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空っぽの武装魔道士δ  作者: 火琉羅
目覚めの獅子
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新たな目的と旅立ち

 あれか1週間か経った。


 皇国が急に夜なったことや、空に出来た大きな光の柱などの話題で国中どころか王都や帝国、世界中で持ちきりの話題となっていた。


 お父様であるアッシュ皇はあまり多くは語ることはなかったがたった一つだけ、「この国の危機は去った」とだけ伝えた。


 この知らせを受け、1番の話題になったのは、この時期に皇国に向かった魔法学院の生徒たちであった。


 この時期での皇国に向かったホプキングさん達の活躍により、皇国を救ったと王都では持ちきりとなり、それは世界中に広がり、新たな勇者の登場とまで言われ、王都では帰還したホプキングさんに賞賛の声が上がったらしい。何故かカメちゃん連れて戻ってきたカンナさんから聞いた話である。


 エリーゼも、ソラの安否をいち早く伝える為に王都に帰還した。必ず手紙を送るから!と言って数日前に届いたのだが…まだ開封していない。


 色々な人が様々な行動を取っている中、私だけが、まだ何もしていなかった。



 *



 太陽の光がボサボサとなった私を照らし、ベッド横になっている体を起こして窓の側に置いてある椅子に腰掛けて外を見る。


 この1週間はろくに水も飲むことが出来ず、まともに歩くことが出来ない中、これだけはこの1週間の日課となっていた。


「そこ! 爪が甘いぞ、()()!」

「わかってるっての! そっちこそ、油断して簡単に負けてくれるなよ、()()()!」


 広場では1週間前あった戦いの後がすっかりなくなり、この城に留まり続けたソラが、広場の中心で兵士や魔族さんと剣を交えていた。



 *



 俺は俺自身の新たな目的の為に兵士の方や魔族達と剣交える。


 その中で、今対峙しているガルドは、氷漬けにした状態から解放させると、ものすごい生命力だったのか、すぐに元気になった。


 自由の身になったガルドに、事の全てを話すと、


「う〜ん。よくわからんが…要するに、俺はお前に負けたという事だな。ならば、なら負けた上に、命も救われたんだ。どんな頼みでも受け入れるぜ!」


 という事なので、悩んだ結果、しばらくの間、特訓の相手をしてもらうことを頼んだ。


 そこから、多くの人に頼んで、さらには囚われている魔族の生き残りの人にも頼んで特訓の幅を広げる事にした。




(だいぶ動けるようになったな……)


 この特訓では、あの力、魔装と呼ばれる魔導は使わない。


 あの力は、俺が知る限り、現状で相手ができるような奴が存在しない事と、あれを使ってしまうと一瞬で片がついてしまうからでもあった。


「・・・コレット……」


 俺は特訓をしながらも、彼女ことが頭の片隅から離れなかった。


 コレットがいる場所はわかっている。その場所視線を向けると必ずと言っていい程、彼女と視線が交差する。


 今も、彼女と視線が交差するも、すぐに視線を逸らし、とても悲しそうな顔をする。


 彼女はかなりやつれ、今にも消えて無くなってしまいそうである。聞いた話では、飯もろくに食べていないとか……。


「そういえばソラ。お前、ここに留まっている間、一度も姫様と話していないんだって?」

「え、ええ…まあ……」


 兵士の1人の問いに馬鹿正直に答える。


「ば! 何やってんだよ、お前!」

「え?」

「え?じゃねえよ! お前、さっさと、姫様のところに行ってやれ!」

「え? え?」


 話を聞いていたガルドは、俺に姫様に会いに行くように背中を押す。ガルドのその力強さに全く抵抗の意味を成さなかった。



 *



 ガルドに言われ、内心渋々でコレットがいる部屋にやってきた。


 正直、どんな顔して彼女と会えばいいのかわからない。それ故に自然とここを避けてしまい、一度も、ここに立ち寄らなかった。


 しかし、それではいつまで経っても変わらないままだ!

 そう思って意を決して部屋の扉を叩いた。



 *



 コンコンッ!


「・・・どうぞ……」


 扉を叩くものにコレットは部屋の中に入るように諭す。しかし、扉の方は一切見ない。


 ガチャっと扉を叩いたソラが部屋の中に入る。


 部屋の扉を閉めて、何か話すでもなく、ただ静かに佇んでいる。


「・・・誰ですか?」

「・・・俺…ソラだ」

「・・・そうですか……」


 コレットは軽い確認の後、再び話さなくなり、ソラを何を話せばいいのかわからなくなった。


 ソラは窓の椅子に腰掛けているコレットに近づいて、窓横の壁を背に、コレットの顔が見えるように寄りかかった。


 ・・・


 互いに沈黙が続く。そして、今まで話すことを避けていたソラの口がようやく開く。


「コレット。レインさんが…スノウが死んでしまったのは、自分の所為だと言ったな」

「・・・」

「もしそれが君の所為だと言うなら、それは俺も同罪だよ」

「!?」

「スノウが死んだのは、俺の所為だ。俺を庇ってしまったから、スノウは殺されてしまったんだ」


 あの時スノウは、後ろにいたソラとコレットを庇って殺された。


 その事を重く感じているコレットと同様に、1週間経った今でも、気を抜いてしまえば、あの時、僕が死んでしまえばよかったのにっと思ってしまい、夜な夜な泣き崩れてしまいそうになる。


