タイムオーバー
「クソ! また失敗した!」
特訓を再開して、何百回目の失敗をして悪態を吐く。
男の人と助言で中身だけを凍らせることに成功してから、休憩を挟んだのち、特訓を再開させた。
カップの中身を凍らせせてしまい、何度もやり直すが、結局はうまくいくことはなかった。
全ての中身を凍らせたと思えば、今度は中心の1個だけが凍らせてしまい、次は1番上の列だけが凍らなかったと思えば、今度は1番下の列だけが凍ったり、しまいには……
「何で、凍らせようとする奴の逆なんだよ!」
凍らせようとしている4つと全く逆の中身が凍った為、頭を抱えてしまうも、結局やり直しとなった。
すっかり気力が失ってしまい、地面に仰向きに倒れただぼぉーっと天井を眺める。
「・・・何やってだろうな…俺……」
何事もなく、ただ独り言をつぶやく。
俺はただ、俺自身のことを知る為にあの古代都市に向かい、その答えを得る為に、あの場所を求め続けた。
『そう。お前さんはそのまま自分を求め続ければよかったんだ』
突如聞こえた声に横になっていた体をば!っと起き上がらせる。
『でもソラくん。君はもう既に道を外れてしまった。平和に過ごしていける道を』
「・・・ソルガ……」
俺以外誰もいない地下牢に突然姿を現したのは、以前夢の中から俺を連れ戻すきっかけをくれたソルガと呼ばれる大きな布を被った男だった。
『・・・おっと、そういえばあの時、自分は、そのように名乗っていたな。色々な呼び名で呼ばれると流石に把握ができないな。やはりここは『正体不明の未来』としっかりと名乗り、好きな呼び方するといい』
「・・・」
ソルガ…もといアンノーン・フューチャーが名前を名乗ると、俺の中のこいつの胡散臭さが跳ね上がった。
だが、話をしないと始まらないので、取り敢えずはそれを受け入れることにした
「じゃ、じゃあ、アンノーンさんで」
『アンノーンさんか…了解。ではそう呼ぶといい。それじゃあ、話を続きを…おや? 誰か来たみたいだ』
アンノーンさんが言った言葉に驚き、入り口の扉を見る。
すると、ガチャリと扉が開き、誰かが入室してくる。
「?! おい! こんなところにいていいのかよ!」
『ああ、問題ない。彼には我を視認することはできやしないさ』
「はあ?意味わかねぇ」
「何を1人でブツブツ言っているのですか?」
俺達の会話に割って入って来たのは、予想通りレインさんだった。
「いや、これは、違くて」
「まあ、休憩を挟んでから日が昇るまでずっと続けていたのですから、余程疲れているのはわかりますが、独り言はもう少し静かにお願いします」
レインさんが言った言葉に思わず固まってしまう。アンノーンさんが言ったように、彼自身が俺以外には見えていないようだった。
レインさんに向けている視線を正面にいるアンノーンさんに向けると、それがさも当然と言っているように頷いている。
「所で、訓練の進捗状況は…ソラ様?」
「いや、これはその……」
カップを見たレインさんはジト目で俺を見てくる為、俺は必死に視線をそらす。
「はあ…ソラ様、お伝えしなければならないことがあります」
「は、はい、何ですか?」
「・・・時間切れでございます」
レインさんは、終了時間を告げると、俺に再び首輪をつける。
「?! ま、待ってくれレインさん!」
「申し訳ございません。我々も忙しい身、これにて失礼致します」
「ま、待って!」
俺はレインさんに向けて手を伸ばすも、鉄格子に阻まれて掴むことが出来ず、レインさんはすぐに退出していった。
俺は地面にドサッと座りこみ
「クッソ!」
ガッシャン!っと鉄格子を殴った。
『残念だったな』
キィ!
『おいおい、そんな目で見るなよ。今回は君の実力不足が原因だろ? それを他人に擦りつけるなって』
こいつの物言いに腹が立つが、確かにこいつの言う通りである。俺はルールを守れなかった、それだけ。
故に、首輪をまた付けられ、投獄されているのだ。
『それにしても、よかったじゃないか』
「・・・何がだ」
アンノーンは以前の様に訳のわからないことを言い始め、機嫌の悪い俺はきつめに言葉を返す。
『何って、決まっているでしょ。君が、死ぬか死なないかという選択だよ』
アンノーンが軽々しく言い放ったのは、『死』という言葉だった。




