『君、僕が渡したリボルバーは持ってるね』

「え? ああ、そりゃ持ってるが……」


 ソラはそう言って懐に締まって死守したリボルバーを取り出す。



 実はこの銃、密かにカンナが回収しようとしていた。


 何でもこの銃、古代人の天才が作った世界に一つしかない一品らしい。それをどうしてアンノーンが持っているのかわからないが、とにかく、カンナはそれをどうしても欲しがっていた。正直、いつもと目付きが違って少々やばかったので…全力で逃げました。


 カンナ、すごく早かったです……。

 最終手段として魔装とかいう魔導まで使ったのに追いつかれそうになったが、その日はどうにか逃げ切ることができたが、次の日からもしつこく追い回された。


 魔装まで使ってるのに追いつくって……。



 カンナの化け物加減を再確認したところで、現実に引き戻される。


 突然乾いた笑い声を出しているソラをコレットとユニは不気味に思いつつ、カメ助は何かを感じ取ったのか同情した様に息を漏らす。


『・・・何があったのかは深くは聞かないが、それがあるなら死ぬことはまずないだろう』


 アンノーンは突然俺の後ろに立つ。ソラは何事かと後ろを振り返ろうとすると、


『死にたくなければ、精々頭を使うんだな!』


 アンノーンがソラの背中を蹴り飛ばし、奈落の崖に落下させた。


 え? ・・・ああぁぁぁぁあ???!!!と奈落へ落下していくソラ。


 それを見て慌てて崖に駆け寄ったコレット。


 コレットは落下していくソラを見て、自分も奈落に降りようとするのをユニは慌てて止める。


「コレットちゃん! 落ち着いて!」

「でも、このままじゃソラが!」

「わかってる! だから、私に捕まって! あの子の後を追うわ!」


 ユニがそう言うと、コレットはしばらくユニを見た後、「お願いします!」っとユニの方に身を寄せた。


「・・・ッ!」

『フッ……』


 ユニは、ソラを突き落とした張本にであるアンノーンを睨み、コレットをしっかりと抱き締めて、崖へ飛び降りた。



 *



 ヤバイ…ヤバイヤバイ?!


 ソラは奈落へ落下しながら、そう思っていた。


 ソラの体は、奈落の底へ向かえば向かうほど、徐々にその速度は速くなっていき、風魔法を使っても、その勢いは全く収まることはなかった。


(どうする?! このまま地面に落下すれば、間違いなく肉塊だ!)


 ソラは焦りながらも、必死に思考を巡らせると、手に持っていたリボルバーのことを思い出す。


 そういえば、アンノーンが俺を突き落とす前に言ってたっけ…こいつがあれば死ぬことはないだろうって。


 それはおそらく、こいつのもう一つ機能・魔装を出来ることがそれ言い切れる理由だとしたら……。


「ッ! これで死んだら恨むからな!」


 ソラはリボルバーのバレルを外すと、下にあるスロットにクリアプレート差し込み、銃を振って銃を撃てるようにする。


 そして奈落の底向けてドパンッ!っと引き金を引いた。



 *



「クッソ! まさか、あんな所に()()()()()()がいるなんて!」


 そこはとある森。

 日の光すら通ることのない人族が暮らしている場所から遥か彼方にある暗黒の森。


 その森を命からがら逃げ帰った男がいた。


 その男の名はスコーピオン。十二星宮・第8星の名を持つ男だ。


 スコーピオンは、ソラが放った《ジャッジメント・ブレイザー》が直撃するも、自身が消滅する前に脱出し、どうにか生き延びることができた。


 だがそのダメージは大きく、自身の象徴であった筈の尻尾は完全に消滅し、左足と右腕ば、もう使えものにならない程ボロボロとなり、足を引きずりながら、木にもたれかかりながら進んでいた。


「伝えなければ……。チャリオットが、()()()()を得て締まったと!」


 スコーピオンが言うチャリオットが何者かはわからない。しかし、それを報告することは、叶わなかった。


 ジャラジャラジャラジャラッ、グサッ!