 彼らにとって、それほどまでに辛く、悲しい出来事であった。


「ち、違うよ! ソラのせいじゃない! お父さんは、私のせいで!」

「それでも、あの時はスノウは俺を守ってくれた。それで、死んだ事に変わりはないんだ」


 ソラの脳裏にあの時の光景が過ぎり、手に自然と力がこもる。


 助けられなかったことや、自分に力がなかったこと。自分の無力さに腹を立ててしまう。




『だったら』

「強くなるしかありませんね」




 扉を叩いた訳でもなく、突如部屋の中に響き渡る2人の声。その2人の内、1人の声には心当たりがあった。

 ソラは壁に付けていた体を離し、コレットは聞き覚えのない声に、立ち上がって後ろを振り返る。


 そこには、地下牢であったアンノーンと綺麗なドレスを身に纏った美しい女性が扉の前に立っていた。


「アンノーン! ・・・とそっちの人は?」

「私の名前はユニと申します。アンノーンの言われ、コレットちゃん、あなたを()()()()にやってきました」

「私を?」


 コレットは覚束ない足で歩こうとするが、まともに歩くことができず、転びそうになるのを、すぐに支える。


「ソラ、あの人を知っているの?」

「男の方は、何というか、謎の人物ではある」

『謎の人物って、酷い言い方するな……。僕は君の力になってあげたって言うのに』

「・・・巫山戯たことを言うなよ。お前、レインさんが()()()()()()知っていたんだろ!」

「?!」


 ソラが言ったことに、強く反応するコレット。


 怒りを露わにしているソラを見て、アンノーンは悪びれること無く、


『エクセレント!その通りだ、流石はソラ!よく理解している!』

「?! お前!」

『おっと、でも勘違いしないでくれよ。どの道、ソラが助けに入らなくても、スノウは確実に殺されていたし、それどころか、彼女を含め全員があいつに殺されていた可能性があった』

「だけど! お前が力を貸せば、レインさんだって……」

『自分の力の無さを他人に当たるな』

「?!」

『スノウを死なせてしまったのは誰の所為だ? 君達がの力がないからだろうが。それを僕に当たるんじゃない』

「・・・わかってるよ」


 確かに、レインさんを死なせてしまったのは、誰でもない自分達の所為で、それを他人に当たることは筋違いであった。


「・・・でも、」


 だからこそ、


「決めたんだ! もっと強くなるって、大切な人を守るって!」


 自分の弱さに押し潰されそうになった。悔しくて、言葉をあげることすら出来なかった。


 だからこそ、今度は折れない!


「今度こそ、大切な人を失わない為に! 僕はもっと強くならなきゃいけないんだ!」



『・・・その言葉を待ってたよ!』


 アンノーンはソラの言葉に喜びの声を上げる。それを待ち望んでいたかのように。


『ここの近くに大きな山がある。そこにはあまり多くの魔物が出ることはないが、あるエリアには大量の魔物が生息している』

「?! だ、第一級危険エリア?!」

「そう。多くの者が手を焼き、大勢の人達を死に追いやった第一級危険エリア。そこで特訓をしてもらうわ。もちろん、選ぶのは2人の自由だけど……」


 ユニは別に拒否しても構わない様な言い方で、話すが、ソラの意思は揺らぐことはなかった。



 *



 未だに皇国に留まっていたカンナを時間をかけて説得し、それが終わってた時には夜が明けていた。


 俺は先に行っていると言っていたアンノーン達を追って、山の方へ向かっているのだが、


「別にコレットは付いてこなくてよかったんだぞ?」


 隣には俺と共に歩く、コレットの姿があった。


 コレットは、俺が山の方に向かう準備を始めようとした時、全て準備を整えて、共に行くと伝えられた。


「確かに、そうかもしれない……。でも、同じような後悔もしたくないから」


 少しばかり、褐色良くなったコレットは、少し俯きながら言った言葉に、同様な気持ちが湧き上がる。コレットもコレットで前に進もうと頑張っている。


 俺も頑張らなければと、意思に気合が入る。


「それに…見てて、言われたから……」


 少し赤らめて言った言葉に気合やその他諸々が消し飛んだ。


「ちょ! お前!」

「・・・ダメだった?」

「?! か、勝手しろ!」


 おそらく、俺の顔は真っ赤になっているだろう。

 それを気にしないように意識を外に追いやった。


「そ、それにしても、良く城の奴らが許したな。ダメだったんじゃないのか?」

「うん。だから、お父様とお母様とカンナさんだけには、付いて行くことを伝えたよ」

「・・・たけ?」

「うん。だけ」


 皇国の城の方から、コレットを探す声が国中に響き渡り、当然それはソラの耳にも入ってくる。


「お、おい! 早く戻った方がいいんじゃ……」


 俺が控え目に戻るように言うが、コレットは一切耳を持たず、俺の手を握って、


「行こ♪」


 手を引き始めた。


 俺は焦りつつも、こうなっては聞かない事を前回で理解している為、


「〜〜ッ! どうなっても知らないからな!」


 諦め気味でそう叫んだ。


 部外者から見れば、さながら恋人のような2人は、手を繋ぎながら、真っ直ぐに山の方へ向かうのだった。

第3章完結。


謎の女性・ユニの登場と危険な特訓に向かう2人。

今後どんな展開になっていくのか。




次回からより良い話にしたいと思いますので、投稿ペースを変更しようと思います。

予定では、毎週火曜、金曜、日曜日に1本から2本を予定しています。

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