《魔剣》
ズシャ!
俺は刃が突き刺さる直前に刀身を握ったのち、体を少しだけ晒し、直撃を回避する。
だがそのせいで、刀身を握っている左手は血だらけになり、ポタポタと血が流れ落ちる。
刀身を握っている左手の激痛に表情が歪んでしまう。それと同時に激しい疲労感が体全体を支配する。その疲労感は以前感じたことのあるものだった。
俺はこの疲労感の正体を記憶の中から探していると、スノウは後ろに下がり俺から距離を取る。
握っていた刀身が俺から離れると、疲労感が残るものの先程よりは苦しくない。
手が切られ、血だらけになっている手を握ろうとすると、ズキズキと痛み、その痛みで顔を歪める。だけど握ることは出来そうだ。
顔を上げてスノウを見ると、スノウは何故か剣を地面に突き刺し、剣を離している。その顔には俺同様に疲労の表情を浮かべている。
もしかして……。
「・・・試してみるか……」
俺は再びスノウに向けて氷山を放つ。今回は先程より多く放ち、3つの氷山が別々のタイミングで襲いかかる。
スノウは素早く剣を手にとって、氷山を1つずつ砕いていく。
3つ全てを砕き、こちらを見てくるが、俺は魔法を放ちスノウが1つ目の氷山を砕くと、すぐに距離を取り、3つ目の氷山を崩した時、スノウの間合いに入らないであろう距離まで後退していた。
スノウは再び剣を地面に突き刺すと、同じ様に剣から手を離した。
そんなスノウの表情はかなり歪んでおり、息を切らしながら、冷や汗を流していた。
「・・・なんほど、その剣は諸刃の剣ということか」
「?! 知っていたのか?」
「いいや。でも2回目でおおよそは、3回目で2つの選択肢まで絞り込めた。一つ目はその剣で触れている間、魔力を空気中に排出する力があるということともう一つ、その剣自体がまだ生きていて、誰彼構わず魔力を食い尽くしている。この2つだ」
「・・・剣が生きているか…正解だ」
スノウは突き刺している剣のすぐ側に立ち、しばらく剣を見つめた後、俺の方に視線を戻し、
「この剣は、《魔喰龍》と呼ばれる牙や鱗から触れたもの魔力を喰い、ある地方では、国を滅ぼしたとされる絶滅種。その牙の化石を私の友であるトーラムが打ちし一振りです」
「へぇ…あのトーラムさんが……」
正直、あの人がそんな繊細なことができるとは思えなかった。
「だが、この剣にも欠点がある。それは…」
「剣の持ち主である、あんたにも魔力を吸収する効果が有効だった」
「・・・流石に、誤魔化せませんでしたか……。その通りであります」
そう言って突き刺しいた剣を抜き、
「この剣は持ち主ですら捕食対象でしかない。だからこそ、この剣は私にとって最後の手段なのです」
そうなことを話しつつ、何故か、スノウは剣を納刀し、近くにあった窓を開ける。
「時間もありませんので、外で待っております。取り逃がしたくないのであれば、早急に追ってくることをお勧めします」
そう言ってスノウは窓から飛び降りた。
俺は驚いてすぐに窓に駆け寄り下を見ると、ピンピンした様子で歩いていた。
「うわぁ…ここ結構高い場所なのに、普通に歩いてやがる……。って、こんなことしてる場合じゃない!」
俺も窓に足をかけて、飛び降りる…なんてことはせず、地面への氷の道を作り、その道から外れない様にして滑り降りていった。
「・・・ぁぁぁぁぁぁああああ???!!!」
「・・・何をしているのでしょうか……」
滑り降りているソラのスピードは凄まじく、あっという間にスノウを抜き去り、猛スピードで地面に滑っていくのだった。