「カハッ!」


 それを阻むものがいたからである。


 まともにあることすらできないスコーピオンの心臓の位置に向けて、鎖がついた鎌が、スコーピオンの心臓をつらぬいている。スコーピオンの心臓に鎌をでな貫いた者は、ボロボロな服を着て、口のない奇妙な仮面を付けているⅣの姿であった。


「フォ、Ⅳ?! 貴様!貴様がなぜこんなとこに!」

「なぜって…決まっているでしょう。あなたを()()()()()()()()


 Ⅳは、スコーピオンに突き刺さった鎌を抜くために、側による。


「俺()は、()()()()()()()を、()()()()()()()()を絶対に許さない!例え、()()が許したとしても!」

「お、己! ()!」

「永遠の冥界に消え去れ!」


 そう言ってⅣはスコーピオンに突き刺さった鎌をスコーピオンから抜き去ると、そのまま振り上げて、


「《冥界斬首》!!」


 力いっぱい振りおろした。


 すると、振り下ろされた場所が鎌の斬撃で空間に亀裂が走り、凄まじい勢いで亀裂が広がった。


 その広がった亀裂には空間が光も何もない、暗黒の空間が広がっていた。


 スコーピオンは抵抗を見せるものの、その空間は凄まじい勢いでスコーピオンを取り込んでいく。そしてスコーピオンの限界を迎え、その亀裂にとりまれる。


 暗黒の中に放り出されたスコーピオンは、亀裂の外に向けて必死に手を伸ばすが…亀裂はすぐに扉を閉じ、すでにそこには何もなかったかのようにただ1人、佇んでいた。


「・・・これで気分が晴れたわけじゃないが…仇は、取ったぜ、()()……」



 *



 ドッシーンッ!


 勢いよく奈落へ底落下し、大量の砂埃が舞う。


 そして、その奈落に落下した者は……。


「う、うぅぅ……。た、助かったのか……。あの野郎、いつかしばく!」


 すぐに起き上がり、自分の状況を確認していた。



 ソラの体には、魔装の時に着ていた服装をしており、コートについた汚れをパタパタと落とす。


 汚れを落としながら周囲を確認するも、周囲は真っ暗で何も見えない。


 ヒュン!


 瞬間、ソラの頬の横を何が高速で通過して、頬からつーっと血が流れる。


 ソラはすぐに臨戦態勢をとるが、何かはそれ以降一度も襲ってくることはなかった。


「ソラ! 大丈夫!」


 その後、少し遅れてユニに抱きしめられながらコレットも、奈落の底へとやってきた。


「ソラ! 大丈夫?! 怪我…してる! すぐに治療を……」

「ま、待て待て! 俺のことは大丈夫だから、ちょっと落ち着け!」


 その後、荒れていたコレットを落ち着かせる時間を取り、ユニはそんなソラ達を見て、微笑んでいた。


『魔装ができるんだ。これぐらい、簡単に生き残ってもらわないとお話にならない』


 背後からそんな声が聞こえ、振り返ってみると、そこにはソラよりも大きな岩があり、その上に胡座をかいて座っているアンノーンの姿があった。


「アンノーン! あなた!」

『それじゃあ、次の特訓だ。この奈落で半年間、生き残ってみろ』

「話を聞きなさい! 今回はソラが魔装を展開しなければ、確実に死んでいたのよ。それについて何が言うことはないの?」

『僕はここに落とす前にヒントを出していた。それに気付かず死んでしまったら…所詮はその程度の奴って事だろ』


 ユニとアンノーンは互いに睨み合いながら、話を進めていく。


『それに、やらないならやらないで僕は構わないし、()()()()攻撃されるような奴がどうなろうと、僕の知った事じゃないからね』

「?!」


 その言葉にソラは反応した。


 頬の横を横切ったのが、もし攻撃だとすると、俺はもう狙われていた?!


 そう思うとソラの表情に焦りの色が現れる。


(魔装したこの状態が反応出来ない程、この場所は危険な場所なんだ)


 ソラの現れた焦りの表情に、近くにいたコレットだけが気付いた。


 いつもと違うソラの様子に、コレットは何も声をかけず、


 そっと…ソラの手を握った。


 ソラはそれに驚いて、どうしてこんなことをなど、色々と考えを巡らせたが、深く尋ねることはしなかった。


 コレットも、どうしてこんなことをしたのかよくわかっていなかった。ただ、こうしなければならない。そう思った。


「・・・半年だったな」

『・・・ああ、半年だ』


 ソラが期限を聞き返すと、アンノーンはニィっと笑いながらソラの言葉を返した。


「ソラくん。別にやらなくてもいいのよ。こんな奴の言うことなんて」

「大丈夫です。俺の方は問題ないので気にしないでください」


 ユニは言葉を返そうとするが、その覚悟を決めた瞳に、もう言葉を返すことはなかった。


「俺は必ず、生き残ってみせますから!」


 ここからソラ達の厳しい特訓の幕が開けるのであった。

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