大切な……
6/22・一部編集しました
『まあ、答える云々は置いといて……そろそろ、自分の体に戻ったらどうかな?』
ドックン!
「な、何の話だ!」
『言葉通りさ。無事に発見されてから1週間経った。眠っている君をこれ以上は待てない。いい加減目を覚ましてもらわないと』
「だから、意味がわからないって!」
ソルガ(仮)の言葉に心臓が跳ね上がるの感じ、それが何なのか、それを知っているのか、必死に尋ねる。
『・・・本当に何も知らないのかい?』
「・・・え?」
訳がわからず、頭に?を浮かべる俺に対して、とても柔らかであるが、はっきりと口にした言葉は、たった一つの問いかけだった。
『彼女の事を本当に忘れてしまったの?』
「・・・彼女……。それって誰の……?!」
誰の事を尋ねようとした俺の頭に再び痛みが走る。それと同時に、また映像が流れ始める。
《ソラ! あれは何ですか? 行ってみましょう!》
流れる映像は先程映し出された女の子。
《おはよう! ソラ!》
その女の子は、とても表情豊かで、
《私の友達に! そんなひどいこと言わないで!》
とても優しい……
《ソラ》
大切な友達……。
「・・・コレット……」
『・・・やっと思い出したか』
不意に呟いた彼女の名前と共に、王都での日々が蘇る。悔しかったこと、辛かったこと。でもそれ以上に、楽しかった日々を……。
「俺…どうしてこんな所に……」
最後に思い出せるのは、相討ち覚悟で力を使った。
体全体は確実に凍りついて、間違いなく凍死したはずなのに……。
『思い出すのが案外早かった様な、遅かった様な気もするが、とにかく、思い出せてよかったよ』
「・・・ソルガ」
『(仮)』
「・・・俺はどうして生きてるんだ?」
先程ソルガ(仮)は見つけたと言った。ということは、こいつは俺が生きていることを知った上で探していたということだ。
それならば、俺ここにいる理由を知っている。そう思い尋ねた。
『君自体は案外早く見つかったよ。こんな初夏直前の時期に凍死なんて、魔法以外考えられないからね。そして、凍りついたガルドの側に倒れていた君を回収して、ある場所に向かったんだ』
「倒れて…いた?」
そんなはずはない。あの技は相討ちを前提としてコレットにすごく怒られながらも、開発した俺の奥の手だ。
それなのに、俺だけ生き残れるなんてありえない。
「一体どうして……」
『まあ、どうしてなのか定かではないが…こちらの目的は、君を元の世界に戻すことだ』
そう言いながら、ソルガ(仮)は俺の心臓あたりをを強く押さえ、
『もう既に、魔導の一端を発動し、それを記録してある。後できることがあるとするならば、元の世界に帰してやるついでに、君だけに付けられた枷を外してやることだけだ』
「お、おい、ソル……」
パキーッン!!
ソルガ(仮)が俺を強く押すのと同時に、何が外れ、暗闇の中に放り出される。
『・・・世界を頼んだぞ。イレギュラー』
暗闇に放り出される中、俺を押した奴はそんなことを言っていた様な気がした。
*
「空〜。どうかしたの?」
「!・・・いや、なんでもないよ〜」
里美に呼ばれて意識が戻る。俺は、自分がどうして立っていたのかわからなかったが、それを頭の端に追いやって、里美達の後を追って、デパート向かった。
彼らはそんな空の様子をビルの上から伺う者達がいた。
「・・・奴は元の世界に戻ったか……」
『ああ。突然この世界にやってきたと思えば、よりにもよって…いや、やはりと言うべきか…大空 空の中に入ってしまうとは……』
1人は大きな布を被るソルガ(仮)。もう1人はこの世界の人にとってはとても痛々しいボロボロの服を着て、口のない仮面をつけた男だった。
「それは別にいい。だが、あんな奴が、今までを帳消しにする様なそれだけの力を持つ者なのか? 正直、あそこにいるチャリオットの方が、まだ強い気がするが……」
仮面の男は親指で彼らに向けて指差す。
『当たり前だよ、Ⅳ。どこをどうやったって、チャリオットに勝てる人間なんているはずないんだから』
Ⅳと呼ばれた男は背後にいる布男を見る。表情を見ることはできないが、ケラケラと笑っているであろうことは容易に想像できる。
事実、男はわははは!っと笑っている。
『ふう〜……。それにしても、よく彼が空でないとわかったね』
「まあな。あいつをよく見ていればすぐにわかる。何度も繰り返してきたことだ。それ程にわかりやすい変化だった」
『ふ〜ん。俺には全くわからなかったけど……。ま、そこまで言うなら、後のことは任せるよ。儂は自分で用があるからな』
「・・・ああ、後は任せておけ。くれぐれも奴らには見つかるなよ」
Ⅳはそう言って後ろにいる布男の方を振り返る。しかし、もう既に男の姿はなく、先程までそこは誰もいなかったのではないかと疑ってしまうほど、静かに、そして気配を全く感じることができなかった。
「・・・正体不明の未来…か……。相変わらず、掴めない男だ」
Ⅳは再びビルの屋上から、彼らを見守るのであった。
彼らは一体何者なのでしょうか……。




