あからさまな罠
「それではお通りください、カンナ様とその御一行の方々」
城門やってきた私達は、何の問題もなく、城内に入ることができた。
いや、正確には軽い確認程度であっさりと検問を通過することができた。
私とカンナさんはあまりにも不自然に感じ、思わず警戒を強めてしまう。
国の城にそもそも来たことがないエリーゼやホプキングさんは自分の場違い感にキョロキョロと辺りを見渡している。
リシア先生は流石は先生。緊張しながらも、とても落ち着いている。
対象的にキッドさんはかなり慣れている様でいつも通りにしている。
みんなの様子を伺っていると兵士さんに連れられて城内に入って行く。
*
我々は、今日やって来た客人を迎え入れる為、執務室で待機していた。
「少年の方はどうだった?」
「間に合うことができませんでした。あれほどの成長スピードならば、あるいはと踏んでいたのですが……」
少し残念そうな声を上げる。
期待していた分、その期待を裏切られとても残念なのだろう。
「しかし、いつまで嘆いていても仕方ありません。今は目の前ことに集中いたしましょう」
「そうだな……。して、お主はこの訪問をどう考える」
「私から見て、やはり数年後に行われるであろう会議への参加していただく為に直接参ったと考えます」
会議とは我々人族がより平和に過ごしていける為の会議であり、その会議は数年に一度だけ開催される。
「お主は観測はそう考えているのか?」
「観測…というほどではありませんが…きっとそれは本来の目的を隠す為、おそらく、この城に囚われている彼の救出でしょう」
思い当たるのはあの少年。
警戒しながらも、私をしっかりと観察していたあの少年。
そういえばあの少年は、元々王都から仲間たちを守る為に魔族退治したのだったな。
「そうか…お主がそう思うならばそうなのだろう。それがわかっているのなら、お主はどうする?」
「そうですね、私なら……」
*
「では、会議への参加を了承しよう」
「は! ありがとうございます」
カンナは王様から頼まれたことは、皇王に直接出向き、会議への参加を取り付けることだった。
内容は深くは聞いていない。いや、敢えて聞かなかったと答えるのが適切だろう。
カンナ、そしてクロスフォードの目的は自国の民の救出にある。その為、文で済ませればいいものを直接出向いたのだ。
そのことに、カンナの目の前にいる皇王であるアッシュ・フォン・ジェラードも気付いており、敢えて言葉を口にしないだけであった。
「して、会議の内容とは?」
「それを私の口から申すことは出来ません」
「ほう…貴様は、私の侮辱している発言として受け取ってもよろしいのかな?」
「そういうわけではございません。ただその内容は、正式な場での確認することが大切だと考えております」
2人の間にピリピリと緊張した空気が流れ始める。
その空気当てられたのか、生徒2人はかなり怯えており、キッド姉弟は固唾を飲んで見守る。
コレットにも同様に緊張が走るが、何より不思議に思う事がある。
(・・・お父様?)
1番後ろで控えているコレットには、あそこにいる人は、仕事をしている時のいつも通りのお父様にしか見えなかった。
「・・・ふん、まぁよい。会議の時にしっかりと確認を取らせてもらう」
「ありがとうございます。それでは、我々はこれで失礼いたします」
カンナ達はその言葉とともに退出する。出来る限り、迅速にに気付かれない様に……。
「まあ、待たれよ」
アッシュに呼び止められたカンナ達は扉をの方から皇王にに振り返る。そんな中で、カンナとコレット、そして事情を知っているエリーゼは警戒を強める。
「そんなに早く帰ることはない。もう少し、ゆっくりしていきなさい」
「・・・それは嬉しい申し出ですね。ですが」
「それに、1ヶ月も家出していた娘と話がしたいのは親のサガだろう」
「?!」
アッシュは1ヶ月前の姿とは似つかない姿であるコレットをギラリ見つめ、その視線にビクリと体を震わせる。
「その者たちを捕らえよ!決して逃がすな、生け捕りにせよ!」
その言葉と共に外にいた兵士達が一斉にコレット達を取り囲み始める。
「おい師匠。ひょっとして、こうなる事がわかってて俺を連れてきたな」
「ええそうよ。ごめんなさいね」
2人がそんな軽口を叩いている間に、コレット達はあっという間に取り囲まれた。
「こんなことになることを読んでいたのなら、この先どうやって突破するのか、考えてあるんだよな?」
「無駄だと思いますよ。もしバレたらキッドさんにお任せするという他人任せの作戦だったので」
「ああそうかい。だと思ったよ、チクショーめ!」
「取り敢えず、この場所から出て地下牢に向かう。そこにここに来たもう1つの目的があるわ」
「だったら、一気に突破するしかねえな!」
その言葉を皮切りに、キッド部屋の扉の前でたむろしている兵士達を一振りで吹き飛ばす。
多くのものはそれに面をくらい、動けなくなる。
その隙に、カンナ達は扉に向けて一気に駆け抜けた。
「地下牢なら私が知っています!」
「なら、案内を頼むわ!」
「はい!」
部屋を出た私達は道をこじ開けるキッドさんと共に向かう。彼がいるであろう地下牢へ。




